Tottori University Faculuty Of Medicine Division Of Urology
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2010年4月 武中篤教授が第17回日本泌尿器科学会賞を受賞しました。

2010年4月 武中篤教授が第17回日本泌尿器科学会賞を受賞しました。
2010_受賞_武中教授
受賞論文

Takenaka A, Soga H. Murakami G, Niikura H, Tatsumi H, Yaegashi N, Tanaka K, and Fujisawa M:Understanding the anatomy of a "hilus" of detrusor nerves to avoid the bladder dysfunction after pelvic surgeries: a demonstration using fetuses and adult cadavers. Urology 73: 251-257, 2009

受賞コメント

本研究は意外にも泌尿器科医がこれまで注目してこなかった、膀胱detrusor nerveの外科解剖を明らかにしたものであります。特に、本神経の膀胱入口部の外科解剖に焦点を当て、成人と胎児検体、あるいは男女検体間の比較検討を行うことにより、発生学的差異や性差について検討を行ないました。この結果、成人女性や胎児では尿管膀胱移行部内側の神経密度が高く、明瞭なhilusを形成し膀胱に入口していましたが、成人男性では明らかなhilusは存在しないことを明らかにしました。これらの知見は、泌尿器科手術のみならず、消化器外科や婦人科における骨盤内手術後の膀胱機能障害の予防において、大きな意義を有すると考えております。

全ての人体解剖学はすでに明らかになっていると理解されているかもしれませんが、本論文により「いまだ未知の部分がたくさん存在する」ということがお分かりいただけたと思います。医学の中でも最も古典的学問と思われている臨床解剖学においてもそうであります。いわんや、日常臨床などわからないことだらけであります。私は、臨床医たるもの、診療において常に疑問や向上心を持ち、それを解決すべく謙虚に努力を続けることが重要であると考えております。その第一歩が、自分の医療行為を振り返り、解析をし、その結果を公表して世間の意見や批判を受けることであります。それでは、そのためにはいわゆる「試験管」"や「ハイテク」が必須でしょうか。本研究のように、最新の分子生物学的手法を用いず、非常に古典的な形態学的手法を用いた地味かつお金のかからない研究でも、学会賞が頂けるのであります。要するに、大切なことは方法論ではなく、物事を掘り下げて考えるという謙虚な姿勢であります。本賞の受賞を機に、臨床に対する"謙虚さ"の重要性をあらためて確認いたしました。

最後に、これらの解剖学研究に対し自由な環境を与えていただき、適切な指導や助言を頂いた札幌医科大学村上弦前教授に深謝したいと思います。今後は、学会賞の名に恥じぬよう、ますます臨床や解剖学研究に邁進すると共に、後進に対する指導にも努めてまいりたいと思います。