Tottori University Faculuty Of Medicine Division Of Urology
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ご挨拶

武中先生

本研究会は2004年に設立され、同年6月に前代表世話人である荒井陽一先生が第1回の研究会を主催されました。当時tissue engineeringの技術が開発され、膀胱をはじめとする泌尿器科臓器再建・再生に夢が膨らみました。また、機能再建・再生に必要な解剖学については、前立腺解剖再考の機運が高まり、シンポジウムでは「陰茎海綿体神経の再建」が取り上げられています。

 本会も設立16年目を迎え、この度小職が代表世話人を拝命することになりました。この間の進歩を振り返ってみますと、泌尿器科領域における再生医療は体性幹細胞を用いた筋・神経の再生が地道な進歩を遂げ、一歩ずつ臨床応用に近づいています。一方、大型臓器再生の臨床応用は必ずしも順風とは言えず、現在も引き続き精力的な基礎研究が継続されています。網膜、心筋ではiPS細胞を用いた臨床試験が開始されており、泌尿器科領域も一日でも早い臨床応用が期待されているところです。

一方、尿路再建は欧米では”Reconstructive Urology”が一つの診療領域として認識されていますが、本邦では本研究会設立当時、尿路再建について包括的に議論する場は存在しませんでした。しかし、本研究会を通し、上部・下部尿路、新膀胱等の再建術について活発な議論が行われ、新たな術式も確立されるようになりました。このように、本研究会は、本邦の泌尿器科再建再生医療に大きな足跡を残してまいりました。

本研究会の今後の展開について考えてみたいと思います。「この研究会にはどんな演題を応募できるのか」という質問をよくお受けすることがあります。腎、尿路、生殖細胞再生に関する基礎的・臨床的研究、そして尿路再建術に関する内容がメインテーマであることには違いありません。しかし、本研究会のテーマの根底には、「癌」や「排尿・性機能」という各専門領域内だけでは十分に議論できない病態に対し、PRO(Patient Reported Outcome)の観点から議論を行なおうという姿勢があったように思います。そうであれば、泌尿器科医療を再建再生し、患者さんにReal benefitをもたらす各種の医療イノベーションもこの研究会の範疇となるかもしれません。

 本研究会を通じ、真のPRO向上を目指した泌尿器科再建再生医療や医療イノベーションについて議論を深めることができれば幸いに思います。

 

 2019.6 泌尿器科再建再生研究会 代表世話人 武中篤