Tottori University Faculuty Of Medicine Division Of Urology
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男性不妊症

通常の性行為を行う男女の間には、1排卵周期に約15%の確率で妊娠が成立すると考えられ、正常な夫婦が避妊せずに夫婦生活を行っていると約85%の夫婦は1年以内に妊娠することになります。したがって避妊せずに夫婦生活を行っているのにもかかわらず2年たっても妊娠をしない状態を不妊症と言います。不妊症の原因は女性側に多いのですが、不妊カップルの半数では男性にも原因があるとされ、男性側に原因があるものを男性不妊症といいます。

男性不妊の原因は以下のように分類されます。

I.造精機能障害 (精子を作り出せない状態)

  1. 染色体異常: クラインフェルター症候群など
  2. 停留精巣
  3. 精索静脈瘤
  4. 放射線や抗がん剤による治療
  5. 成人になってからの耳下腺炎(じかせんえん)による精巣炎
  6. 脳下垂体などの疾患により精巣を刺激するホルモンが分泌されない場合
  7. 精巣がん
  8. 突発性:原因不明

II.精路通過障害(精子が尿道まで到達できない状態)

  1. 精子の通り道(精巣上体、精管、精嚢、前立腺)の欠損あるいは奇形
  2. 精巣上体炎による精路の閉塞
  3. 鼠径(そけい)ヘルニアの手術による精管の閉塞
  4. 精管結紮術(パイプカット)後 精子機能障害

III.精子機能障害(精子の運動性や授精能が低下する)

  1. 精路の感染
  2. 抗精子抗体などの免疫の異常

IV.射精障害

  1. 脳や脊髄の障害、骨盤内の手術などにより射精ができない場合

V.勃起障害

  1. 勃起障害(ED)が原因で不妊となることも当然ながらあります。

診断

問診

まずは通常の性交が行えているかどうか、排卵日前後に性交を行っているかどうかが重要です。また、いままでの既往歴なども重要になります。

診察、陰嚢部超音波検査

精巣の形態や大きさに異常がないか,精索静脈瘤の有無などを診察します。

精液検査

用手的に採取した精液を顕微鏡で観察します。

精液の量 正常値:1.5ml
精子濃度 正常値:1500万/ml以上
精子運動率 正常値:40%以上
奇形率 正常形態が4%以上

精液所見は、絶えず変動するため、2週間以上の期間をあけて数回検査して判断します。

内分泌検査

採血を行うことで精巣の機能を調節するホルモンや、男性ホルモンの値の異常がないか調べます。

染色体検査

精子数が極めて少ない場合、染色体異常が原因の場合があるため調べることがあります。

治療

造精機能障害

精索静脈瘤が原因の場合は手術治療によって、ホルモン分泌の異常が原因の場合はホルモン補充療法により精液所見の改善が認められます。しかしながらそれ以外の場合には有効な治療方法が確立されていません。

精路通過障害

手術により精路の再建を行います。

精子機能障害

感染の場合には抗生剤、構成し交代の場合にはステロイド等を用いた薬物による治療を行います。

以上の方法で効果がない場合には人工授精、体外受精、顕微授精などの補助生殖技術で妊娠を目指すこととなります。