金﨑 佳子

AFIP留学記(ワシントンDC)

AFIP留学記

日本放射線科専門医会のAFIP研修フェローシップにより、平成17年7月から9月にかけて、米国ワシントンDCにてAFIP(Armed Forces Institute of Pathology)のeducation programであるRadiologic-Pathologic Correlation 6-week Courseに参加しましたので、報告致します。

豊富な症例数、その充実ぶりに圧倒

AFIPはワシントンDC北部郊外のWalter Reed Army Medical Centerの広大な敷地内にあり、研修は敷地内のAFIP education centerで行われます。基本的に平日朝8時から夕方3時か4時まで、ランチタイム30分をはさみ、1時間単位のスケジュール表に沿って講義形式で行われます。土日のほか、第3週の金曜日は休日です。このコースは米国放射線科レジデントの必修となっているそうで、基本的には卒後5年目程度の放射線科レジデントを対象とした内容ですが、米国のレジデントのみならず、他国からの参加者も受け入れています。年齢制限もありません。全身領域疾患の病理と画像を主体とした、広範な基礎的理解を得ることを目的とされており、領域ごとに各疾患の病因、基本的な病理所見、画像所見、画像と肉眼像との対比、治療と予後、と講義はすすんでいきます。神経放射線と骨軟部領域については、それぞれ授業が一週間に集中していて、この週だけの参加者もいます。いずれも病理と画像を対比するスライドが特にすばらしく、症例数が非常に豊富で、その充実ぶりに圧倒されました。講師陣はAFIPの先生方、およびアメリカ国内の他施設からも来られており、様々な個性を出しておられましたが、どの先生も熱心に、身振り手ぶりやユーモアを交えながらご自身も非常に楽しげに講義をされ、教育の専門家としての姿に大変惹きつけられました。早口で話される場合が多いのですが、スライドは簡潔でシェーマや画像が主体で、シラバスも大変充実しており、講義の内容の理解に英語力の問題はほとんど感じません。ただ、授業中に講師の先生方のエピソード話などを楽しく聞き取ったり、質問したり、また、周囲のレジデントたちとより交流を深めるためには、英会話は練習して少し慣れていったほうが、より楽しく過ごせると思いました。

事前の準備としては、参加者の義務として、病理と画像が対比できる症例を1例用意しなければなりません。英文のクリニカルサマリーや手術記録、画像所見、病理所見、DICOMあるいはハードフィルムでの画像の提出、病理は肉眼所見やプレパラートの提出も求められます。プレパラートは原則として返却されません。第一週目に提出し、最終週に領域毎のベストケースが発表されます。

AFIP education programは、6週間にわたって、
全身領域を学ぶユニークな研修プログラム

また、住居の手配ですが、AFIPのホームページにも滞在を受け入れてくれる個人の名前やアパート斡旋業者のホームページアドレス等が紹介されていますが、安全な地区などの予備情報等もなく、これらのみで探すのは困難と思われました。私は、現地の日本人不動産屋さんを長期留学中の先生に紹介して頂き、良い環境のアパートメントを借りることができました。この日本人の不動産屋さんは大変親切で、滞在中も何かと気遣いいただきました。ご希望の方がおられれば、紹介いたします。

講義は毎日朝早く始まり、英語を長時間きき、また、講義室内は冷房が効きすぎて真冬状態、といったこと等もあり、日を追ってかなりハードに感じますが、自分の興味のある分野にある程度重点を置く、防寒対策を早期より講じる(冷房に対して!?)などで、体調を崩すことなく充実した生活を送ることができると思います。また、授業以外の時間もたっぷりあり、首都ワシントンDCを満喫できます。ホワイトハウスや国会議事堂、そのほか美しい建造物の数々、有名なスミソニアン博物館郡、ポトマック川や緑豊かな公園など、観光や散策する場所があふれています。無料のコンサートも定期的に行われています。公共の交通機関がよく整い、非常に便利で、ワシントンDC内のみならず、休日には近郊の町へも列車で簡単に行くことができます。まさに別世界にいる心地で、リフレッシュメント効果は絶大です。 

AFIP education programは、6週間にわたり集中して全身領域を学ぶユニークな研修プログラムであり、非常に貴重な体験となりました。このような機会を頂き、放射線科専門医会選考委員の先生方、事務局の方々、協賛の方々、推薦していただいた前所属先の防衛医科大学校放射線科小須田教授、渡米のため不在の期間ご協力いただいた諸先生方に感謝いたします。今後、より多くの先生方が、積極的に応募、参加されることを是非お勧めいたします。

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