再生医療学分野

Division of Regenerative Medicine and Therapeutics

分野の特色

 当分野では、再生医療を「損傷・疾患・加齢・先天性障害によって機能低下や機能不全を起こした組織・器官、さらには、それらの要因によって欠損した組織・器官を再生させる医療」と捉え、生体外で作製した臓器を移植する臓器再生研究だけでなく、生体内で疾患や加齢によって機能低下した臓器の再生にも焦点を当て、研究と教育活動を展開しています。研究では、様々な臓器を対象にし、臓器再生の要である幹細胞研究の推進と再生技術の革新に注力しています。さらに、「がん」の形成維持に関わるがん幹細胞や、がん治療による組織障害からの再生も研究対象としています。また、幹細胞生物学や再生医療研究を基盤として、様々な領域で活躍できる人材を育成することも、当分野の大きな使命と位置づけています。

分野での主要な研究テーマとその取り組みについての説明

1.幹細胞生物学を基盤とした皮膚再生医療技術の開発
 われわれの皮膚の一部から採取した表皮幹細胞を培養することで、生体外でシート状の表皮組織を作製できます。この培養表皮シートは、広範囲の重度熱傷の治療に幅広く応用されているだけでなく、遺伝子導入技術と組み合わせて先天性皮膚疾患の遺伝子治療にも利用されています。当分野では、この培養表皮シートを用いた再生医療および遺伝子治療を、より効率化・高度化するために、細胞生物学的手法のみならず数理情報科学的手法も駆使しながら研究を行っています。また、加齢や疾患によって低下した皮膚機能を再生させるため、皮膚の恒常性維持機構の解明を目指した研究も進行中です。 

2.iPS細胞を用いた心臓形成および心臓再生研究
 ヒトiPS細胞から心臓の各種サブタイプ心筋(心臓前駆細胞、心房筋、心室筋、ペースメーカ細胞等)を個別に作製し、それらを用いて、心臓形成メカニズムの解明、徐脈性不整脈に対する創薬と再生医療を目指した研究を進めています。 

3.がん幹細胞と腫瘍免疫
 免疫チェックポイント阻害剤はがん治療に大きな進歩をもたらしましたが、現在のところその恩恵は一部の患者に限られています。一方、がん幹細胞はがん免疫を回避しながら、がん組織の発生と再発に関わることが示唆されています。このことからより効果的ながん免疫治療の開発には、がん幹細胞の機能解明が重要であると考えられます。そこでこの研究では、肝細胞癌を対象としてがん幹細胞による免疫回避メカニズムの解明を行っています。これと同時に、がん組織内の免疫細胞を標的とする新たな治療薬の開発についても、研究を進めています。 

4.ヒト血管内皮細胞障害の機序と予防法の研究
 加齢や生活習慣病等によって血管内皮細胞は傷害されます。しかし、その仕組はまだ不明な点が多いです。この研究では、ヒト血管内皮細胞を使用して、加齢による血管内皮細胞の変化や、尿酸塩結晶に代表されるDAMP(生体内で生成される炎症を引き起こす物質)による血管内皮細胞へのダメージや血管の炎症反応に関して、血管障害の治療に結つくように基本的なメカニズムの解明を目指します。 

5.臓器線維症治療薬の開発
 臓器線維症は臓器の機能不全につながる重篤な疾患で、肝臓や腎臓で生じる線維化に対しては、いまだ有効な治療薬がありません。この問題を解決するべく、低分子化合物によるアプローチの他、組織再生能の高い間葉系幹細胞のエクソソームやセクレトームといった細胞外分泌因子からのアプローチにより、肝線維化、腎線維化の治療薬開発に取り組んでいます。

スタッフ

教授         難波 大輔
准教授        白吉 安昭
准教授        土谷 博之
助教         經遠 智一
助教         板場 則子
プロジェクト研究員  野津 智美 

特任教授       汐田 剛史

 電話番号

TEL 0859-38-6435

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