精神行動医学分野

Division of Neuropsychiatry

 

分野名
精神行動医学分野 Division of Neuropsychiatry
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精神科(医学部附属病院HP内)
電話番号
TEL:0859-38-6547 FAX: 0859-38-6549
スタッフの職名と氏名
教授 兼子 幸一 kaneko@med.tottori-u.ac.jp
准教授 岩田 正明   
講師 横山 勝利   
助教 長田 泉美
助教 松村 博史  
助教(大学院生) 三浦 明彦  
助教 朴 盛弘  
助教(大学院生) 山梨 豪彦  
医員(大学院生) 板倉 征史  
医員 小沼 薫
医員(大学院生) 大立 博昭  
医員 伊藤 由規  
医員 荒木 隆之  
医員(大学院生) 松尾 諒一  
医員 井上 郁  
医員 西口 毅  
事務補佐員 鷲見 みどり  
分野の特色
当教室では基礎 、臨床の両面から統合失調症や気分障害(うつ病 、躁うつ病)の病態機序の解明に取り組んでいます。同時に 、精神疾患をもつ患者が主観的満足感をもって社会に参加することを後押しするような生物学的 、心理社会的なアプローチの開発を目指して治療研究にも力を入れています。さらに 、地域の関連機関との多職種連携を通じて 、予防・早期介入を推し進め 、治療転帰の改善を目指すシステム作りに着手しているところです。

分野での主要な研究テーマとその取り組みについての説明
A.基礎研究

①. ストレスが脳内炎症を介してうつ病を誘発する機序の解明と新たな治療法の開発
 2013年、厚生労働省は精神疾患を5大疾病の一つと位置づけ、国の医療対策において特に重点を置く方針を示しました。中でもストレス社会におけるうつ病患者数の増加と自殺の問題は、大きな社会問題として注目されています。ストレスはうつ病発症の重要なリスク因子であり、実際、ストレスは脳神経を萎縮させ神経新生を抑制することが報告されてきました。当教室はこれまでにストレスが過剰なグルタミンさ酸を放出させること、またそれに引き続くATPの誘導を介して炎症性サイトカイン(インターロイキン1β;ⅠL-1β等)が脳内で産生され(脳内炎症)、神経新生の抑制を生じる結果うつ状態を引き起こすことを明らかにしてきました。そこで、現在当教室ではATPの誘導やインフラマソームと呼ばれる炎症応答のスイッチを薬理学的に抑制し、脳内炎症を制御することでうつ病を治癒に導く、新たな治療法の開発に望んでいます。

B.臨床研究

①. 精神疾患の脳画像を用いた病態研究
 当教室では
・ NIRS(光トポグラフィー検査)
・ fMRI(機能的核磁気共鳴画像法)
・ DTI(拡散テンソル画像法)
などを用い、精神疾患のバイオマーカーならびに治療効果の判定への応用を模索しています。NIRSは平成26年4月より保険診療が認められており、統合失調症やうつ病患者のうつ症状の鑑別診断の補助として積極的に使用しています。fMRI、DTIはMRIの技術を応用して脳の神経回路の機能的あるいは解剖学的統合性を測定するものです。これらのデータを解析し統合失調症や双極性障害、発達障害などの精神疾患の病態解明を目指しています。

②. 精神疾患と神経内分泌、生活習慣との関連についての研究・年代別うつ病の研究
 近年、うつ病と糖尿病、メタボリック症候群の合併率の高さが注目されており、うつ病における視床下部-下垂体-副腎皮質系(HPA系)の非抑制(過活性)がその介在因子である可能性が指摘されています。当教室ではうつ病患者の耐糖能、神経内分泌機能に関する指標について検討し、うつ病と糖尿病、メタボリック症候群の関連性、及び、精神症状による糖尿病、メタボリック症候群の変化について調べています。
 また、魚油に多く含まれるω3系不飽和脂肪酸であるEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)がうつ病の治療に有効だとする報告が散見されます。当教室では、こうした食事や栄養に関連した様々な因子と精神疾患との関連に注目し、検討を続けております。
 さらに、うつ病を多面的なアプローチから、年代別に評価し、明らかにすることを目的としており、年代(若年・中高年・高齢者)別に、症状の評価・脳の働きの評価・脳画像の評価神経生理の評価・内分泌の評価・食生活の評価を患者群、対照群に行って検討を続けています。

症状の評価:HAM-D、BDI、 SASS、Bipolarity、 index、 HDS-R、 MMSE
能の働き、脳画像の評価:頭部CT、 頭部MRI、 NIRS
神経生理の評価:WCST、 Stroop test、 Trail making test、 Iowa gambling test、 Tower of Londonなどの神経心理TEST
内分泌の評価:DEX/CRH  75gOGTT
食生活の評価:血中脂肪酸(DHA・EPA)濃度測定、食生活アンケートなど

