心筋細胞の増殖と分化を同時に制御する機構の発見

UPDATE : 2017-05-22

鳥取大学医学部生命科学科生体情報学:竹内隆教授のグループが心筋細胞の増殖と分化を同時に制御する機構を発見しました

細胞が増える増殖と、特別な機能を持つようになる分化は、相互に相容れない(排他的な)関係がよく知られています。たとえば、発生の早い時期の細胞の増殖程度は高く、分化程度は低いのですが、発生が進むと多くの細胞でこの関係は逆転します。このようなことは再生現象やがん細胞でも認められます。ところが、心筋細胞は、発生の早い時期から個体を生存させるために拍動しなければならず、分化する必要があります。一方、この心筋細胞は、日ごとに大きくなる胎児に見合ったポンプ力を用意するため、活発に増殖をして心臓を大きくしなければなりません。したがって、心筋細胞は分化しながらも増殖をしなければなりません。このような心筋細胞で、増殖と分化がどのように制御されているのかは不明でした。とりわけ、一方が他方を抑制するのか否か、また、抑制するとすれば、どのような機構なのかは、わかっていませんでした。
本研究では、心筋細胞において増殖が分化を実際に抑制することを発見し、また、その仕組みを初めて明らかにしました。さらに以前に発見したJumonjiが発生の途中から働き始めて、この増殖を抑制することにより、心筋細胞の増殖にブレーキをかけ、同時に分化を進行させることも発見しました。この結果、分化程度は低いが増殖程度は高い心筋細胞から、分化程度は高いが増殖程度は低い心筋細胞に変わる仕組みが解明されました。(図)
本研究の成果から、他の細胞でも同様の仕組みがあるかどうかが興味を持たれます。また、増殖や分化を適切に調節することによりiPS細胞から分化度の高い心筋細胞などを効率よく入手するために役立つことが期待されます。
本研究成果は、2011年3月29日に英国発生生物学専門誌「Development」のオンライン速報版で公開されました。

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