医学部長メッセージ

「学内外の全ての関係者と共に、人材育成と課題解決策を鳥取県で熟成し、その成果を必要とする世界の地域社会に届ける」

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 鳥取大学医学部は鳥取県西部の米子市に立地しています。北に中海を隔てて日本海を望み、南には秀峰大山が聳えています。海と山の景色に恵まれた自然の中で想いを巡らせる静かな環境にあり、日本の奥座敷として学問の場と住居が近接した理想的な環境にあります。また、国際空港である米子空港が隣接する交通の要衝にあり、国内外の関係者との意見交換に出向く場合に効果的な環境が備わっています。鳥取県の小さな良さは、社会実験の場として効果的です。世界に発信するプロジェクトを醸成する場がここにあります。
 創立時の多くの関係者の献身的努力により、第二次世界大戦後すぐに創立された鳥取大学医学部は、2020年に創立75周年を迎え、その先に100周年を見据えています。この間、「バイオ」の時代に生命科学科が生まれ(1990年)、次いで、看護学と検査技術科学の教育・研究体系が保健学科として組織されました(1999年)。このようにして、鳥取大学医学部は3学科体制になっています。大学院は、医学専攻博士課程、医科学専攻博士前期・後期課程、そして臨床心理学専攻修士課程と3つの専攻を包含する組織になっています。医療分野に多彩な学問体系が整いました。
 今後も、国立大学医学部として医療・医学分野を網羅し、全ての疾患に対応できる機関であろうと思います。さらには、歴史的営みが作り上げた伝統的特徴を生かし、世界の医療に貢献したいと思います。医学部は、学生と大学院生が学習・研究を通じて医療に貢献しようとする場です。医療の今を支えるために職業教育を、次世代医療のために研究教育を行います。教員は自らの教育・研究プロジェクトの「物語」を学生と共に進めて参ります。鳥取大学医学部が育んでいる進行中の「物語」は、全て歴史的伝統が作った鳥取大学医学部75年の賜物です。
 医学教育は予防と治療の理解と実践を目指します。病気に至る経緯を正常の破綻として理解し、診断・治療に関する方法論・実践トレーニングが組まれています。さらには、社会問題への対応教育が行われています。ただし、医学科、生命科学科、保健学科、それぞれの学科によって設定された課題や解決法が異なるため、アプローチに多少の違いが出ます。医学科は、病理学的な発想から治療を志向します。生命科学科は、病理学的発想に独自性を加えようとします。保健学科看護専攻は、看護の方法論の進化を追求し、日常生活の改善を誘います。検査専攻は、絶えず変化する先進的な医療技術の専門家を志向します。
 医学部は、今日救えない命を明日は救えることを考え、あるいは、今日は完治できない患者さんを、明日は通常の社会生活に戻っていただくことを試みます。これらは、「研究」によって達成されます。学部学生教育の中でも「医療の実践」に留まらず、「医療の進化」に注目させたいと考えています。大学院生教育は、研究そのものであり、「医療の進化」に繋がる研究成果を追求します。医学部教員は、研究者として「医療の進化」に繋がる種(シーズ)を生み出しています。このシーズを公開可能なものから明らかにし、その進捗度に沿って多くの共同研究者を得て社会に還元したいと願っています。
 医学部は、教育・研究を通じて社会貢献を目指します。医学部・大学院教育を通じた人材育成に留まらず、研究成果もまた社会貢献です。教育・研究を通じた社会貢献以外に、世界的に評価の定まった知識や方法論を、分かりやすい形でお伝えすることも医学部がすべき社会貢献だと考えます。ただし、教育者や研究者は貢献すべきこと、貢献できることに気づかないことが多々あるように思います。是非、大学外から多くのご要望を頂き、それを良い機会にして教育研究を発展させられればと願っています。必要は全ての活動の母だと考えます。宜しくご指導下さいませ。

2023年4月        
鳥取大学医学部長 景山 誠二