Tottori University Faculuty Of Medicine Division Of Urology
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トリモダリティ治療

トリモダリティ治療とは

ハイリスクの限局性前立腺癌では、単独の治療のみでは再発する可能性が高く、併用療法での治療成績向上への試みがなされてきました。トリモダリティとは、密封小線源治療+外部放射線治療+ホルモン療法を組み合わせた治療法で、良好な治療成績が期待できるとされています[1-3]。しかし、ホルモン療法の使用方法や期間に関しては明確な基準が存在していないのが現状です。現在、本邦では高リスク症例に対して密封小線源治療と外部放射線治療の併用療法に対するホルモン療法の相加効果の検証が行われています(TRIP試験)[4]。当院では6ヶ月間の術前ホルモン療法を行ったあとに密封小線源治療と外部放射線治療を行い、その後は2年間のホルモン治療を継続します(図1)。

図1 | 当院でのトリモダリティの流れ

ホルモン治療について

高リスク前立腺癌に対するIMRT治療においては禁忌の場合を除くホルモン療法を併用します。当院でのスケジュールはIMRT前に6ヶ月間のホルモン治療を施行し、IMRT終了後もホルモン治療を約2年間継続します。ホルモン治療の副作用としてほてり、頭痛、発汗、肝機能障害、性欲減退、勃起障害、女性化乳房、乳房痛、精巣萎縮、貧血、骨粗鬆症、肥満、糖尿病、心血管疾患、筋肉減少、認知機能の低下、うつ傾向、などが生じることがあり、女性の更年期症状と一部似ています。

外部放射線治療の合併症について

放射線治療の合併症は、発症時期により早期(治療中あるいは治療後早期に生じる合併症)と晩期(治療後数ヶ月以降に生じる合併症)に分類されます。
早期合併症として頻尿、排尿時痛、膀胱刺激症状、排尿困難(尿閉)、血尿などの排尿症状と下痢(まれに出血)などが挙げられます。頻尿、排尿困難などの症状は比較的高頻度にみられますが、ほとんどが一過性であり治療後1ヶ月程度で改善します。
外照射療法では晩期の出血直腸障害生じやすい傾向にあります。発生頻度は数%~10%と報告されており、そのほとんどは自然に軽快しますが、まれに内視鏡的な止血術の適応となることがあります。その他にも血尿、尿意切迫、排尿困難などの排尿障害や、直腸出血、肛門痛などがみられることがあります。

ハイドロゲルスペーサー(SpaceOARシステム®)について

トリモダリティでは線量が増加することで、治療に伴う有害事象の増加も懸念されます。当院では、放射線の直腸への影響を低減する目的でSpace OAR® ハイドロゲルスペーサというゲル物質を密封小線源治療後に挿入しています。Space OAR® は前立腺癌の放射線治療に使用するために2018年5月から保険収載され、当院では2019年5月から導入しています。前立腺と直腸との距離を1㎝程度離すことで、直腸被ばくを低減することが出来ます(図2)。トリモダリティ予定の全ての患者さんにSpace OARの適応があるわけではありません。直腸側で被膜外浸潤が疑われる場合には適応外となります。

図2 | ハイドロゲルスペーサ

参考文献

[1] Bittner N, Merrick GS, Butler WM, et al. Long-term outcome for very high-risk prostate cancer treated primarily with a triple modality approach to include permanent interstitial brachytherapy. Brachytherapy. 2012;11:250-5.

[2] Hurwitz MD, Halabi S, Ou SS, et al. Combination external beam radiation and brachytherapy boost with androgen suppression for treatment of intermediate-risk prostate cancer:an initial report of CALGB 99809. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2008;72:814-9.

[3] D’Amico AV, Moran BJ, Braccioforte MH, et al. Risk of death from prostate cancer after brachytherapy alone or with radiation, androgen suppression therapy, or both in men with high-risk disease. J Clin Oncol. 2009;27:3923-8.

[4] Konaka H, Egawa S, Saito S, et al. Tri-Modality therapy with I-125 brachytherapy, external beam radiation therapy, and short- or long-term hormone therapy for high-risk localized prostate cancer (TRIP):study protocol for a phase Ⅲ, multicenter, randomized, controlled trial. BMC Cancer. 2012;12 :110.