常世田 好司先生

免疫学 教授

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鳥取大学 医学部 生命科学科
分子細胞生物学講座 免疫学分野 教授

研究内容

  • 免疫記憶現象を理解することで免疫疾患を完治させる研究

感染症や癌、自己免疫疾患、アレルギー疾患を完治させるカギは免疫記憶にある

 日本では2020年から新型コロナウイルスの感染流行が始まりました。通学や友人との交流が制限され、苦しい時期が長く続いています。そんな中、ワクチンの普及が重い空気を消し飛ばしてくれるかもしれません。現在では新型コロナウイルスによる致死率も大分下がり、元の生活に戻れるまでもう少しというところまで来ています。

 ワクチンは、私たちが生まれながらに持っている免疫記憶という能力を利用しています。どんなに技術が進歩しても、100年以上前から利用されているワクチンの効果にかなう感染症の予防策はまだ出てきません。しかし、中身は大きく進化し、mRNAワクチンという新技術が使われているだけでなく、「なぜワクチンが効くのか」というメカニズムがわかってきました。また、ワクチンに利用されている免疫記憶という現象が、実は、リウマチなどの自己免疫疾患や、花粉症などのアレルギー疾患などとも大きく関わっていることもわかりました。

 免疫記憶は、新型コロナウイルスを退治する現象にも、リウマチや花粉症がなかなか治らない現象にも関わっています。また、免疫記憶によって、私たちの身体は常に癌ができないようになっています。つまり、免疫記憶の中には、病気を抑える良い免疫記憶と、病気につながる悪い免疫記憶があるわけです。私の研究室では、この2つの記憶には差があるのか、悪い記憶のみ除去できないのかといったことを究明し、治らない病気をなくしていきたいと思っています。

 私たちの研究は、自己免疫疾患やアレルギー疾患につながる悪い免疫記憶がなぜできてしまうのか、また感染症や癌を抑える良い免疫記憶がなぜできなくなってしまうのか、病気が起こってしまう「はじまり」を見つけようとしています。病気が起こるメカニズムがわかると、病気の全体像が見えてきます。そうなると、どの細胞を除去すればよいのか、また活性化させればよいのかも見えてきます。是非、皆さんと一緒に、不思議な生命現象に触れながら、感染症や癌、自己免疫疾患、アレルギー疾患を完治させていきたいと思います。

 今後の展望

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 病気には予防と治療の2つの考え方があります。免疫記憶の研究をしていると、この両方が同時に見えてきます。病気の「はじまり」がわかると、予防方法が見えてきます。また「はじまり」がわかると、どこが主原因なのかが見えてきます。それらを押さえれば、治療につながります。治療は治癒・完治を目指すものであり、炎症を抑えるだけの対処療法とは根本的に異なります。生体の中で起こる、神秘的な現象を体系的に理解しながら、本当の標的を見つけることができれば、免疫に関わる多くの疾患をなくせると考えています。

受験生へのメッセージ

 生物の授業で、細胞の話を聞いたと思います。1ミリメートルの100分の1の細胞がたくさんの仕事を分担し、私たちの身体を守っています。彼らはどんなふうに仕事を学んでいくのだろう?学校のようなところはあるのだろうか?不思議に感じませんか?彼らは様々な仕事を持ち、それぞれの職種の細胞たちと協力しています。

 皆さんの心の中に「好奇心」は育っていますか?それは研究者に限らず、将来あらゆる職業に重要なものだと思います。一生謎解きをするような研究者を目指す、楽しい人生も是非、考えてみてください。