まとめ | 対策 | |
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2021年に全国の中学校、高等学校を無作為に抽出し、中学18校(協力率20%)高校17校(同27%)の協力を得て、学校にて紙またはウェブベースの調査を実施した。
回答者数15,832人(中学8,266人、高校7,566人)であった。
送付時期 5月中旬 | 実施 方式 | 送付 校数 | 生徒 回答校数 | 学校 協力率 | 配布対象 生徒数 | 生徒 回答数 | 生徒 回答率 |
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中学校 | 紙 | 27 | 9 | 33% | 14951 | 4626 | 31% |
ウェブ | 64 | 9 | 14% | 30274 | 3648 | 12% | |
中学計 | 91 | 18 | 20% | 45225 | 8274 | 18% | |
高校 | 紙 | 20 | 9 | 45% | 15055 | 4935 | 33% |
ウェブ | 42 | 8 | 19% | 35268 | 2643 | 7% | |
高校計 | 62 | 17 | 27% | 50323 | 7578 | 15% | |
合計 | 紙 | 47 | 18 | 38% | 30006 | 9562 | 32% |
ウェブ | 106 | 17 | 16% | 65542 | 6291 | 10% | |
合計 | 153 | 35 | 23% | 95548 | 15852 | 17% |
男 | 女 | 合計 | ||
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中学1年 | 人数 | 1498 | 1299 | 2797 |
割合 | 53.6% | 46.4% | 100.0% | |
中学2年 | 人数 | 1468 | 1326 | 2794 |
割合 | 52.5% | 47.5% | 100.0% | |
中学3年 | 人数 | 1464 | 1175 | 2639 |
割合 | 55.5% | 44.5% | 100.0% | |
中学 学年不明 | 人数 | 17 | 19 | 36 |
割合 | 47.2% | 52.8% | 100.0% | |
高校1年 | 人数 | 1300 | 1656 | 2956 |
割合 | 44.0% | 56.0% | 100.0% | |
高校2年 | 人数 | 1022 | 1277 | 2299 |
割合 | 44.5% | 55.5% | 100.0% | |
高校3年 | 人数 | 1038 | 1262 | 2300 |
割合 | 45.1% | 54.9% | 100.0% | |
高校 学年不明 | 人数 | 7 | 4 | 11 |
割合 | 63.6% | 36.4% | 100.0% | |
合計 | 人数 | 7814 | 8018 | 15832 |
割合 | 49.4% | 50.6% | 100.0% |
学年不明であるものは、合計47人(回答者の0.3%)、以下の集計表からは除外した。
月飲酒 | 月喫煙 (紙巻タバコのみ) | 月喫煙 (加熱式タバコ含む) | ||
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男 | 中学1年 | 1.9% | 0.1% | 0.1% |
中学2年 | 2.0% | 0.1% | 0.3% | |
中学3年 | 1.7% | 0.4% | 1.0% | |
高校1年 | 1.2% | 0.3% | 0.7% | |
高校2年 | 3.6% | 0.5% | 0.6% | |
高校3年 | 4.3% | 1.0% | 1.3% | |
女 | 中学1年 | 0.8% | 0.1% | 0.2% |
中学2年 | 0.7% | 0.2% | 0.2% | |
中学3年 | 2.7% | 0.1% | 0.5% | |
高校1年 | 1.8% | 0.5% | 0.6% | |
高校2年 | 3.8% | 1.0% | 1.1% | |
高校3年 | 2.9% | 0.6% | 0.8% |
回答数 | 15,832人 | 参加校数 (協力率%) |
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中学生 (%) | 8,266人 (52.2%) | 中学校 18校 (19.8%) |
高校生 (%) | 7,566人 (47.8%) | 高校 17校 (27.4%) |
2021年度の中高生別の飲酒頻度 | |||
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飲酒経験 | 月飲酒 | 週飲酒 | |
中学生 | 8.5% | 1.6% | 0.1% |
高校生 | 15.4% | 2.8% | 0.6% |
2021年度の中高生別の喫煙頻度 | |||
