Tottori University Faculuty Of Medicine Division Of Urology
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腎移植

腎移植とは

現在末期腎不全に対する治療法は、透析療法、腎移植の2種類のみであり、腎移植が唯一の根治治療と言われています。腎移植は他の方の腎臓を移植することにより、患者さんの腎臓として機能させる医療です。現在本邦では30万人を超える透析患者さんがいますが、その一方で、腎移植は生体、献腎移植を合わせても年間2000人程度となっています。本邦では、十分に普及しているとは言いがたい治療ですが、海外では年間15000件近い移植を施行している国もあり、それほど珍しい治療ではありません。
当院では、鳥取県内2施設目の移植施設として、2014年より生体腎移植を施行しております。

腎移植1

表 透析と腎移植のメリット・デメリット

利点・欠点 血液透析 腹膜透析 腎移植
利点
  • 医療スタッフによる治療
  • 透析効率を調整可
  • 自宅・勤務先でできる
  • 食事制限が少ない
  • 循環動態への負担小
  • 透析からの解放
  • より生理的
  • 社会復帰しやすい
  • 食事制限、水分制限は非常に少ない
  • 妊娠・出産も可能
欠点
  • 週3回、4-5時間施行
  • 食事・水分制限が厳しい
  • 循環動態への負担大
  • 自己管理が必要
  • 腹膜炎などの感染症のリスク
  • 長期間は施行できない
  • ドナーの確保が難しい
  • 免疫抑制剤の内服
  • 全ての移植腎が永久にもつわけではない

生体腎移植と献腎移植

腎移植には親族から腎臓を提供してもらう生体腎移植と、脳死の方を含む亡くなった方より腎臓を提供していただく献腎移植があります。親族からの提供はあくまで自発的な善意に基づくものであり、決して強制されるものであってはなりません。また、健康な方から臓器を提出することになるため、患者さんやご家族、医療者ともに慎重に適応を決める必要があります。一方、献腎移植は亡くなった方、あるいはそのご家族の善意のもとに腎臓を提供していただきます。健康な方を傷つけることが無いという点では、生体腎移植より望ましいと思われますが、本邦では亡くなった方からの臓器提供数が少なく、大多数が生体腎移植となっています。現在当院では生体腎移植、献腎移植ともに実施可能です。

手術の方法

全身麻酔下に手術を施行します。通常、右下腹部に弓状に約15-20㎝の切開を置きます。移植腎と吻合する血管(内腸骨動脈、外腸骨動脈、外腸骨静脈など)を露出し、血管を吻合します。その後膀胱と尿管を吻合し、手術は終了となります。
生体腎移植の場合はドナーからの腎摘出は腹腔鏡を使用した術式で施行しており、低侵襲な手術を行なっています。

腎移植2
腎移植5-2

生着率、拒絶反応について

一般的に生体腎移植を施行した場合の生着率(移植した腎臓が機能し、透析を離脱できている状態)は移植後1年で約95%、10年で約90%とされています。残念ながらすべての移植腎が永久に生着している訳ではありません。最も生着率に影響するのは拒絶反応とされています。また、原疾患(腎炎、糖尿病など)が移植腎に影響し、腎機能が廃絶する可能性もあります。 拒絶反応には大きく分けて移植後3-4か月以内に発症するものと、移植後6か月以降に発症するものがあります。急性期に発症した拒絶反応もほとんどの方が治療によって回復しますが、残念ながら拒絶反応により透析の再導入が必要となる方もいらっしゃいます。当院では2014年より生体腎移植を行なっていますが、すべての方が生着しています。

免疫抑制剤について

移植した腎臓が拒絶反応を起こさないように、免疫抑制剤を使用します。通常4-5種類の薬剤を使用します。免疫抑制剤には副作用(有害事象)の強い薬剤もあります。移植後安定してくれば徐々に使用量は減少しますが、基本的には移植腎が機能している限り、免疫抑制剤の内服は必要となります。

費用について

国内で腎移植を受ける場合は、ほとんどの場合、医療保険、特定疾病療養制度、更正医療などの対象となります。

心臓、肺、肝臓など他の移植と異なり、透析を継続することによる生活の質は低下しますが、腎移植を受けなければ直ちに生命の危機に陥るというわけではありません。
腎移植とは、患者さんの生存率の向上とともに、生活の質を向上させる医療です。