③. うつ秒に対する薬剤選択のための光トポグラフィー検査を用いた検討
 うつ病、双極性障害に対する有効な薬物治療を予測するものについて、現段階では十分に解明はされていません。実際の診療では、症状や経過、治療ガイドラインを検討して治療薬を決めています。そこで、当科では、抑うつ状態の鑑別補助診断として認められている光トポグラフィー検査の結果と、薬物治療の効果、反応性について比較する研究を行っています。

④. 精神疾患に対する心理社会的リハビリテーションの研究
 統合失調症では種々の認知機能障害を認め、これら認知機能障害は統合失調症の社会的転帰(就職・結婚など)に大きな影響を及ぼすと言われています。当教室では臨床心理学専攻との共同研究で、認知機能障害をターゲットとするリハビリテーション技法のうち、神経認知をターゲットとする「認知矯正療法(NEAR)」、社会認知をターゲットとする「社会認知ならびに対人関係のトレーニング(SCIT)」を導入しております。NEARは、米国のMedaliaらが開発した、行動・学習理論、教育心理学、神経心理学を理論的背景とするコンピュータープログラムを用いたリハビリテーションです。また、米国のPennらが開発したSCITは、精神病症状をもつ患者さんの社会認知障害を治療標的とし、対人関係のトレーニングを行う集団精神療法です。NEAR、SCITを行う事で、認知機能や心理社会機能、QOLなどがどのように変化するか、またNIRSなど脳機能画像の所見がどのように変化するかなどを検討しています。いずれはこれらのリハビリテーションが精神疾患への介入法の大きな柱となる事を期待しています。

⑤. 広汎性発達障害(成人および児童・思春期)の診断および認知機能の研究 
1) 成人症例での統合失調症との鑑別診断法の確立: 広汎性発達障害の成人症例では、発達歴、病歴、現在症状だけに基づいて統合失調症との鑑別を行うことが難しい場合があります。そのため、生物学的指標に基づいた鑑別診断法の確立が求められています。当教室では、脳画像(頭部CT, MRI)、脳機能画像(NIRS)、脳波、ERP、神経認知機能検査、社会認知機能検査などの諸検査を用いて、比較的簡便に行える鑑別法の確立を目指しています。
2) 児童・思春期症例での認知機能と脳画像所見の関連の研究: 児童・思春期の広汎性発達障害者を対象に、神経認知機能および社会認知機能と脳機能画像検査との関連を明らかにすることによって、適切な養育法や教育法の開発に貢献することを目標にしています。

⑥. 術後せん妄に対するミノサイクリン(ミノマイシン®)の効果の検討
 術後せん妄は手術後早期に意識障害を基盤として様々な精神症状を呈する病態です。術後せん妄は手術後に必要な安静の保持、医療行為、リハビリテーションなどの妨げになり、手術後の合併症、入院期間、死亡率の増加につながり、せん妄発症を予防することが重要になります。手術の侵襲などにより生じる末梢の炎症が、中枢におけるミクログリアの活性化や炎症性サイトカインの放出を促進し、中枢における神経炎症を惹起させることで術後せん妄が発症するという病態が想定されています。抗菌薬であるミノサイクリンは、ミクログリアの活性化抑制を介した神経炎症の鎮静作用を持もち、その作用によりせん妄を含めた種々な精神疾患に有効であるという可能性が論じられています。当研究室では、当院で手術を予定している患者様にミノサイクリンをあらかじめ内服して頂くことで、手術後のせん妄を予防する効果等があるかどうかを、二重盲検-ランダム化比較試験を行い検討しています。

⑦ 統合失調症と炎症
 統合失調症の病態においては、ドパミン仮説やグルタミン酸仮説など様々な仮説が提唱されていますが、未だ原因については分かっていません。様々な心理社会的ストレスが統合失調症の発症や再発に関わっていることは広く知られており、ストレスが炎症を引き起こすという所見も散見され、脳内における炎症・免疫機能を担当する細胞であるミクログリアとの関係について注目が集まっています。
 我々は統合失調症患者において、ミクログリアから放出される炎症性サイトカイン・その産生経路について測定し、PANSSなどの精神症状評価尺度との相関性について検討しています。

⑧. リエゾンコンサルテーション
 鳥取大学医学部附属病院は24の診療科を有する約700床の総合病院です。一般総合病院における精神医学(いわゆる総合病院精神医学)の主要な役割の一つとして、以前より各診療科からのコンサルテーション・リエゾン活動を行っており、身体疾患患者とその家族の精神的ケアを行っています。当科では、リエゾン精神医学の現在の状況、今後の課題などを明らかにするためにデーターを集積し、検討を重ねています。

⑧. うつ病の自殺対策
 本邦では、自殺者が年間3万人前後で推移している状況が続いています。近年の研究から、精神科・心療内科を受診されるうつ病の患者さんを治療するだけでは、自殺対策が有効に機能しないことが明らかになっています。当教室では、啓発活動、アンケートによる受診行動調査などを行い、現在、特に問題となっている中高年男性の自殺の問題に取り組み、受診行動を促すことなどによる予防法の開発を模索しています。

HP作成担当者名
兼子 幸一