手術方法

腹腔鏡下手術イメージ

胃と周囲臓器
- 手術は全身麻酔で行います。
- お腹を大きく開く手術(開腹手術)ではなく、小さな傷で行う腹腔鏡下の手術で、10~20mmの長さで合計5か所、皮膚を切開し、それぞれにポート(鉗子やカメラなどの特殊な器具をお腹の中に挿入する筒)を挿入します。

ステープラー

胃切除後の胃
- 周囲の臓器を傷つけないように注意しながら、胃の外側を特殊な器具を(ステープラーといって、真ん中にナイフ、両側にホッチキスのようなものがあり、両側の組織をホッチキスのようなもので閉鎖しながら真ん中のナイフが組織を切離します)用いて切り取ります。
- これにより、容量が約150mL程度(
バナナ一本分)の細長い胃を形成します。
※(下段右図出典:日本における高度肥満症に対する安全で卓越した外科治療のためのガイドライン(2013年版))
手術のための入院について
 | 手術2日前入院
- 手術室で、手術体位のシミュレーション
- 手術説明
- 手術前日夕食まで食事あり
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 | 手術当日
- 手術時間は、約5-6時間(麻酔時間も合わせて)
- 手術当日は、集中治療室に帰室
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手術翌日・手術2日目
- 集中治療室から一般病床に移動
- 手術翌日から、水分の摂取を再開
- 手術2日目に胃透視
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手術3日目~退院日前日
- 手術3日目から、食事再開
- 全身の状態や食事摂取状況をみながら、点滴を徐々に減量
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退院日(おおよそ手術10日目~14日目)
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合併症について
- この手術の、低頻度ながら特有な合併症として、①縫合不全、②狭窄(胃管狭窄)、③胃食道逆流症が挙げられます。
- 胃食道逆流症は、内服治療などで改善しますが、縫合不全や狭窄では、再手術や胃カメラでの処置が必要になってくる場合があります。
- 手術が原因で命を落とす確率は0.1%程度※と言われています。
- また、手術が終わった後の維持期に、栄養障害をはじめとした合併症が生じる可能性があります。栄養管理・運動習慣が術後も大切です。
- 下記に、起こりうる合併症を挙げます。
高度肥満によるもの | 肺塞栓、呼吸不全、肺炎、心筋梗塞 |
消化管を手術することによるもの |
消化管出血、縫合不全(難治性)、狭窄による通過障害、腸閉塞、胃食道逆流症
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腹部手術であることに起因するもの | 腹壁創感染、腹壁ヘルニア |
術後の維持期(長期)にみられるもの | 栄養障害(たんぱく欠乏、ビタミン・ミネラル欠乏(骨粗鬆症、神経障害)、亜鉛欠乏(脱毛))、鉄欠乏性貧血、消化器症状(ダンピング症候群、下痢、慢性嘔吐)、狭窄による通過障害、胃炎・胃潰瘍、腸閉塞、胆石症、皮膚のたわみ、精神障害、筋力低下 |
※ OBES SURG (2017) 27:754–762