「患者その人を診る」ということが切り離せない分野

令和3年入局

私は2019年に鳥取大学を卒業し、鳥取大学医学附属病院での2年間の初期研修を終えた後精神科に入局しました。初期研修で様々な科を回りましたが、最終的には学生時代から無意識に惹かれていた精神科を選びました。

写真 | 当科での研修の様子

精神科医として働き始めてから感じることは、精神科領域で関わる疾患は多岐に渡りますが、それ以上に人が生きる人生は一つとして同じものはないということです。同じ診断がついている患者でも、その人は異なる人生を歩み、違う環境や人間関係に悩み、似た出来事を体験しても別の受け取り方をすることは当たり前です。操作的な診断に当てはめて考える重要性は理解しつつも、患者その人を診るということが切り離せない分野だと感じます。

患者は精神的に苦しみ、その辛さを吐露し涙することもあれば、理解してもらえない怒りを表現することも、自身の行動を制御できないこともあります。そんな時、自分が担当で大丈夫だろうかとか、どうしてそんなことを言われないといけないのだと遣る瀬無い気持ちになることも正直あります。そんな時、自分で勉強して獲得した知識と相談しやすい先輩医師がいる環境が救いになります。知識は患者の理解を援け、相談により共感を得ることも新たな指針を見出すこともあります。

相談しやすい雰囲気で、カンファレンスでは活発に議論

当院の精神科は若い医師が多く、非常に研修しやすい環境だと実感しています。主には入院の症例に時間をかけつつ、後期研修医には指導医がつくため相談はしやすく、かつ指導医でない医師にも相談しやすいような雰囲気が出来上がっています。カンファレンスでは活発に議論に発展し、大学病院として診断を吟味する一方で、その人の心がどのように動いているのかといった力動的な話題が挙がることもあります。教育にも前向きで、それぞれが興味ある分野の勉強も進められる環境でもあり、私の場合は月に1回東京で行われる精神分析の勉強会に参加し見聞を広めています。

精神科に興味はありつつも不安が勝ってなかなか踏み出しにくいという方もいると思います。もしかしたらその不安を少しでも拭う助けになれるかもしれません。興味のある方は是非気軽に見学や研修にきてください。