村田暁彦先生

免疫学 助教

この人に注目!村田先生

村田 暁彦

鳥取大学医学部 生命科学科
分子細胞生物学講座 免疫学分野 助教

研究内容

  • 炎症組織に免疫細胞が集まる仕組みを解き明かす

免疫学研究室では、研究テーマは自分で決めるというスタイルです。そのため、学生からスタッフまで1人1人の研究内容が皆異なります。白紙のスケッチブックにどんな絵が描かれるのでしょうか。それぞれのオリジナリティ溢れる研究の中で、2006年4月から研究をしている村田先生に話を聞いてみることにしました。

アレルギー反応

皮膚内や鼻の粘膜には、マスト細胞という免疫細胞が存在してします。この細胞が放出する物質が原因で、アトピーや花粉症の症状が出ます。マウスの耳でアトピー性皮膚炎を再現すると、真皮にマスト細胞が集積し(紫色の細胞)、正常な状態よりも多く存在することが分かります。

接着分子

自分が花粉症ということもあり、マスト細胞の集積を抑えることができたら、アレルギーを治すことができるのではないかと考えました。そこで、「細胞はどんなメカニズムで集積するのか?」を研究テーマにしました。免疫細胞が組織に集まるためには、細胞同士を結び付ける「接着分子」が必要です。免疫細胞は普段、血管の中をスルスル流れています。炎症が生じると、その付近の血管壁に接着分子が発現し、ベタベタするようになります。すると、それを合図に免疫細胞が接着し、血管を通り越えて炎症組織に集積します。マスト細胞に必要な接着分子を調べたところ、Notchという分子に、今まで知られていなかった接着分子の機能があることを発見しました。現在、Notchが実際に細胞の集積に関与しているのかどうかを、マウスに教えてもらっているところです。

受験生へのメッセージ

僕は、生き物の仕組みを知ることが、大好きでした。そして自分の手で、生き物を説明してみたいと思い、科学者を志しました。鳥取大学医学部生命科学科に入学したのは、一番好きだった「免疫」の仕組みを知りたかったからです。研究を始めてからは、炎症組織になぜ免疫細胞が集まるのかという自分の疑問を解決するべく、仮説を考えては実験し、「それは違うよ」と細胞にそっぽを向かれ、「これならどうだ」とまた戦いを挑む日々。Notchが細胞同士を結び付ける接着分子であるという答えが分かった時、顕微鏡を覗きながら背筋がゾクゾクしたのを今でも覚えています。あの瞬間、それを知っていたのは世界で僕一人だけでした。次の瞬間には隣で細胞を数えていた教授にばれてしまいましたが…。あんな経験をもう一度してみたい、生き物の核心に迫りたい、そしていつか、憧れのダーウィンを越える学説を唱えてみたい。これが僕の人生の目標です。目標へ、夢へ、憧れへ近づくために必要な勉強は、不思議と苦になりません。皆さんにも、良き出会いがありますように。

取材班からの一言

与えられたものに装飾することは簡単だが、何もない状態の中で、自分で考え、自分で創ることは難しい。研究の範囲を広くすることでたくさんの“不思議"が生まれ、たくさんの“発見"に出会える気がしました。 近年、クリーンな環境になってきたがゆえにアレルギー反応が出る人も増えているという。そんな中、基礎研究となる細胞の研究で解明されたことが、臨床研究へと引き継がれ、アレルギーの原因究明へとつながることを期待します。