鳥取大学医学部産科婦人科学分野ではda Vinci X、Xi、Hugo、hinotoriの3企業、4機種を用いたロボット手術を行っています。複数、多機能な手術支援機器を用いることで、精度を最大限に高めた手術を行っています。
手術は開腹手術が一般的ですが、近年、手術の低侵襲化がすすめられており、国内では腹腔鏡下手術が普及してきました。そして、2018年以降、多くの施設でロボット支援下手術の導入が行われつつありますが、まだまだ普及していないのが現状です。
ロボット支援下手術は開腹手術に比べて、手術時間は延長すると言われておりますが、当院では開腹手術や腹腔鏡下手術と遜色ない時間で実施出来ております(図1)。
さらに創部が小さいことにより、より早い術後回復が見込まれます。また術後の痛みが少なく、入院期間が通常よりも半分程度ですみます。我々の施設でも、積極的にロボットを用いた低侵襲手術を行っています。
そもそもロボット支援下手術とはどんな手術でしょうか。ロボットが勝手に手術をしてくれるというイメージをお持ちかもしれませんが、そうではなく、ヒトがロボットを操作してより精密な操作を行うことが出来る手術です(図2)。つまり、手振れ補正やカメラの固定化によって精度の高い技術で腹腔内の操作が可能となり、出血量を減らし、さらに術後の疼痛の軽減にもつながるというわけです。
当院では2010年より先進医療として子宮疾患に対するロボット手術を行ってきました。その後、保険診療として実施できるようになったのは2018年です。婦人科領域では腹腔鏡下手術の普及によって、ロボット支援下手術の普及は滞っておりましたが、近年、需要の高まりと新機種の開発により運用がより簡易的となったことなどから急速に普及してきました(図4)。
子宮体癌に対する手術療法は、2014年に腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術、次いで2018年にはロボット手術が保険収載され、ロボット支援下手術は国内でも徐々に実施症例が増えています。NCCNガイドライン2018年版では早期子宮体癌に対するminimally invasive surgery(MIS)の一つとして積極的に推奨され、ロボット手術は腹腔鏡下手術と同等の選択肢となっています。ロボット手術は腹腔鏡下手術と比較して腹腔内での視野の拡大やカメラ操作を執刀医自身がコントロール出来ることなどの利点が指摘され、さらに骨盤内の血管周囲の処理のみならずリンパ節郭清や腟断端の縫合においても非常に有用とされています。
MISの社会的需要が高まっている中、子宮体癌におけるロボット手術の腫瘍学的アウトカムが従来の開腹手術と同等であったと報告されていることも含め、ロボット支援下手術は、患者QOL(クオリティ・オブ・ライフ)に大きく寄与するMISとして実施すべき術式であると考えられます。
当教室では、子宮体癌の手術において、低侵襲かつ高精度な病期診断を実現するため、センチネルリンパ節(SLN)ナビゲーション手術を積極的に導入・実践しています。
本手法では、腫瘍から最初にリンパ流が到達するセンチネルリンパ節を同定・摘出することで、従来の系統的リンパ節郭清を省略しつつ、正確な病期診断を可能とします。これにより、術後合併症(リンパ浮腫や神経障害など)の低減と患者QOLの向上が期待されます。
当教室では、以下の2つの方法を症例に応じて使い分けています。
これらの手法を適切に選択・併用することで、より安全で再現性の高いセンチネルナビゲーション手術を実現しています。
さらに当教室では、ロボット手術と組み合わせることで、拡大視野下における精緻なリンパ節同定・摘出を行っており、次世代の低侵襲手術としての確立を目指しています。
本取り組みは、特定臨床研究としても推進しており、
などを通じて、エビデンスの創出を行っていきます。
また、研修医・若手医師に対しては、術中ナビゲーションの理解と実践を体系的に教育し、低侵襲手術と腫瘍学的根治性を両立できる人材育成にも力を入れています。
ロボットによる手術は年々増加しております(図5)。特に、2019年9月に子宮体癌に対するロボット手術を導入した後からは急速に増加し、2023年8月現在で合計200例を超えるロボット支援下手術を実施してきました。また、これまで使用してきているda Vinci X、Xiに加えて、2023年3月よりMedtronic社のHugo RAS System、2023年7月より国産手術支援ロボットhinotoriを導入し、3社4機種の手術支援ロボットを用いて実施していました。この4機種を用いたロボット支援下手術は産婦人科分野において、鳥取大学産科婦人科学分野が世界初でした。
現在はda Vinci Xiを2台、Hugo、Hinotoriを用いて実施しており、国内でも有数のロボット手術実施施設となっています。
