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村田 暁彦 助教 (免疫学分野)の研究、「NotchによるKit非依存的なマスト細胞の接着機構の発見」がInternational Immunology誌に掲載されました。

UPDATE : 2019-05-17

村田助教(免疫学分野)の研究、「NotchによるKit非依存的なマスト細胞の接着機構の発見」がInternational Immunology誌に掲載されました。
本論文の概要は以下をご覧ください。


 

「NotchによるKit非依存的なマスト細胞の接着機構の発見」

Kit-independent mast cell adhesion mediated by Notch.
Akihiko Murata, Mari Hikosaka, Miya Yoshino, Lan Zhou, Shin-Ichi Hayashi.
International Immunology. 2018 Oct 8. doi: 10.1093/intimm/dxy067.

 マスト細胞はアレルギー性の炎症にかかわる免疫細胞の一種で、皮膚や粘膜などの外界との境界部に特に多く存在しています。マスト細胞が発現する受容体型チロシンキナーゼのKitは、組織内でマスト細胞が周囲の間質細胞に接着するために必須の接着分子と考えられています。

 私たちはこれまでに、シグナル分子としてのみ知られていたNotch受容体に、マスト細胞の接着分子としての機能があり、Notchリガンドを強制発現する間質細胞への強力な細胞接着を誘導することを報告してきましたが、Notchによる細胞接着の間にKitがどのような役割を果たすのか不明でした。

 そこで本研究では、Kit欠損マスト細胞を作成し間質細胞との接着を検討しました。Kitの欠損により、Notchリガンド強制発現の無いコントロール間質細胞への接着は著しく抑制されましたが、Notchリガンドを強制発現した間質細胞への接着は全く抑制されませんでした。Kitシグナルは、種々のシグナル分子(PI3K、MAPK)の活性化を介して細胞骨格のリモデリングを誘導し、接着したマスト細胞の変形を伴う強固な接着(Spreading)を誘導します。Kit欠損マスト細胞のSpreadingは、コントロール間質細胞上では著しく阻害されましたが、Notchリガンド発現間質細胞上ではほとんど抑制されませんでした。更に、Notchリガンド存在下でのKit欠損マスト細胞のSpreadingには、Kit依存的なSpreadingと同様に、PI3KとMAPKの活性化が関与していました。

 以上のことから、マスト細胞の接着に必須の役割を果たすと考えられていたKitが、Notchリガンド存在下では必要なくなることが判明しました。本研究により、NotchによるKit非依存的なマスト細胞の接着機構が存在することが示されたことで、組織内でマスト細胞が周囲の細胞とどのように相互作用するかについての理解が進むと考えられます。

英語の原文:https://academic.oup.com/intimm/advance-article/doi/10.1093/intimm/dxy067/5123694

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