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喫煙経験 | 月喫煙 | 毎日喫煙 | |
中学生 | 1.9% | 0.2% | 0.0% |
高校生 | 2.6% | 0.6% | 0.1% |
紙巻き・加熱式・電子タバコを 合わせた月喫煙の推移 | |||
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2017年度 | 2021年度 | ||
中学生 | 1.1% | 0.5% | |
高校生 | 2.2% | 1.0% |
紙巻きたばこの喫煙率は着実に減少しているが、新型タバコを含めると減少が鈍化している。
今後、これまでの未成年飲酒・喫煙対策(ポピュレーション・アプローチ)に加え、
未成年飲酒や喫煙に対するハイリスク・アプローチ(スクリーニング、早期介入、課題への支援)も重要と考える。
学校 | 方法 | 対象 学校数 | 参加 学校数 | 学校 参加率 | 対象 生徒数 | 参加 生徒数 | 生徒 参加率 | 参加学校 生徒数 | 左記での 生徒参加率 |
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中学 | Paper | 27 | 9 | 33.3 | 14,951 | 4,626 | 30.9 | 5,011 | 92.3 |
Web | 64 | 9 | 14.1 | 30,274 | 3,648 | 12.0 | 4,158 | 87.7 | |
Total | 91 | 18 | 19.8 | 45,225 | 8,274 | 18.3 | 9,169 | 90.2 | |
高校 | Paper | 20 | 9 | 45.0 | 15,055 | 4,935 | 32.8 | 7,042 | 70.1 |
Web | 42 | 8 | 19.0 | 35,268 | 2,643 | 7.5 | 4,554 | 58.0 | |
Total | 62 | 17 | 27.4 | 50,323 | 7,578 | 15.1 | 11,596 | 65.4 | |
全体 | Paper | 47 | 18 | 38.3 | 30,006 | 9,561 | 31.9 | 12,053 | 79.3 |
Web | 106 | 17 | 16.0 | 65,542 | 6,291 | 9.6 | 8,712 | 72.2 | |
Total | 153 | 35 | 22.9 | 95,548 | 15,852 | 16.6 | 20,765 | 76.3 |
2021年に全国の中学校、高等学校を無作為に抽出し、中学18校、高校17校の協力を得て、学校にて紙あるいはウェブを使った調査を実施した。
ウェブ調査(Web)は学校の参加率だけではなく、生徒の参加率も紙調査(Paper)より低かった。
特に高校2年生、3年生の参加率は低かった。
紙 | Web | p-value | OR | 95%CI | p-value | ||||
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n=9,539 | (%) | n=6,287 | (%) | ||||||
生涯飲酒経験 | 9,441 | 11.8 | 6,287 | 9.8 | <0.001 | 0.86 | 0.78 | 0.96 | 0.005 |
現在飲酒 | 9,508 | 2.5 | 6,287 | 1.7 | 0.002 | 0.77 | 0.61 | 0.98 | 0.032 |
生涯紙巻きたばこ経験 | 9,458 | 2.1 | 6,287 | 2.4 | 0.218 | 1.26 | 1.01 | 1.56 | 0.039 |
現在紙巻きたばこ | 9,465 | 0.5 | 6,287 | 0.3 | 0.023 | 0.61 | 0.34 | 1.09 | 0.092 |
生涯加熱式タバコ経験 | 9,500 | 1.2 | 6,287 | 1.1 | 0.614 | 1.01 | 0.74 | 1.37 | 0.972 |
現在加熱式タバコ使用 | 9,460 | 0.5 | 6,287 | 0.3 | 0.184 | 0.77 | 0.45 | 1.32 | 0.344 |
生涯電子タバコ経験 | 9,487 | 1.2 | 6,287 | 1.1 | 0.337 | 0.93 | 0.69 | 1.27 | 0.652 |
現在電子タバコ使用 | 9,470 | 0.4 | 6,287 | 0.3 | 0.144 | 0.77 | 0.43 | 1.37 | 0.374 |
運動習慣 | 9,455 | 59.7 | 6,287 | 57.8 | 0.014 | 0.89 | 0.83 | 0.95 | 0.001 |
朝食欠食 | 9,407 | 4.7 | 6,287 | 4.3 | 0.21 | 0.98 | 0.84 | 1.15 | 0.784 |
