Tottori University Faculuty Of Medicine Division Of Urology
Scroll

MRI-超音波融合画像ガイド下前立腺生検

前立腺針生検について

『前立腺がん検診ガイドライン2018年版』において、50歳以上の男性に対するPSA検査が勧められています。PSAとは前立腺特異抗原のことで、前立腺の上皮細胞から分泌されるタンパクです。採血検査を行うことで測定が可能です。ごく微量が血液中に取り込まれ、その値によって今回のように「PSAが高い」と指摘されることがしばしばあります。健康診断、人間ドック、かかりつけの先生のところでの検査など、PSAをチェックする機会が増えています。一般的にPSAが高い、と言われる基準値は4ng/mLとされています。また、検診などでは若い方の場合に基準値を低く設定する場合もあります。2015年の国立がん研究センターの統計予測において男性がんでは第1位の罹患数と報告され、近年、前立腺がんの罹患率は急速に増加しています。
当院ではPSAが高い患者さんに対して、禁忌でない限り全例にMRI(核磁気共鳴画像)検査を実施しています。MRI検査の結果を確認して、前立腺がん診断のための前立腺針生検を実施しています。前立腺針生検法とは前立腺へ針を刺して組織を採取する方法で、前立腺全体からランダムに組織を10カ所以上採取する方法が一般的です。

MRI-経直腸超音波融合画像ガイド下前立腺生検とは

2017年8月に、超音波画像診断装置KOELIS TRINITY(株式会社アムコ)を導入しました。山陰地区では初の導入となり、本邦では5施設目の導入となります。本システムは前立腺がんの診断の際に、より正確な前立腺針生検をサポートするシステムとして開発された超音波画像診断装置です。

前立腺がんの画像診断には、主に経直腸超音波検査、CT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(核磁気共鳴画像)検査などがありますが、前立腺がんの局在診断についてはMRI検査が最も診断能力に優れています。しかし、MRIガイド下での前立腺針生検法は一般的な普及には至っていません。このため従来法ではMRI画像を医師の頭の中でイメージしつつ、経直腸超音波検査を用いて前立腺針生検を実施していました。このような理由から、MRI画像で前立腺がんが疑われていても、超音波ガイド下の針生検では、がんを発見できない場合があったと推測されます。
今回導入した超音波システムを用いることで、MRI画像を超音波診断装置内に取り込んで融合画像を構築することが可能となります。つまり、MRI画像にて前立腺がんを疑う部位を超音波画像と融合させることで、前立腺がんが疑わしい部位をより正確に組織採取することが可能となります。

また、前立腺の動きや変形を自動的に補正した3D立体イメージとして表示することで、前立腺針生検の精密さと信頼性の向上が期待されています。本システムを用いたMRIと超音波画像の融合によるFusion 前立腺針生検法では、従来の超音波画像のみの前立腺針生検法と比較して、前立腺がんの検出精度の向上が報告されています。

また、本システムでは超音波画像による前立腺の3D立体イメージを使用して、実際にどの部位の針生検が行われたかを立体的に表示して記録することも可能です。前立腺の3D立体イメージへのがんの局在をマーキングする機能により、ロボット支援前立腺全摘除術時における手術ナビゲーションに応用することも可能となり、将来的にはこれらの機能を利用して前立腺がんの局所療法への応用も期待されています。

| MRI/超音波融合による前立腺生検