中枢神経・頭頸部 ①非造影MR灌流画像による脳疾患の検討 脳腫瘍や脳血管障害など、種々の脳疾患に対する非造影MR灌流画像の有用性について検討を行っている。 ②脳腫瘍におけるCEST(chemical exchange saturation transfer)の有効性の検討 脳腫瘍のgradingや治療効果判定に対して、CESTの有効性の検討を行っている。
胸部・心臓 ①冠動脈病変・心筋評価におけるデュアルエネルギーX線撮像の有用性の検討 デュアルエネルギー撮像を用いて、冠動脈評価時に問題となる石灰化病変や心筋症などの診断能向上に関する検討を行っている。 ②開心術前における形態評価 虚血性心疾患、弁膜症における開心術、インターベンション前の形態評価に取り組んでいる。 ③人工知能を用いた画像再構成法の画質評価 人工知能(AI)を利用してCTの画質を改善するTrueFidelityを用いて、肺野の画像再構成を行い、その画質評価を行っている。
腹部・骨盤部 ①産婦人科領域におけるMRI有用性の検討 子宮腫瘍の悪性度判定や治療効果判定、良悪性の鑑別などにおける拡散強調画像をはじめとする各種撮影法の有用性について検討を行っている。
核医学 ①骨SPECT/CT定量評価の検討 骨SPECT画像の定量による骨病変の鑑別や治療効果判定の有用性、日常臨床への応用について検討を行っている。
開胸・開腹することなく、カテーテルと針を用いながら、数ミリの傷跡が残るのみで手術と同等の治療効果・検査結果を得る。IVRはそれを可能とします。鳥取大学放射線科では大血管系・脳神経系を除くほぼ全領域を取り扱っており、肝細胞癌に対するTACE(経カテーテル的肝動脈化学塞栓療法)や近年増加傾向にある下肢閉塞動脈硬化症に対するPTA(経皮的血管形成術)のみならず、全国的にも限られた施設しか行われていないIVRについても各診療科と連携しながら行っています。症例数は全国トップレベル(2022年度IVR件数全国14位、国立大学4位、中四国1位:日本IVR学会HPより)であり、質の高い医療を提供しております。
1)下肢閉塞性動脈疾患に対する血管内治療 動脈硬化、長期血液透析などに伴う、間歇性跛行、下肢虚血、虚血性潰瘍疾患は増加傾向にある。これら末梢動脈疾患に対して当院では放射線科、心臓血管外科、形成外科、循環器内科、放射線技師、生理検査技師とともにカンファレンスを行い、治療方針を決定している。血管内治療については放射線科が主体となって治療を行っており、Drug coated balloon、stent-graft等の新たなデバイスも積極的に取り入れ、治療成績の向上に努めている。またHybrid手術室にて血栓内膜摘除やバイパス術と血管内治療を組み合わせたHybrid治療を心臓血管外科と共同で行い、また時には血行再建直後に形成外科によるデブリをその場で行うこともある。また研究面では自施設の治療成績のみならず、他施設共同研究にも積極的に参加し、至適治療法を解明できるように尽力している。
2)腹部ステントグラフト内挿術後のタイプⅡエンドリークに対するIVR:技術的側面と予後についての後方視的研究(多施設共同研究) 腹部ステントグラフト内挿術は有効な治療法であることが示されてきているが、一部は治療後に瘤径拡大を来す。特にタイプⅡエンドリーク(T2EL)による瘤径増大は治療の耐久性を損なうため、IVRにより瘤径増大を防ぐ試みがなされている。後方視的にT2ELに対するIVRの成功率、特に技術的側面が予後に与える影響を重要課題として検証する多施設共同研究が行われており、当院も研究実施機関の一つとして研究参加している。
3)保存的療法抵抗性の運動器難治性疼痛症状に対するイミペネム・シラスタチンを用いた経動脈的微細血管塞栓術(TAME)の有効性及び安全性を評価する臨床研究 適切な保存的加療が奏功しない肩、肘、膝、股関節等の運動器の慢性難治性疼痛では、異常な微細血管の増生とそれに伴走する神経が痛みシグナルの原因の一つと考えられている。この異常血管に対して短時間の塞栓効果を発揮するとされるイミペネム・シラスタチン(チエナム)を用いた経動脈的塞栓療法(TAME:transcatheter arterial micro-embolization)が慢性疼痛の緩和に有用との報告があり、当科でも疼痛緩和の有効性について臨床研究を行っている。
