弱い放射線を出す小さな線源(シード:放射性ヨードI-125)を直接前立腺内に挿入することで、前立腺内のがん組織に放射線を照射します。
この線源は永久に前立腺内に挿入したままとなりますが、放射線は自然に弱まり、1年後にはほとんどゼロになります。
前立腺の内部から放射線を照射するため、従来の放射線照射法にくらべ前立腺へ照射する線量を多くしつつ、直腸や膀胱など膀胱周囲にある臓器への影響を低く保つことができます。
また、治療自体も短期間で済み、身体に対する影響も少ないという長所もあります。
限局性前立腺がん(がんが前立腺内にとどまっている)の方が適応になります。さらには血清PSA値、前立腺組織生検での病理組織診断結果を判断して適応を決定します。
鳥取大学での対象基準は以下のとおりです。
前立腺容量が30mlを超える方でも治療前にホルモン療法を行うことで前立腺体積の縮小がはかれるため、詳しい適応については担当医にお尋ねください。
実際の治療の約1か月前に外来受診して頂きます。
直腸からエコーを挿入し前立腺体積を測定することによりあらかじめ挿入する線源の個数を決定します。
プレプランは実際の治療と同じ部屋で行い、同じ機器を用います。
第一日目
治療についての説明を行います。
第二日目
治療は全身麻酔下に行い3時間前後で終了します。
治療後は、放射線管理区域に設定した個室に戻ります。
第三日目
尿道カテーテルを抜去します。
帰室24時間後、個室の線量測定を行い放射線管理区域を解除します。
第四日目
特に問題なければ午前中に退院となります。
治療の1か月後に外来受診して頂き、シードが適切に配置されているかを確認します。
日本で本治療が開始されてからまだ日が浅いため、本邦の治療成績はまだ十分解析されていませんが、欧米の報告によると症例を限定すれば手術治療 とほぼ同等の成績が得られると言われています.
軽微なものがほとんどです。
線源の挿入には若干の出血がみられますが一般に輸血は不要です。ただし、血尿が多い場合には輸血を行う場合があります。針の刺入部から前立腺に感染をきたし、発熱がみられることもありますが、抗生物質の投与を行なうことで予防しています。
排尿に関する症状が主体であり、術後から8割程度に排尿困難、尿意切迫感、夜間頻尿など軽度の症状が出現しますが、ほとんどが数週間で自然に軽快します。尿が出なくなってしまう(尿閉)ことも5%程度にみられますが、通常は自己導尿(自分でカテーテルを適宜挿入して排尿すること)や尿道カテーテルを留置することなどにより1~2ヶ月程度で軽快します。また、直腸への刺激から排便回数が増えることもあります。
術後しばらくしてから発症する晩期合併症もあります。軽症なものがほとんどですが、一旦発症すると軽快するまで数ヶ月から数年かかることがあります。放射線の組織障害によるもので、血尿、尿意切迫、排尿困難などの排尿障害、直腸出血、肛門痛などがみられます。経過観察でよい場合が多いですが、外科的治療が必要なケースもあります。
線源が膀胱内へ移動、または血流にのって肺などの他臓器へ移動することがあります。前者については自然に排出されることが多く、後者については全く無害であり処置は不要です。挿入したシード数の5%程度の移動であれば治療効果上も特に問題はありません。
治療費はシード線源代も含め、全て保険の適応となります。おおよそ30~40万円程度です。