野菜摄取不足 | 9,440 | 2.3 | 6,287 | 1.6 | 0.003 | 0.89 | 0.83 | 0.95 | 0.001 |
不眠症状 | 9,479 | 21.4 | 6,287 | 20 | 0.034 | 0.92 | 0.85 | 0.99 | 0.04 |
6時間未満の睡眠時間 | 9,474 | 25.9 | 6,287 | 32.6 | <0.001 | 1.56 | 1.45 | 1.68 | <0.001 |
メンタルヘルス不良 | 9,449 | 56.9 | 6,287 | 49.5 | <0.001 | 0.74 | 0.69 | 0.79 | <0.001 |
大学への進学希望 | 9,480 | 41.6 | 6,287 | 41.4 | 0.823 | 1.26 | 1.17 | 1.35 | <0.001 |
オッズ比は紙調査を1とした場合の、Web調査の状況を示し、性、年齢、学校、中高で調整したロジスティック回帰分析を行った。
紙調査では調査漏れがでるが、ウェブ調査ではそれはない。
調整オッズ比で検討すると、ウェブ調査の回答者は紙調査よりもより望ましい生活習慣を回答する傾向があった。
また、運動習慣のある者が少なく、大学への進学希望者が多かったことより、調査方法による回答結果の違いではなく、回答集団の違いが示唆される。
日本の学校においてはウェブ調査を行う問題点として情報通信環境が未だ不十分であること、全体的な参加率を上げるためには学校長の協力を得るための事前の活動が必要であり、横断的な連携を強化する必要がある。
青少年への酒類広告の曝露は非飲酒者の飲酒開始と、飲酒者の酒類消費の増加に関連するという先行研究がみられる。
Anderson PS. , et al. Alcohol Alcohol. 2009;44(3):229-43
日本の未成年者の飲酒状況と酒類広告曝露の実態を明らかにする。
2021年全国中学・高校生調査
月飲酒者:過去30日以内に飲酒した者
広告曝露:30日以内にTV, Web,店頭,交通機関それぞれの酒類広告曝露有りを選択
月飲酒に対する広告の累積曝露数をロジスティック回帰分析を用いて解析
中高生は酒類広告へ高率に曝露されている。
月飲酒者でWeb,店頭,交通機関の広告曝露が高頻度である。
対象 人(%) | 月飲酒なし n=15343 | 月飲酒あり n=340 | p-value |
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テレビ | 13709(89.4) | 294(86.5) | 0.089 |
ウェブ | 5504(34.9) | 151(44.4) | 0.001 |
店頭 | 4199(35.9) | 133(39.1) | <0.001 |
交通機関 | 1894(12.3) | 55(16.2) | 0.034 |
上記の内 1つ以上 | 14464(94.3) | 320(94.1) | 0.904 |
※中高生の全学年、男女合わせて集計
複数の酒類広告媒体に曝露されるほど、月飲酒のオッズ比が増加する(図)
図中の広告媒体はWeb、店頭、交通機関の累積数とした。
月飲酒の有無に交絡すると思われた因子(喫煙等)を調整して多変量解析を行った。
(テレビは曝露率が非常に高率で、解析に適さないため、含めていない。)
➡青少年健全育成の観点から適切でない社会環境と考えられる。
未成年者の飲酒防止のため、飲酒防止教育の啓発と酒類広告の規制を含めた総合的な対策が必要であることが示唆された。
不適切な飲酒を防ぐ社会環境の整備が求められる。
男性の飲酒問題が減少傾向にあるのに対して女性は横ばいが現状であり相対的に女性の飲酒が重要視される。
本研究では、女性の飲酒行動に着目した実態調査を行う。
調査期間 | 2021年9月~2022年1月 |
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対象者 | 女性で、 1日当たりの純アルコール摂取量が20g以上にあたる30名を本研究の対象者とした。 平均年齢47.2歳(SD=11.1)。 |
質問項目 | 自記式調査票でアルコール摂取の実態を回答してもらい、インタビューにて多量飲酒になるパターン、多量飲酒になる要因、飲酒に持つ本人のイメージ、多量飲酒となったきっかけ・要因などを尋ねた。 |
分析 | 得られた語りに対してオープンコーディングによってラベリングし、内容を要約した。 |
要因 | ラベル |
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飲酒・酩酊が 目的 |
お酒の味が好き、飲酒が趣味、酔った感覚を求めて、自分へのご褒美 |
手段的飲酒 | 仕事とプライベートの区切り、1日の締め、睡眠の導入、趣味のお供、食事の向上、イベントの添え物、コミュニケーションツール |
ライフイベント・ 生活の変化 |
授乳期間の終了、子育ての完了、就職、近親者の喪失・離婚、車を運転しない生活、一人暮らし、自由、空き時間の増加 |
ストレスからの 逃避 |
