前立腺肥大症とは、前立腺腫が増大した結果、尿道抵抗が高まり、その結果として膀胱機能が影響を受け、複雑な様相を呈する病気です。閉塞に伴う膀胱機能の変化による症状は排尿困難以外に頻尿、尿意切迫感、夜間頻尿なども現れます。なお、夜間の回数が多い原因としては、夜間多尿が原因となっていることも多いことに留意が必要です。
前立腺肥大症に伴う排尿症状は前立腺の大きさの増大とともに解剖学的構造も要因として生じます。例えば、中葉肥大では排尿症状が強く出現します。尿道閉塞に対し尿流を維持するため、膀胱平滑筋が順応し、膀胱機能の変化をもたらします。膀胱肉柱形成などの変化はこの変化によるものです。尿道閉塞は膀胱平滑筋、細胞外マトリックスの変化とともに、下部尿路を制御する神経回路にも変化を起こします。
前立腺肥大症による排尿症状は、尿道閉塞自体から直接的に生じた排尿困難と、尿道閉塞から二次的に生じた膀胱機能の変化に関連した刺激症状とがあります。
などの症状が認められます。
などにより診断します。
治療法は重症度に応じて経過観察、薬物療法、低侵襲手術、手術療法などが行われます。経過観察のみで尿道閉塞が慢性的に長期に経過した場合には、不可逆的な膀胱収縮力の低下が起こることがあることに注意が必要です。
薬物療法としては、α1-遮断薬やホスホジエステラーゼ5阻害薬は尿道抵抗を低下させる作用をもち、前立腺腺腫を縮小させる作用はありませんが、その効果が即効性であることから第1選択薬とされています。また、前立腺を縮小させる5α還元酵素阻害薬も使用されます。
手術療法の絶対的適応は尿閉、腎機能障害、尿路感染、膀胱結石、反復性血尿などです。
手術の方法としては、経尿道的手術と開腹手術があります。
経尿道的手術としては、TURPという電気メスを使用した方法が旧来行われておりましたが、最近ではレーザーを用いて前立腺の腺腫を摘出する方法(HoLEP)の方が術後のカテーテル留置期間が短く、体への負担も少ないことがわかっており、当院においても現在HoLEPを施行しています。HoLEPについて、詳しくは先進的医療、前立腺肥大症に対する低侵襲治療HoLEPのページをご覧下さい。