一坂吏志先生

神経生物学分野 助教

 一坂先生

鳥取大学生命科学科
生体情報機能学講座 神経生物学分野 助教

研究内容

児童虐待モデルラットが示す衝動的攻撃性増加に対する前頭前野を標的とした新規治療法開発
(具体的には、嫌な事があった時の衝動的攻撃性の制御に関わると考えられる眼窩前頭皮質外側部の幼少期の経験により形成された神経回路を標的とした治療法を試しています。)

こころの再生:こころの臓器は? 不適切な攻撃性との関わりは?

一坂先生_01みなさんは「こころ」は心臓にあると思いますか?答えはNO(脳)です。もしこころが心臓にあったら人工心臓を使うとこころが失われるため問題になりますが、実際には問題はなく使用されています。
私たちの研究室では、「こころ」の働きのなかでも、特に「攻撃性制御(攻撃の適切性の判断)」について研究しています。この攻撃性制御は、脳のなかにある眼窩前頭皮質(がんかぜんとうひしつ)が関係していることが分かっています。

眼窩前頭皮質は、脳の前の前頭前野の下側部分に位置し、視覚、味覚、嗅覚など全感覚情報が入力し、攻撃性制御(攻撃の適切性の判断)、人格、道徳(モラル)、社会性、後悔、楽しみや喜び、他者の情動的なこころの理解、自分に関する記憶の想起、自律神経制御(心臓にも影響)などに関わる領域です。更に詳しく見ると、眼窩前頭皮質の内側部は報酬など良いことの処理、外側部は罰など悪いことの処理に関わると考えられています(内側は楽しいことを思い出している時に活動が増加し、外側は嫌なことを思い出す時に活動が増加します)。
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この眼窩前頭皮質を損傷すると、不適切な攻撃が増加、適切な攻撃は減少し、幼稚化する、我慢できなくなる、キレやすくなる、多動になる、ギャンブル・アルコール・薬物に依存しやすくなる、性的欲動を抑性できなくなる、などのことが知られています。サイコパス(反社会性パーソナリティ障害)ではこの領域に問題があると考えられています。我々もラットでこの領域の活動を抑性すると攻撃性、不安様行動、うつ様行動が変化することを報告しています。
また、眼窩前頭皮質は児童虐待が原因となる解離性同一性障害(多重人格)の原因領域と推定されており、うつ病では内側部の活動低下や外側部の活動増加が原因ではないかとの説もでてきています。うつ病やいじめ問題などで問題になる自殺は日本では10代から30代の死因の1位であり、自己への衝動的攻撃性とも考えられています。もちろんいじめでは、問題なのは被害者ではなく、加害者側であり、加害者の眼窩前頭皮質の不適切な攻撃性の問題を解決すれば被害者の自殺等の問題の解決につながると考えています。我々は現在、児童虐待などの力による不適切な支配による過剰なストレス環境下での幼少期の養育が脳と攻撃性に及ぼす影響を研究しています。同時に、学校でのいじめのモデルラットの作製を試みているほか、幼少期にストレスをかけると青年期以降に衝動的攻撃性が増加する独自の児童虐待モデルラットをもちいて、その改善方法の開発を試みています。
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私たちが何気なく習得する言語。眼窩前頭皮質外側部の近くに言語野があり、言語は幼少期に親などの真似をすることで学習します。これと同様に、人格も幼少期に周囲にいる大人の真似をすることで発達すると考えられています。日本語を聞いて育つと日本語を話すようになり、愛されて育つと愛するようになり、いじめられて育つといじめるようになり、過度に干渉されて育つとストーカーになる(過干渉は児童虐待の一種)。我慢強く夢を追いかける大人の背中を見て育つと・・・。力で支配されたり我慢させられたり騙されて育つと・・・。問題はマネー(お金や財力)ではなく不適切なマネ(真似)かもしれません(反面教師にしてされて嫌な事を他人にしない方も多いですが)。原因に関しては諸説あり、はっきりとした原因は不明です。みなさんは問題の原因を何と考え、どうやって問題を解決しますか? 

今後の展望

①心臓のハートマーク❤に加えて、自作した脳のこころのマークである「マインドマーク」を広めることで、こころの疾患が心疾患ではなく精神疾患であるように、こころの臓器はハートではなくブレインであることを知ってもらいたい。そして、ディズニー映画で心臓にこころがあるという内容を脳の前の下の内側の部分にこころがあるという内容に変化させたい。

②不適切な攻撃性の脳内メカニズムの解明と根治を目指した治療法開発をとおして、児童虐待、いじめ等を防ぎ、こころ優しい攻撃性を示さない人が狙われる悲しい事件等を減らしていきたい。また、疾患と脳に関する知識を広めていくことで問題への理解を深め、人類の平和と未来の子ども達の明るい笑顔に貢献したい。

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受験生へのメッセージ

脳科学はとっても面白い学問です。AIのしくみに脳のしくみが使われていますが、AIだからといって信用できるわけではなく、真実が重要で、真実を入力したAIは信用度が高いものの、フェイクな情報や人為的に操作された情報を入力すると信用できないと考えます。脳も同様に、真実を入力することが重要です。
楽しむ脳領域でもある眼窩前頭皮質内側部を大切にし、こころを動かす映画の共通点である自己犠牲の意味を、生命科学という学問をとおして生物が生きて死ぬ意味を、脳科学をとおして脳死から生きるということを、医学をとおして傷ついたこころを癒す方法と傷つかない予防法を、一緒に考えてみませんか。
AIにはできなくて、愛にできること、あなたにできることはまだあります。人類のこころの雨を晴らし、桜を咲かせる・・・仲間になりませんか。
核の傘を不必要にし、なおかつ平和を実現するためには何が必要だと思いますか。
皆さんの知恵で、明日天気になーれ♪

☆登場キャラクター☆
一坂先生_05
※オリジナルのキャラクターです!