5000年前の初期稲作農耕民は結核症を患っていた
―東アジア最古の結核症を長江デルタ地域の新石器時代人骨にて発見―
鳥取大学医学部解剖学講座の岡崎健治助教は、土井ヶ浜遺跡・人類学ミュージアム、東京大学総合研究博物館、金沢大学新学術創成研究機構、九州大学総合研究博物館、上海博物館らの日中共同研究グループの研究代表者として研究に取り組み、東アジア最古の結核症を長江デルタ地域の新石器時代人骨にて発見し、本研究が米国古病理学会発行の学術雑誌電子版に筆頭著者として掲載されました。
これを受けて、平成31年2月4日(月)に解剖学講座の海藤俊行教授、岡崎健治助教が出席し、記者説明会を行いました。
岡崎助教らの共同研究グループは、上海市の遺跡から出土した184体の新石器時代人骨をクリーニング・分析する過程で、結核症を患っていた人骨を発見しました。この人骨は5000年以上前に埋葬された女性であり、東アジアで最古の結核症の証拠になります。
本研究の成果によって、水田稲作の起源地である長江デルタ地域にて東アジア最古の結核症を確認したことは、結核菌と水田稲作の濃密な関係が少なくとも新石器時代まで遡ることを裏付けました。水田稲作の発展に伴う社会環境の変化(集住化、人口増加と集団の移動・拡散、動物の家畜化など)によって結核菌がヒトと共生することが可能になったものと考えられます。日本人の起源問題に関連する古代における結核の拡散ルートの解明につながることが期待されます。
なお、本研究は、日本学術振興会による科学研究費助成事業(基盤研究(C))[中国新石器時代長江下流域における農耕適応戦略の自然人類学的研究]、新学術領域研究(研究領域提案型)[高精度年代測定および稲作農耕文化の食生活・健康への影響評価]、中国国家社科基金重大項目[上海広富林遺址考古発掘及多学科合作研究報告]の一環として行われたものです。
【論文タイトル】
“A paleopathological approach to early human adaptation for wet-rice agriculture: The first case of Neolithic spinal tuberculosis at the Yangtze River Delta of China”
【著者】
Kenji Okazaki, Hirofumi Takamuku, Shiori Yonemoto, Yu Itahashi, Takashi Gakuhari, Minoru Yoneda, Jie Chen


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