河月 稔先生

生体制御学 助教

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鳥取大学医学部 保健学科
生体制御学講座 助教

研究内容

「認知症の予防に関する研究」

「とっとり方式認知症予防研究開発・普及事業」

 「認知症」に対してどのようなイメージを持っていますか?若い人はピンとこないかもしれませんが、高齢の人はなりたくない病気と答える人が多いと思います。認知症は65歳以上で発症することが多いため、現実味がある高齢の人がこのように回答することは無理もありません。鳥取県の高齢化率は30%を上回っており、全国平均の約10年以上先を進んでいると言われています。このような状況において、認知症対策は非常に重要な課題となっています。
 そこで、2016年度から日本財団との共同プロジェクトとして鳥取県、伯耆町と連携して、鳥取県独自の認知機能低下を予防するためのプログラムを開発、検証、そして鳥取県全域への普及を目指す取り組み(とっとり方式認知症予防研究開発・普及事業)を行いました。プログラムの開発にあたっては、鳥取県内の多職種共同で現場の声を取り入れながら地域で実施できる現実的かつ科学的な根拠のある内容を検討しました。最終的に運動、知的活動に加えて認知症に関する正しい情報提供のための座学も取り入れ、“とっとり方式認知症予防プログラム”と命名したプログラムを開発しました。
 プログラムは、1回2時間として、運動50分、座学または休憩20分(座学は4週間に1回の頻度で実施)、知的活動50分で構成しました(図1)。効果検証にあたっては、2017年度と2018年度に65歳以上で介護保険未申請、かつ軽度の認知機能低下が疑われる伯耆町の住民のかたにご協力いただき研究を行いました。

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 6か月間のプログラム実施期間と6か月間の何も介入をしなかった期間の前後で様々な評価をさせていただき(図2)、主な検証結果としては認知機能の改善効果(図3)や上肢筋力、下肢筋力、柔軟性といった身体機能の向上効果(図4)がある可能性が考えられました(Ann Clin Transl Neurol. 2020; 7(3): 318-328.)。

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 現在は、鳥取県内の伯耆町以外の市町村や施設等で活用していただくためにプログラムの内容や検証結果の紹介を行うとともに、運動や座学の内容を収録したDVDや知的活動の内容を記載したパンフレットを提供するといった、普及活動に取り組んでいます。詳細は鳥取県のホームページに記載がありますので、興味のあるかたはご参照ください。
→鳥取県ホームページ(https://www.pref.tottori.lg.jp/item/1198192.htm#itemid1198192

今後の展望

 今回紹介した取り組みを通じて他の研究者、自治体の方々、研究に参加していただいた住民の皆様からたくさんのことを学ばせていただきました。立場の違う人と関わらせていただくことで、今まで考えたことがなかった課題が見えてきます。今後は研究を通して見えてきた課題の解決に向けて、引き続き地域を志向した取り組みを行っていきたいと思っています。
 現在考えているテーマは、“地域でできる認知症予防のための検査”です。どんな病気にも当てはまるかもしれませんが予防(病気になるのを遅らせる、病気になっても進行を緩やかにする)のためには早期発見が重要で、そのためには適切な検査が必要だと思っています。

受験生へのメッセージ

 私が所属する検査技術科学専攻の学生の多くは病院に就職して臨床検査技師として活躍しています。しかし、大学院に進学して研究をする人もいて、将来の進路に関しては様々な可能性があります。“臨床検査技師”という職業を知らなかった人もいると思いますが、これを機に調べてみてもらえるとうれしく思います。また、今回紹介した研究には、大学や大学院での学びの一環として一部の検査技術科学専攻4年生や大学院生にも協力してもらいましたが、鳥取大学でしかできないことを経験してもらえたと思っています。ここでしかできないことがたくさんある鳥取大学で一緒に学んでみませんか。皆さんと一緒に勉強できる日を楽しみにしています。