手術まで必要?
肥満症は病気です。この病気に対する効果的な治療の一つとして、手術があります。

このグラフは、スウェーデンで行われた研究の結果ですが、内科治療のみでは体重減少効果は一時的でリバウンドをしておられ、手術を受けられた方の体重減少効果は長く続くことが示されています。

このグラフも同じ研究における死亡率ですが、6年経過した時点で死亡率に差が出現し、内科治療のみの場合は死亡率が高くなることが分かります。
※グラフの出典元:N Engl J Med. 2007 Aug 23;357(8):741-52
手術までの大まかな流れ
- この手術は、『保険診療』で行うことのできる手術です。
- ただしその条件として、以下の条件があります。
- 6か月以上の内科的治療によっても十分な効果が得られない、BMIが35以上の肥満症の患者さん
※BMI:体重kg÷(身長m)²で計算される肥満度の指数で、性別に関わらず、その値が22のときに死亡率や高血圧、糖尿病、心筋梗塞などの有病率が、最も低いことが知られています。
- 下記の病気を1つ以上治療中の患者さん
- 糖尿病
- 高血圧症
- 脂質異常症
- 閉塞性睡眠時無呼吸症候群
- 糖尿病や、高血圧・脂質異常症・閉塞性睡眠時無呼吸症候群のコントロールがより悪い患者さん(例えば、糖尿病であれば、ヘモグロビンA1cが8.0%以上の患者さん)で、これら2つ以上を治療中の患者さんは、より低いBMI(32.0~34.9)で保険診療での手術適応となります。

- そのため、今まで内科で肥満症に対する治療(食事療法や運動療法などの生活指導)を受けたことのない方、糖尿病などの併存症の有無が判明していない方は、まずは内科で内科的治療と検査を受けていただく必要があります。
- 以上から、手術までの大まかな流れとしては次の表のようになります
治療 1か月目 |
- 内科での検査(糖尿病など)・教育(栄養・運動指導)入院
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治療 2~4か月目 |
- 外来通院(内科・外科外来受診、外来栄養指導)
- 治療4か月目に、手術を受けていただく方が良いかを、肥満症治療チームで協議
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治療 5~6か月目 |
- 手術適応と判断した際には、手術の6週間前に1~2週間、内科で減量目的入院
- 内科での入院後、1週間おきに外科外来で診察
- 体重減少の目標の達成度合いにより、手術の最終決定
- 手術日2日前、外科入院
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手術延期または中止を考慮する場合
- 手術は、生活習慣を良くする『大きなきっかけ』に過ぎず、生活習慣を良くして、これを『継続』することが大事です。すなわち、『ご自身の肥満症治療への協力』も必要です。
- 手術までの経過中に、以下に挙げる項目が生じた場合には、手術後に、肥満症治療への協力が得られないことが予想されますので、手術延期または中止を考慮します。
- □ 生活習慣が改善しない、または乱れる
- □ ストレスの増加
- □ 禁煙が守れない
- □ 担当医との約束が守れない(外来受診時間など)
- □ 目標体重が達成できない、もしくは体重増加
- □ ご本人・ご家族の反対
- □ 不適切な減量(断食や下剤使用などによる)


