病理解剖とCPC

手術標本と生検標本だけが相手じゃない!病理医のもう一つの顔について

病理解剖とCPC

病気を診断し、治療に役立てるだけが病理医の仕事ではありません。一般にあまり知られていない病理医のもう一つの仕事、それが病理解剖です。

病理解剖とは不幸にして亡くなられた患者さんの死因を究明するための解剖のこと。残念ながら医療は未だ完全なものではなく、生前に100%の診断を行い、100%完璧な治療を行えるわけではありません。また、診断と治療が間違っていなかったとしても、そこに絡む何らかの因子が不幸な転機を招くこともあります。患者さんの病歴の背後に潜む因果関係を解き明かすために病理医は病理解剖を行っています。

CPC(clinical pathological conference)

病理解剖直後に死因が解明することはむしろ少なく、通常は解剖のあと、取り出された臓器組織から標本を作製し、顕微鏡で検索を行います。実際、解剖自体は数時間で終了しますが、標本を作り、検索を行い、死因につながる因果関係を構築するのが実は最も時間のかかる作業です(たとえば脳の解剖を行う場合、ホルマリン固定に1ヶ月以上の時間を要します)。この間、標準的なHE(ヘマトキシリン・エオジン)染色標本を調べ、必要があれば特殊染色・免疫染色を追加し、さらに文献とにらみ合い…そしてプレゼンテーション用のスライドと配付資料の準備を行います。

cpcslide

資料をまとめた後は、主治医と合同でCPCを行っています。CPCでは臨床側から臨床経過やデータが提供され、病理側から病理所見と臨床経過に対する考察、主治医の疑問点に対する回答などが提供されます。しかし病理解剖を行っても明確な答えが得られないこともあり、人間の限界を感じさせられます。

現在はだいたい月2回のペースでCPCが行われています。以前に比べ病理解剖の件数もCPCの回数も年々減少傾向ですが、昨今の患者遺族の「真実を知りたい」という気持ちが強まるなか、CPCのあり方はどう変化していくのでしょうか…。