4)バスキュラープラグを用いた胃静脈瘤塞栓術に対する研究 孤立性胃静脈瘤に対するIVRとしてはバルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術(B-RTO)が一般的に行われ、2018年より保険収載となっているが、逆行性アプローチであるが故に難易度が高く、手技を完遂できない症例も経験される。2013年に韓国から発表されたPARTO(plug-assisted retrograde transvenous obliteration:バスキュラープラグを用いた胃静脈瘤塞栓術)はB-RTOの変法であるが、手技が簡便で結果も良好であり、当科でも取り入れている。B-RTOとの治療成績についての比較はほとんど行われておらず、研究課題として取り組んでいる。
5)バルーン補助下コイル塞栓術(Balloon-assisted coil embolization: BACE)に対する研究 コイル塞栓術は出血時の止血術としてのみならず、血流改変術としても重要な治療法であるが、“狙った場所”に“短区間”で“密”に金属コイルを留置することが安全で確実な効果を得るための鍵となる。バルーンカテーテルを用いて血流を遮断しつつ、カテーテルのkick-back現象を制御できるBACEは、この理想的なコイル塞栓を容易にする。m-BACE(マイクロバルーンを用いたBACE)は血管の末梢枝で行うことができ、D-BACE(dual-BACE:バルーン・マイクロバルーン間で行うBACE)はlanding zoneが短い症例において効果を発揮する。これらの効果と安全性について基礎的および臨床的に研究している。
6)Compressing法を用いたバスキュラープラグ塞栓術に関する研究 バスキュラープラグは個体の永久塞栓物質の一つであるが、device長が長いため適応が制限される問題点がある。バスキュラープラグを圧縮留置する方法(Compressing法)を用いることによりlanding zoneが短い症例にも適応可能となるが、安全性は証明されておらず、基礎的、臨床的検討を行っている。
7)下部消化管動脈性出血に対するNBCAを用いた塞栓術に関する研究 液体永久塞栓物質であるN-butyle-2-cyanoacrylate(NBCA)を用いた塞栓術(NBCA塞栓術)は液体の塞栓物質の一つであり、吻合枝も含めて塞栓できるため、止血率が高く、再出血率も低い。しかし、下部消化管では吻合枝が乏しく、安全性の面で危惧される側面がある。いかにNBCA塞栓術を行えば、安全に施行可能か検証している。
8)その他 門脈圧亢進症に伴う胃・食道静脈瘤に対する治療(B-RTO/PARTOの他、TIPS:経頸静脈的門脈大循環短絡術、PTO/PTS:経皮経肝的静脈塞栓術/硬化療法)、骨粗鬆症に伴う椎体の圧迫骨折に対する経皮的推体形成術(PVP)など先駆的治療を実施している。また、子宮筋腫及び前立腺肥大症に対する血管塞栓術(UAE、PAE)などについて、研究の実施ないし準備をしている。
- 放射線治療
・ 回転IMRT(強度変調回転原体照射)の導入 本治療法により従来のIMRTに比べて全体的な被曝の低減と、迅速なIMRT実施が可能になる。既に前立腺癌、脳腫瘍、頭頸部癌に関しては臨床導入をしているが、さらに複雑な領域である骨盤領域への導入を準備中である。
その他に ・ 肺腫瘍に対する呼吸同期放射線治療に関する基礎的検討 ・ 前立腺癌IMRTにおける直腸晩期障害のリスク因子、線量因子の検討 ・ 頭頸部癌NAC後、CRT/IMRTによる治療成績の検討 ・ 頭頸部癌放射線治療後の頸部動脈硬化の時間的、線量的検討 ・甲状腺癌ヨウ素内用療法後の唾液腺障害軽減に関する検討 などを行っている。
|