育児も仕事も頑張りたい男性医師の皆さんへ

落合諒也

仕事と家事・育児とをどのように両立していけば良いか?

初めまして。
鳥取大学放射線科の落合諒也と申します。男性も働きながら育児に積極的に参加していこうという機運が高まっている昨今、医師としての仕事と家事・育児とをどのように両立していけば良いのか、悩んでいる男子学生、男性研修医の方も少なくないのではないかと思います。今回はそんな皆さんの進路の選択において、少しでも参考になることを願って、この文章を書くことと致します。もちろん、同様のお悩みがあったり、パートナーが放射線科を考えているという女性の方にも読んで頂けるとうれしいです。

協力頂いている先生方に心から感謝

まず初めに私の現状について軽く紹介させて頂きます。この文章を書いている時は医師7年目、放射線科医5年目で、数ヶ月後に放射線診断専門医試験を控えています。仕事は画像診断に重きを置いていますが、週に半日はIVRにも参加して研鑽を積んでいます。日・当直は大学で3-4回/月、外勤先で2回/月です。当直明けはそのまま通常通り定時まで勤務です。家庭に関しては、医療職の妻と、2歳の子供が1人います。妻の勤務先の関係上、妻の病院の近くに住んでおり、私は毎日片道1時間かけて通勤しています。この職場からの長い距離のため、柔軟に配慮して頂き、緊急IVRのオンコールからは外してもらっています。

やはり、育児と仕事の両立は想像をはるかに超えて大変です。大きな問題の1つは、子供が体調を崩したときに誰が面倒を見るか?ということですが、妻に多く休んでもらってはいるものの、私も度々急なお休みを頂くことができ、協力頂いている先生方に心から感謝しております。当科は他の診療科と比較すると外来や入院主治医としての業務が少なく、突発的に休んでも穴を埋めやすいのではないかと思います。

全体の勤務を調整し、快く送り出して頂けた

育休や子供の看護休暇(子供が体調を崩した時の休暇で、年次有給休暇とは別に保証されています)についても気になるところかもしれません。当科では残念ながら今まで男性医師が制度としての育休を取得できた実績がありませんが、そもそも当大学病院全体で見ても、男性医師の育休取得者は令和3年度で3名、令和4年度で8名と、医師の総数を考えれば決して多いとは言えません。これにはいくつか原因があります。まず、学生や研修医の皆さんはまだあまり詳しくは知らないのではないかと思うのですが、大学病院で勤務する医師の多くは外勤と言って、他の病院でも週に1回程度勤務しています。いわゆるアルバイトです。この外勤は収入において大きな助けとなるのですが、育休を取得した場合、その期間は外勤が認められていません。そのため、収入が減少する心配があり、なかなか長期間の育休取得には踏み切れない現状があります。もう1つ考えられるのは、これは私にも該当したのですが、大学院生という特殊な身分です。大学全体の話なのでどの診療科でも同じだと思うのですが、大学院生には育休、看護休暇が与えられていません(制度的には存在しますが、無給休暇となるので実質ないものと思います)。子供を授かるような年齢層と大学院に入るキャリアの時期は重なりやすいので、育児との両立を考える方は進学の有無や時期についてよく考えた方が良いと思います。

ちなみに、1つ前に述べた外勤の問題や、大学院生の問題があっても、有給休暇を育休期間に充てることは可能です(有給休暇中に外勤を行うことも認められています)。実際に私も子供が生まれた直後に有給休暇をある程度まとめて取得しましたが、生まれる日がいつなのか確定しない中、私の予定に合わせて全体の勤務を調整し、快く送り出して頂けたこともありがたかったです。

空き時間に症例の画像を見たり、本を読んだりすることで補填

業務以外で研鑽を積む時間の確保も難しいです。家にいる時間の大半は子供の世話か、家事に時間を割かざるを得ません。また、妻も夜間休日の勤務がある職種ですが、夜間は免除、月2回の休日日直のみという形にしてもらい、この休日日直の日には私が1人で子供の面倒見や家事を全て担当します。これらにより、必然的に勉強時間や学術活動にかけられる時間は子供が生まれる前と比べて激減しました。時間外で勉強に多くの時間をつぎ込める先生や、緊急IVRの症例をどんどん経験している先生とはどうしても差がついてしまうのを実感しますが、画像診断の勉強は患者さんの診察や手術のような実技ではないので、わずかな空き時間に症例の画像を見たり、本を読んだりすることで少しでも補填できるのは強みです。

総合的に見れば当科は色々と柔軟な対応ができる環境

厳しい現状ばかりを述べてしまいましたが、総合的に見れば当科は色々と柔軟な対応ができる環境だと思います。私の現状から言っても、子供が体調を崩した時に急な休みを頂けたり、IVRのオンコールを免除してもらえたりと多くの配慮があると言えます。もし逆にIVRのキャリアを積みたければ、少なめでもオンコールに入りたいと申し出れば、快く応じてもらえるのではないかと思います。

男性の育休取得実績がないという点に触れましたが、その最初の1人になってくれる方の入局を強く望みます。育休を取りながらも十分なキャリアを積めるというロールモデルの存在があれば、きっと同じような境遇の男性医師も入局しやすくなり、誰もが育休を取りやすい環境になっていけるのではないかと考えるからです。

また、パートナーの方と家事、育児、仕事の負担をできるだけ平等にしたい、という方にとって当科は良い選択肢になるのではないかと思います。男性医師のパートナーは医療従事者となることが多いと思いますが、相手も当直や夜勤をしたいという話になった際、どちらかだけに負担を偏らせない勤務体系を相談できるというのは当科の特長だと思います。

未だ医師を取り巻く労働環境は厳しいのが現状ではありますが、放射線科への入局を少しでも考えているあなたの力があれば、必ず良い方向に変えていけると信じています。育児も仕事も全力で両立する、という欲張りな方と一緒に仕事ができるのを楽しみにしています。

落合先生

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