肺癌の基礎的・臨床的研究 肺癌は難治性腫瘍であり、予防・早期診断・効果的治療の開発が望まれる疾患である。肺癌の遺伝子異常・免疫異常に基づく病態解析・診断ならびに、新規の治療法の開発と臨床応用を目標に主として下記のテーマの研究を行っている。 ○肺癌細胞・臨床検体からの遺伝子異常の検出と診断的・治療的応用 ○肺癌における自己抗体・細胞性免疫 ○細胞内シグナル伝達の異常の制御による薬物治療・転移抑制 ○抗癌剤の臨床薬理学 ○新規の肺癌治療法開発のための臨床試験 また、研究成果をいち早く臨床応用するための多施設共同研究体制を組織している。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の基礎的・臨床的研究 本邦におけるCOPD有病率は8.5%(患者数530万人)と推定されている.この数は今後も増加すると考えられており,この疾患をどう克服するかは呼吸器学に課せられた大きな課題の1つである.私達はCOPDの病態解析,予防,治療を目的に下記のような基礎的・臨床的研究を行っている. ○好中球機能とアラキドン酸代謝 ○喫煙者,COPD患者の気道炎症の解析 ○喫煙者の閉塞性障害の進展に対する酸化ストレスの影響 ○COPD治療薬の効果に関する多施設臨床試験 ○山陰地方のCOPDの疫学調査
薬剤耐性緑膿菌の耐性機序の解析 緑膿菌の治療にはカルバペネム、キノロン、アミノ配糖体が使用されています。1990年頃よりこれら抗菌薬に耐性を示す菌株の出現が問題となってきました。現在どのような頻度でこのような薬剤耐性緑膿菌が分離されるのか、またその耐性機序は何なのか分子生物学的手法を使いながら解析をすすめています。この解析により、新しい抗菌薬治療への応用が可能となります。
感染症における宿主反応の解析 感染症は、病原菌の病原性と、それに対する宿主反応の組み合わせで成り立っています。私たちはこの宿主反応の仕組みを、分子生物学的手法により解析しています。明らかにした宿主反応を薬剤で制御することで感染症の経過を修飾し、有効な治療に結びつけることができると考えられます。
時計遺伝子に対する薬物の影響解析 哺乳類の視交叉上核に行動,睡眠・覚醒などの概日リズムをつかさどる体内時計が存在することが明らかにされている.体内時計を駆動するための遺伝子群は時計遺伝子と呼ばれている.時計遺伝子は中枢だけではなく末梢組織にも発現・発振している.薬物により時計遺伝子が影響を及ぼされる事実は最近になり明らかにされており,行動,睡眠・覚醒に影響を及ぼす薬物の副作用の一部は時計遺伝子の発現変化の関与が疑われる.現在,時計遺伝子に対する薬物の影響を簡便にスクリーニング可能な測定系を研究している.
生体信号の複雑系解析 脳波,心拍変動,呼吸運動,胃蠕動運動などには主周期が認められ,生体信号の大きな特徴である.周期解析はフーリエ解析などの線形解析が適用され臨床に広く用いられてきた.しかし,生体現象は線形的なものではなく非線形的なものであることは自明である.最近になり生体現象のゆらぎ解析に関連して新しい種類の非線形解析が発案された.主にアトラクター次元を代表するものとして相関次元,ばらつきや予測しやすさの指標としてエントロピーが用いられている.生体信号の複雑系解析を用いて,新しい生理機能現象を明らかにできる可能性がある.
薬物代謝酵素,輸送タンパクの遺伝子解析 近年、SNPs(一塩基多型)を含む遺伝子多型は疾患の易罹患性や薬剤反応性などに大きく関与している。当科においては、主として抗癌化学療法における薬物代謝酵素や輸送タンパクの遺伝子解析により、重大な副作用を事前に予測し、安全で効果的な至適個別化された薬物選択と投与設計(テーラーメイド医療)をめざし研究中である。
膠原病研究 全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎、強皮症、混合性結合組織病、シェーグレン症候群などの自己免疫疾患の分子病態をNK細胞活性化因子を中心に研究している。(平成20年10月1日更新)
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