入局後のキャリアについて

助教 西口 毅

鳥取大学医学部附属病院 精神科
(米・スタンフォード大学留学中)

この度、『入局後のキャリアについて』というタイトルで入局を検討されている先生方や学生の皆さんに向けて執筆させて頂きます。鳥取大学精神科助教の西口毅といいます。執筆している令和4年度時点で私は卒後9年目、当院精神科入局7年目の医師として同年4月まで当院で勤務した後、同年5月からは約2年間の予定でアメリカのスタンフォード大学へ研究留学に出ております。

精神科の初期研修プログラムをきっかけに

私は平成26年に兵庫医科大学を卒業後、初期臨床研修を当院卒後臨床研修センターで研修しました。特に鳥取との縁はありませんでしたが、学生時から精神科に進もうと考えており、当院に精神科の初期研修プログラムがあったのをきっかけに病院見学に訪れ、精神科での診療や研究の様子を見学させて頂いたのが始まりでした。当時、緊張しながら訪れた中で、医局の皆様に快く歓迎して頂いたように覚えています。そして、その後、実際に当院の初期研修精神科プログラムにて初期研修を行いました。このプログラムでは初期研修での精神科研修期間を長く行うことができ、後期研修に繋がるような実践的な診療に携わることができるのが魅力に感じました。また、希望があれば当院以外の精神科関連病院での研修も可能なプログラムでもありましたが、私の場合は当院での精神科研修を長く行わせて頂き、初期研修修了後はそのまま当院の精神科に入局し後期研修に移りました。

精神科では3年間以上の精神科医としての診療経験が精神保健指定医や精神科専門医の取得には必要となるため、一般的には後期研修の3年間はこれらの取得を目指すことに焦点があてられることが多いです。私の希望もそれに沿うものでした。私の場合、入局1年目は当院、入局2年目は松江市立病院、入局3年目は当院に戻っての勤務で、後期研修期間はいずれも総合病院での幅広い精神疾患を診療することができました。必ずしも早ければ良いというわけでもないですが、当科の専門研修指導体制の下で親身になって指導頂いたおかげもあり、入局4年目には申請が行え、指定医、専門医ともに取得できました。また、当院はサブスペシャルティ領域専門医の一般病院連携精神医学専門医研修施設でもあり、私は前述のような総合病院での診療経験がありましたので、今年度はこちらにも認定して頂けました。

研究を行う領域としても魅力的

また、精神科疾患は病態が解明されていない部分も多いため、研究を行う領域としても精神科は魅力的と思います。精神科に進もうと考えたのも、研究が理由の一つにあったかもしれません。私の場合は入局2年目から、診療と並行して大学院に入学しました。研究グループの勉強会に参加することや実験を手伝うことから始めていき、研究グループのテーマである脳内炎症を中心に、動物実験によるストレス脆弱性やうつ病などの精神疾患の病態解明について着目した研究を行い入局5年目で大学院を修了しました。現在は、昨年まで研究留学を行っていた当医局の山梨豪彦先生に続きアメリカのスタンフォード大学へ研究留学しており、せん妄についての脆弱性や病態解明に関する研究を行っております。

個々に希望するキャリアによって柔軟な対応が可能な医局

単調な文章になりましたが、当院で初期研修を行い当院の精神科に入局した医師の当時から現在までの一例を書かせて頂きました。私の入局後のキャリアについては、医局員だけでなく日々の診療で共に働く外来や病棟のスタッフの雰囲気が良く、診療と並行して研究を行うことに配慮して頂けたおかげと感じています。また、あくまでこれは一例ですので、当医局はその他にも個々に希望するキャリアによって柔軟な対応が可能な医局と思います。最後に、ここ数年間で精神保健指定医制度の見直し、新専門医制度の開始、COVID-19の全国的な流行の影響、スタッフの移り変わりなど、様々な面で当時とは勝手や状況が違うとは思いますが、この文章が入局を検討されている先生方や学生の皆さんの参考となれば幸いです。

助教 太田 三恵 | 平成29年度入局

鳥取大学医学部附属病院 精神科

入局を考えている研修医、学生に向けて

皆さんは大学病院での後期研修についてどのようなイメージをお持ちでしょうか。当科の後期研修内容は「オーダーメイド」と考えて頂いたら良いかもしれません。

私は2年間の初期研修を終了後、精神科医として幅広く地域に根ざした精神医療を経験したいと考え、鳥取県内の単科の精神科へ入職しました。外来業務、急性期から慢性期病棟の入院管理、デイケアといった精神科リハビリテーション、地域での講演活動等の様々な業務を経験させて頂きました。リエゾン精神医学をもっと経験したい、専門医、指定医を確実に取得したい、精神科医として何か専門分野を見つけたいといった希望があり、上司に進路について相談したところ大学病院での勤務を勧められ、前代の教授である兼子教授にお世話になり、精神科医として6年目に入局させて頂きました。

深く考察する姿勢が身につく

入局後は私の希望に沿った研修内容を考えて下さり、指導医の下、病棟業務、外来診療やコンサルテーション・リエゾン精神医学を経験させて頂きました。病棟業務やリエゾンに関してはチーム制をとっており、主治医として患者様を担当しますが、指導医及び複数の医師で治療方針について何度も話し合い、さらに教授回診で患者様の状態像と治療方針の確認、アドバイスを頂くといったことを繰り返し行いました。そういった日々の中で自然と深く考察する姿勢が身についたことは非常に良かったと思います。指導医より手厚い指導があり、症例数も豊富で、専門医、指定医を無事取得することができました。内外講師による勉強会や脳とこころのカンファレンスといった他科との合同カンファレンスもあり、各分野の専門家から直接指導を受けられる機会が多いことも大学病院研修の魅力かと思います。

子育て中の医師も多く何事も相談しやすい雰囲気

現在は育児休暇中でありますが、復帰後は当院のワークライフバランス支援センターの子育て支援事業を利用させて頂きながら大学病院での勤務を継続していこうと考えております。現教授の岩田教授も個々の事情を汲み取りながら勤務内容を考えて下さり、子育て中の男性医師も多く何事も相談しやすい雰囲気です。困り事があれば同僚、後輩の先生も助けてくれて、大変感謝しております。専門分野に関しては模索中で、大学病院で臨床、研究、教育活動を続けていく中でゆっくり見つけていけたらいいなと思います。当医局の研修に興味のある学生さん、研修医の先生は気軽に見学だけでもいらっしゃって下さい。お待ちしています。