杉浦 公彦

ルンド大学マルメ校 バスキュラーセンター(スコーネ県 、スウェーデン)

スウェーデンVascular Center Malmö-Lund, Malmö University Hospital 研修報告

Vascular Center Malmö-Lund,Malmö University Hospitalは5年ほど前に当時の放射線科教授のKrassi Ivancev先生と血管外科のMartin Malina先生が協力してできた施設です。

放射線科と血管外科が共同で治療に当たる画期的な体制でスタートしましたが、私が留学する直前にIvancev先生がロンドン大学に移られたため、現在は血管外科医が主導で主に大動脈ステントグラフト治療、下肢の動脈のPTA、ステント治療を行っています。これまでに日本から大阪市大の南郷先生、神戸大学の山口先生など、ほぼ毎年のように受け入れています。

スウェーデン第三の都市

Malmöはスカンジナビア半島の南端に位置するスウェーデン第三の都市でスコーネ県(スコーネ)の最大都市です。人口は約27万人と鳥取市よりやや大きい程度で、中世の町並みの残る静かな町です。デンマークの首都、コペンハーゲンとはオーレンス大橋を渡った対岸にあり、鉄道で約30分の距離で空港も近いことから日本からの直行便も含め、各国への移動が非常に便利なところです。私が訪れた1月はまさに冬のさなかで、日の出は午前9時ごろ、夕方4時には日没。最高気温も氷点下でした。街中の公園では特設の天然スケートリンクがあり、若者や子供たちが興じていました。

教育水準の高いスウェーデン

病院での仕事は夜明け前の午前7時30分のカンファレンスからスタートです。症例検討が主体でしたが残念ながらスウェーデン語で行われるため、断片的な単語がいくつか分かるのみで、詳細が理解できませんでした。幸いしたことにスウェーデンは非常に教育水準が高く、通常のテレビ放送が英語で放送されているため、医師はもちろん看護師さんや売店の店員さん、果ては患者さんもとても流暢な英語を話されるので日常生活や、手技中の質問、説明は英語でしていただけました。

活気ある現場

血管造影、IVRは毎日4例~8例、手術室でのステントグラフトが週2から4例あり、非常に活気がありました。血管撮影室に入りまず圧倒されるのはデバイスの多さです。壁一面にPTAのデバイスやステントがところ狭しと並べてあり、日本では考えられないほどの種類、量でした。(驚いたことに「Japan」というデバイスがあり、TERMO社のシースがそう呼ばれていました。)各メーカーも積極的に参加し、血管の性状にあわせたデバイスの設計、作成を行い、ディスカッションをしながら手技を行うなど現場の意見がすばやく対応される印象でした。

いい仕事は、いいスタッフがいてこそできる

次にスタッフの充実ですMartin Malina先生は常に「いい仕事は、いいスタッフがいてこそできる。」と話していました。スウェーデンのみでなく、ヨーロッパを中心に世界13カ国から集まったスタッフ協力し、約25名の医師、センター専属の日本の診療放射線技師に相当する資格を持つ方を中心にした看護師が約20名働いていました。看護師は直接介助に入るのはもちろん、治療や運営にも積極的に自分たちの意見を述べており、医師と看護師の強い信頼関係がありました。

マンパワーの充実、チームワークがいかに重要であるかを強く認識

鳥取大学でも放射線専門看護師の制度ができ、それに並行するように診療レベルが向上していますが、マンパワーの充実、チームワークがいかに重要であるかを強く認識させられました。帰国して、数ヶ月が経過し、日常に戻ってみると、今回の留学を通し、血管治療の技術だけではなく、今までとは違った環境、制度、文化に接することで、スウェーデンの医療の学ぶべき点、そして反対に日本の優れた面のいくつかを知ることができたことが自分にとって非常に有益であったと考えています。

最後に、Martin Malina先生をはじめスウェーデン研修でお世話になった現地スタッフのみなさま、研修を支援していただいた日本スカンジナビア放射線医学協会、研修を勧めていただいた大阪市立大学山田名誉教授、鳥取大学放射線科小川教授、神納准教授をはじめ、教室の皆様、そして慣れない外国生活で私を支えてくれた家族に感謝して報告を終わりたいと思います。

左) マルメの中心街。路上のカフェテラス。
中央) イースターの装飾が施された市庁舎前広場
右) Vascular centerの正面玄関

左) 看護師さんと記念撮影
中央) デンマークとの国境に架かるオーレンス大橋。
右) 世界遺産ベルゲン(ノルウェー)。