日本胃癌学会認定施設における胃癌手術成績の優位性を全国データで実証
概要
このたび、鳥取大学医学部消化器・小児外科学分野の藤原義之教授らの研究グループは、全国規模の診療データベースである National Clinical Database(NCD) を用い、日本胃癌学会認定施設と非認定施設における胃癌手術成績を比較しました。その結果、幽門側胃切除術および胃全摘術のいずれにおいても、認定施設では非認定施設と比べ、術後の手術関連死亡率が有意に低いことが明らかになりましたのでお知らせいたします。
胃癌は、わが国において依然として主要な癌の一つであり、治療の高度化・専門化が進んでいます。こうした中、日本胃癌学会は2023年度より、高度な胃癌治療を行うことができる医療機関を「日本胃癌学会認定施設」として認定する制度を開始しました。
本研究成果は、胃癌患者が手術を受ける医療機関を選択する際に、日本胃癌学会の施設認定制度が重要な指標となり得ることを示すものであり、今後のわが国の胃癌診療体制の質向上と集約化に貢献することが期待されます。なお、本研究成果は国際学術誌「Gastric Cancer」で2026年1月2日(日本時間)、オンライン公開されています。
つきましては、下記のとおり研究成果における記者説明会を行いますので、取材についてご理解とご協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
【記者説明会】
◆日 時:令和8年1月21日(水) 15:00~16:00
◆場 所:鳥取大学医学部附属病院 ゲストハウス棟2階 多目的会議室
◆出席者:医学部消化器・小児外科学分野 教授 藤原 義之
助教 松永 知之
本研究成果のポイント
3年前より日本胃癌学会が全国に認定した「高度に胃癌治療を行うことができる認定施設」とそれ以外の非認定施設における胃癌に対する手術成績を、全国規模の診療データベースであるNational Clinical Database(NCD)を用いて比較したところ胃癌に対する外科手術後の手術関連死亡率が、認定施設で有意に低いことが明らかになった。この結果は、胃癌患者が手術を受ける際の施設選択において、日本胃癌学会の施設認定制度が、重要な情報提供を可能にすることが示された。本研究は日本胃癌学会研究推進委員会の支援を受けた研究であり、この度国際学術誌Gastric Cancer誌に掲載された。
背景
胃癌はわが国において、大腸癌、肺癌に次ぐ3番目に多い悪性腫瘍であるが、胃癌の原因の大部分を占めるピロリ菌の感染率が著明に減少しているため、今後胃癌患者数は減少していくことが予測される。一方、胃癌治療の3本柱である、手術、内視鏡治療、薬物療法は日々進化し、高度化・専門化しているのが現状である。このような背景のもと、日本胃癌学会は、2023年度より、胃癌治療を高度なレベルで行うことができる施設を認定する制度を発足し、現在全国に448施設を認定している。この制度の発足に認定制度委員長として関与したのが鳥取大学消化器・小児外科の藤原義之である。今回の研究は、胃癌治療の柱である外科手術に関して、認定施設と非認定施設の成績を、NCDを用いて、消化器・小児外科の松永知之助教が検討した結果、胃癌手術後死亡率が、認定施設が非認定施設と比較し有意に低いことが判明した。この結果は、国際学術誌Gastric Cancer(インパクトファクター6.1)に掲載された。
研究成果の内容
日本胃癌学会は、3年前に高度な胃癌治療を行える施設を認定する制度を発足し、現在日本中に448施設を認定している。正確には、施設基準が厳しいA施設149施設とそれに準じる基準を満たすB施設299施設である。(参考までに、鳥取県では、A施設は大学病院と鳥取県立中央病院、B施設は 鳥取赤十字病院、鳥取市立病院、県立厚生病院、山陰労災病院、米子医療センターが認定されている。)
重要な結果は、胃癌に対する代表的な術式である幽門側胃切除、胃全摘術とも非認定施設に比較し、認定施設B、施設認定Aの順に有意に術後死亡率が低い結果であったことである。具体的には、術後死亡率(リスク比)は、非認定施設、認定施設B、認定施設Aの順に、幽門側胃切除術において、1.6%, 0.8%, 0.4% (リスク比 1, 0.59, 0.39) 胃全摘術において、2.2%, 1.3%, 0.7% (リスク比 1, 0.67, 0.41) という結果であった。
この結果は、胃癌治療の重要な柱である手術を受ける場合に、患者が施設を選択するうえで認定施設であるかどうかの情報が有益であることを示すものであり、今後日本胃癌学会としても今後これらの成果を広く社会に発信していく予定です。
今後の展開
胃癌は、かつて日本で最も頻度の高い国民病と呼ばれた疾患であり、わが国の胃癌治療成績は、世界最高峰である。しかし、胃癌罹患率は急速に減少しており、高度な胃癌診療レベルの維持、胃癌診療従事者の教育体制の確保のためには、胃癌診療施設の集約化が必須な状況である。今回の研究結果は、施設認定制度の必要性を高める結果となり、我が国の胃癌診療体制の発展に貢献することが期待される。
用語説明
日本胃癌学会:一般社団法人 胃癌に関する基礎的並びに臨床的研究の促進・発展を推進し、治療成績の向上を目的とする学術団体 会員数4500名
日本胃癌学会認定施設:胃癌治療の3本柱である外科手術・内視鏡治療・薬物治療(抗癌剤・免疫療法・分子標的治療)とそれを支える病理組織診断体制が整備された施設を認定する。厳しい基準のA施設とそれに準じる基準のB施設が認定される。https://www.jgca.jp/facility/ninteishisetsu/
National Clinical Database(NCD):日本外科学会を中心に運営されている全国規模の臨床データベース。全国の手術症例が網羅的に登録されており、日本の外科医療の質評価や医療政策立案にも用いられている信頼性の高いデータベース。
論文情報
- 題目:Comparative study of the short-term outcomes of gastric cancer surgery between Japanese Gastric Cancer Association-certified and non-certified institutions: A retrospective cohort analysis using a national database in Japan.(日本の全国データベースを用いた日本胃癌学会施設認定の有無と胃癌術後の短期成績の比較研究)
- 著者: Tomoyuki Matsunaga(責任著者), Hideki Endo, Hiroyuki Yamamoto, Koshi Kumagai, Shingo Kanaji, Hisato Kawakami, Chika Kusano, Ryoji Kushima, Mitsuhiro Fujishiro, Kensei Yamaguchi, Takaki Yoshikawa, Yuichiro Doki, Yoshihiro Kakeji, Yoshiyuki Fujiwara
- 掲載誌:Gastric Cancer 2026 Jan 2.
- DOI:10.1007/s10120-025-01694-8.
研究支援
日本胃癌学会研究推進委員会の指定研究であり、NCD利用に関する支援を受けている。
お問い合わせ先
<研究に関すること>
藤原 義之(フジワラ ヨシユキ) 鳥取大学医学部 消化器・小児外科学 教授
松永 知之(マツナガ トモユキ) 鳥取大学医学部 消化器・小児外科学 助教
〒683-8504鳥取県米子市西町36-1 Tel:0859-38-6567 Fax:0859-38-6569
<報道に関すること>
鳥取大学米子地区事務部総務課広報係
TEL:0859-38-7037
FAX:0859-38-6992
E-mail: me-kouhou@ml.adm.tottori-u.ac.jp