現実逃避の手段として、仕事のストレス、育児のストレス、家族関係のトラブル、多忙な生活、コロナ禍でのストレス |
環境要因 | 夫が飲む(夫と飲む)、家族・友人・同僚と飲む、外食時、家族が飲酒に肯定的、安価・大量に入手可能、飲み放題 |
習慣的 | 飲酒が習慣になっている、キッチンドリンカー、意識するまでもない生活の一部、晩酌、帰宅したらまず飲むもの、のどが渇いたとき・水の代わりに |
本研究では特に“家族が飲酒に肯定的“、 “安価・大量に入手可能“などが、アルコールへのアクセスを容易にする項目として本研究では見られた。
実施可能性が高い対策として提唱する“Best buys”を日本でも導入することが女性の多量飲酒防止にも有効であろう。
女性の多量飲酒者の飲酒行動の特性が明らかになり、これをもとに女性の飲酒行動に関する全国調査(Web調査)の調査票を開発した。
飲酒量や飲酒頻度、AUDIT(アルコール使用障害同定テスト)を元に、不適切量飲酒者を特定し、女性の不適切量飲酒者の特性や問題飲酒につながる要因を検討する。
なお、インターネットパネル調査であるため、有病率の推計はできない。
2022年10月、インターネットパネル調査実施
対象者 18~79歳の方、
合計15,000人(女性12,000人、男性3,000人)
合計 | 女性 12,000人 | 男性 3,000 人 |
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20代 | 2,500人 | 500人 |
30代 | 2,500人 | 500人 |
40代 | 2,500人 | 500人 |
50代 | 2,500人 | 500人 |
60代 | 1,000人 | 500人 |
70代 | 1,000人 | 500人 |
アルコールによる健康障害を予防するための効果的な戦略の一つとして、不適切な飲酒のスクリーニングと簡易介入(Screening and Brief Intervention, SBI)が推奨されるが、日本での有効性を示した報告は乏しい。
この研究は研究班で開発した介入ツールを用いて職場で保健師が簡易介入を実施することで飲酒習慣が改善するかどうかを検証するために実施した。
研究デザイン | 無作為化比較試験 |
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対象、セッティング | 2019年1月から12月の期間に鳥取県・島根県で協力の得られた5か所の事業所の従業員のうち、AUDITにて8点以上かつ、研究参加の同意が得られたもの |
介入群と対照群 |
ワークシートを用いた通常版の節酒支援:15分の面接 ワークシートを用いた短縮版の節酒支援: 5分の面接 リーフレットを渡し、目を通すように勧める:対照群 |
主要評価項目 | 介入から半年後の1週間当たりの純アルコール摂取量(g)、週あたりの飲酒頻度(日)、過去30日の大量飲酒経験(機会大量飲酒) |
5つの事業所の従業員351名が、ランダムに3群に割り付られた。
1年後まで追跡可能であった333名の分析を行なったところ、
15分介入群では半年後に有意な週飲酒量の減少(-38.1g(13%)/週)がみられた。
3群とも機会大量飲酒の割合が有意に低下し、全体での飲酒量は減少していた。
1回15分の保健師による介入が飲酒量低下に有効であり、5分では有効性は見られなかった。
15分程度の介入が理想的だと考えられる。
1年後は有意でなかったが飲酒量は減少しており、新型コロナ流行等対照群の予期せぬ飲酒量低下の影響が考えられた。
今回の対象は男性が大半であり、女性での介入の有効性も検証が必要である。
15分の保健師による簡易介入(減酒支援)は少なくとも6か月時点で飲酒量減少に効果があった。
職場での積極的な減酒支援の活用はアルコール関連健康障害を低減に貢献しうる。
プロトコール論文;Kuwabara Y, et al. Yonago Acta Med. 2021;64(4):330-338.
介入の効果:Kuwabara, Y., et al. Alcohol Clin Exp Res 022.;46(9):1720-1731.
WHOの報告によると、飲酒消費量の増加にともなってアルコール関連健康障害が直線的に増加することが示される。
(30g/日の増加で相対リスクが1.00より1.25に上昇する。)
この研究で明らかになった38g/週(5.4g/日)の差で、相対リスクは0.25/30×5.4=0.045の差となる。
つまり、集団における5.4g/日の飲酒量低下は、集団のリスクを4.5%程度低下させると見込める。
以上を積算すると飲酒量の多い集団の減酒で多くのアルコール関連健康障害の低減効果が見込める。
過去の厚生労働省の調査では、約1400万人がAUDIT8点以上であり、減酒支援の対象になる。
減酒支援の普及により、我々の研究結果が示す飲酒量低下が達成されることで、期待されるアルコール関連健康障害低減効果のインパクトは大きいと推測できる。
今後どのようにして定量的に示すのか検討が必要である。