臼井真一先生

病態検査学講座 教授

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鳥取大学 医学部 保健学科 検査技術科学専攻
病態検査学講座 教授

研究内容

血液中のコレステロール輸送を担うリポ蛋白質の研究

リポ蛋白質とは

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 皆さん,コレステロールと聞くとどのようなイメージを思い浮かべますか。卵,不健康,肥満・・・・。血中コレステロールの増加は血管を詰ま
らせる原因の一つと考えられており,動脈硬化や冠動脈疾患などのリスク
因子になっているため,健康に悪いというイメージを持つ人が多いと思い
ます。しかし,身体に必要な成分であるため,適度な量を保つことが重要
です。この恒常性は主に肝臓が司令塔となって維持されています。
 コレステロールは水に溶けないため,血中では蛋白質との複合体である
リポ蛋白質(図1)として運搬されています。リポ蛋白質の異常は運動不足
や食生活の乱れにより生じやすく,糖尿病,肥満,脂肪肝,メタボリック
シンドロームなどで高頻度に認められます。トップ > 研究情報 > この人に注目! 臼井先生03リポ蛋白質には様々な種類が
あることが知られており(図2),健康診断などではHDL-コレステロール
やLDL-コレステロールなどの検査があります。しかし,それぞれのリポ蛋
白の機能は不明な点も多く,どのリポ蛋白質を臨床検査で測定すべきなの
かは実はよくわかっていません。

HDLの多面的機能

 私たちは体内でのリポ蛋白質の働き(機能や代謝)を調べたり,新しいリポ蛋白質分析法の開発に取り組んでいます。
 特に注目しているのがHDL。HDLは肝外に蓄積した余剰コレステロールを肝臓へ運搬する機能を担っており,コレ
ステロールを掃除することから「善玉」とも呼ばれています(ちなみにLDLは「悪玉」)。そして,HDLにも蛋白や
脂質の組成が異なる様々な種類(サブクラス)があり,個々のHDLは異なる機能を担っていると考えられています。
 例えば,炎症を抑える作用を有するHDL,抗酸化能を有するHDL,強いコレステロール引き抜き能を有するHDLな
どです。これらのHDLをどうすれば区別して分析することができるか?なぜこのような様々なHDLが存在するのか?
病気との関連はあるのか?このような課題解決を目指し,研究を行っています。

今後の展望

 HDLはこれまで肝外の余分なコレステロールを司令塔である肝臓へ運搬することが主な役割と考えられてきましたが,他にも様々な多面的機能があることがわかってきました。脂肪肝は肝臓に脂肪やコレステロールが過剰蓄積する
病気ですが,私たちは脂肪肝の発症予防にもHDLが関与している可能性を考えています。将来的にはこの研究が健康
増進や病気の予防に貢献できることを目指しています。

受験生へのメッセージ

 最近はあらゆる分野において若い世代の活躍がめざましいと感じています。自ら興味をもって,主体的に努力する
ことが成果へ結びつく共通の姿勢ではないでしょうか。その一方で,失敗するとすぐにあきらめてしまう人や長続き
しないタイプの人も多いと感じています。大学では自ら課題を見つけ,それを解決していく楽しさや感動を数多く経
験し,これから直面する様々な困難を乗り越えていくための力をぜひ養ってほしいと思います。