中曽一裕先生

生化学分野 教授

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鳥取大学 医学部 医学科
生化学分野 教授

研究内容

相対的細胞生物学・相対的生化学と病態

細胞同士もバランスの取れた関係が大切

 生体内では、細胞同士あるいは分子同士が絶妙のバランスで存在し、機能しています。ひとたびそのバランスが破綻すると、身体に異常を来たし、病気の原因にもなりかねません。そのバランスの崩れの始まりは、意外にも細胞の“頑張りから始まることもあります。例えば、ある細胞が劣悪な環境に置かれた時、その細胞は劣悪な環境でも頑張って生き延びようと、自分自身で様々な細胞応答現象を引き起こします。その頑張りとも言える細胞応答現象は、その細胞にとっては必要不可欠なものである一方、時に周辺の細胞に思いもかけない悪影響を及ぼすことがあります。例えば、脳の中でグリア細胞と呼ばれる細胞が活性化すると。周辺の神経細胞が悪影響を受けることがあり、実際アルツハイマー病のような神経変性疾患や脳の炎症で同様の現象が観察されます。さらに脳だけでなく、肝臓や腸、皮膚でも類似の現象が生じていることがわかってきています。
 生化学分野では、このような相対的な細胞間の力関係を変化させるメカニズムを研究し、それを引き起こす関連分子として、シスチン/グルタミン酸交換系トランスポーターに注目しています。自分たちの仮説を証明するために、アルツハイマー病モデルマウス、遺伝的にシスチン/グルタミン酸トランスポーターを欠失させたマウスなどを用い、病気の原因や新しい治療法開発の糸口を探しています。

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 また,ユニークな試みとして,学生参加型研究プロジェクト「因幡の白うさぎプロジェクト」も監修しています.神話「因幡の白うさぎ」では,傷付いた兎が蒲(がま)の花粉(古事記では穂ではなく花粉:蒲黄とされています)で治療されたと記されています.本プロジェクトは,神話「因幡の白うさぎ」をベースに,蒲黄の抽出成分と創傷治癒を科学的に分析する研究です.本学学生がプロジェクトの研究成果を全国レベルの学会で発表した実績もあります.興味のある方は挑戦してみませんか?

※因幡の白うさぎプロジェクトhttps://tottoritougoubunshi.jp/free/whitebunny

今後の展望

 現在、この相対的細胞生物学、相対的生化学の考えが、様々な病気に当てはまることがわかってきました。相対的細胞生物学、相対的生化学の考え方を追求して病気の原因の一端を明らかにし、本研究がいつか新しい治療に結びつく日が来ると信じています。

受験生へのメッセージ

 他の人と少し違う視点から物事を考えてみることは、研究には欠かせないことです。そして鳥取大学医学部には多くの個性的な研究室があります。本学を目指す受験生の皆さん、我々と一緒に医学を学び、研究に挑戦してみませんか?