神田裕介さん(修士2年,病態生化学分野)の研究発表が,第102回日本病理学会総会発表賞を受賞しました

UPDATE : 2017-05-22

病態生化学分野の神田裕介さんが,668日に札幌で開催された第102回日本病理学会(会長:佐藤 昇志 教授)で日本病理学会総会発表賞を受賞しました(写真1)

これまでに当分野では,炎症細胞の血管内皮細胞への接着能を定量評価することのできる培養スクリーニング系を開発しました(Nitric Oxide 25: 183-194, 2011).炎症細胞の血管内皮細胞への接着が抑制されれば,その先の炎症局所への動員も抑えられて炎症反応を遮断することができるはずです.私達は,そのような作用を持つ新しい薬を探し出す研究も行っています.このスクリーニング系を活用して,従来の抗炎症剤とは異なる阻害化合物(400種超)から,二十数種の候補薬剤を選択しました.本発表は,その中の一つの薬剤が生体内でも期待通りに作用すること,さらに長期間にわたる炎症反応が発癌の原因となる“炎症発癌”の炎症浸出を抑え,予防できることを明らかにしました.

神田さんは,この薬剤の作用を「炎症発癌を遮断する阻害化合物」と題してポスター発表しました(写真2).癌研究だけでなく炎症の研究も,培養条件下の研究だけではその本態に迫ることができません.いずれも動物個体を用いた実験によって初めて実証されます.今回の受賞も,このような研究成果が高く評価されたものと思います [写真3 左:上田真喜子教授(示説座長,大阪市立大学病理病態学),右:神田裕介さん].

神田さんはこの受賞を大きな励みとして,炎症発癌の予防・治療開発や,新たな発癌メカニズムの解明に向けて,実験病理学の領域でさらに活躍してくれることと思います.

 神田君1

(写真1 第102回 日本病理学会総会発表賞) 

神田君2 

(写真2 質疑応答 右:神田裕介さん) 

神田3 

(写真3  左:上田真喜子教授(示説座長,大阪市立大学病理病態学),右:神田裕介さん)