診療案内

胃癌について

胃とは

胃はみぞおちの辺りに位置して、袋状の形をしています。
食道につながった噴門部、中心となる部分である体部、十二指腸に食べ物を送り出す働きを持つ幽門部に分けられます。
働きとしては食物の消化に加えて一時的な貯蔵の役割も果たしています。この他に、胃酸によって殺菌も行っています。

胃癌について

胃癌とはこの胃に出来た上皮性の悪性腫瘍で、日本では一番多い癌であり、年間約13万人が胃癌と新たに診断され、約5万人が胃癌で亡くなっているといわれています。
胃壁は内側から粘膜、粘膜下層、固有筋層、漿膜下層、漿膜の5つに分類されます。
胃癌は必ず粘膜から発生し、進行するにしたがって粘膜下層→固有筋層→漿膜下層→漿膜→他臓器への浸潤と進展していきます。
胃癌の場合は癌が粘膜下層にまでで留まっているものを早期癌、筋層よりも進展したものを進行癌と定義されていますが、進行度はより細かく8段階に分類されています。
進行に伴ってリンパ節、腹膜、肝臓など全身の臓器に転移を起こし、放置すれば最終的には死にいたる病気です。
症状として特徴的な兆候はなく、胃炎や胃潰瘍とも症状が似ています。
消化不良や不快感、膨満感、食欲低下、胸焼け、吐き気・嘔吐、体重減少などがあります。
したがって、早期発見のためには検診受診などの定期的な検査が必要です。

胃癌の治療

胃癌は病巣の切除によってのみ治癒が可能と考えられています。
胃癌は進行に伴って胃周囲のリンパ節という組織に高頻度に転移を起こします。
リンパ節転移の可能性ない早期胃癌に対しては、現在では内視鏡で胃の病巣を切除する内視鏡治療(内視鏡下粘膜下層切除;ESD)が一般的に行われます。
一方で早期胃癌であってもリンパ節転移の可能性があるものや進行胃癌はリンパ節の摘出を含めた胃切除が一般的に行われます。
胃の切除範囲は病変の部位や進行度によって決まり、全部を切除するものから胃の一部を切除する場合もあります。
従来、胃の切除は上腹部に大きな切開を置く開腹手術で行われていましたが、最近では腹部に5mmから1cm程度の穴を数箇所(一般的には5箇所)あけ、そのうちの一つの穴からおなかの中に専用のカメラ(腹腔鏡)を挿入して、おなかの中の映像をテレビ画面に映し、その映像を見ながら、残りの穴から鉗子と呼ばれる細長い道具を挿入して胃とリンパ節を切除し、その後に消化管をつなぎ直す腹腔鏡下胃切除術という手術方法もあります。

内視鏡治療
当院では消化器内科が担当します。
十分な術前検査を行い、リンパ節転移のないと考えられる早期胃癌が対象となります。
胃が全て温存されるため術後に食事量が少なくなったりすることがあまりなく、体に負担が少ない治療方法です。
治療後は切除された検体を顕微鏡検査に提出し、最終的にリンパ節転移の可能性がないと判断されれば治療が終了します。
一方で、リンパ節転移の可能性が疑われれば、追加治療(一般的には後述するリンパ節の摘出を伴った胃切除)が必要になることもあります。

開腹手術
従来から胃癌の治療に一般的に行われて手術です。
上腹部に大きな切開を置き、胃とリンパ節を摘出し、その後に消化管をつなぎ直します。
現在でも進行癌を中心に多く行われている手術方法であり、胃癌治療ガイドラインでは胃癌に対する標準手術と考えられています。
術後は胃の容量が少なくなるため、一般的にはしばらく食事量が減少します。

腹腔鏡手術
1991年に日本で初めて行われた手術方法で、1995年に保険適応となりました。
図1のように腹部に5mmから1cm程度の穴を数箇所(一般的には5箇所)あけ、そのうちの一つの穴からおなかの中に専用のカメラ(腹腔鏡)を挿入しておなかの中の映像をテレビ画面に映し、その映像を見ながら残りの穴から鉗子と呼ばれる細長い道具を挿入して胃とリンパ節を切除し、その後に消化管をつなぎ直します(図2)。
摘出する臓器は開腹手術と同等ですが、腹部の創が小さく、おなかの中の臓器が長時間外界に暴露されないために、開腹手術と比較して術後の痛みや体のダメージが少なく、回復も早いと言われています。
現在、ステージIの比較的進行の軽度な胃癌に対しては開腹手術と同様に標準治療の一つとなっています。
当科では胃癌に対する腹腔鏡手術の専門医が4名在籍し、積極的にこの手術を導入しています。
最近では進行胃癌に対しても腹腔鏡手術を積極的に行っており、現在では手術症例の80%以上に腹腔鏡手術を行っています。
また、専門医が手術を担当するため、術後の合併症の頻度も極めて低く、安全な手術を提供しています。

図1 開腹手術と腹腔鏡手術の創
開腹手術と腹腔鏡手術の創
図2 腹腔鏡手術のイメージ
腹腔鏡手術のイメージ
ロボット手術
da Vinciというロボットを使用しておこなう手術で、腹腔鏡手術の欠点を改善した比較的新しい手術方法です。 腹腔鏡手術の欠点としては、カメラを通しての2次元での視野で立体感がないことや、操作鉗子に関節はないため自由に動かしにくいという点があります。 手術支援ロボットは映像が3次元となり、鉗子の先端には関節がついているため、よりスムーズに緻密な手術をすることが可能となりました。 2014年から先進医療として行われた臨床試験にて術後合併症を有意に減少させることが証明され、2018年4月より保険適応となっております。
当科では2011年にこの手術を胃癌に対して導入し、良好な成績をおさめています。

抗癌剤治療
術前・術後の再発予防、切除不能進行再発胃癌に対しては抗癌剤治療を行うことが一般的です。
最近では新たな抗癌剤の開発により、胃癌に対しても抗癌剤治療が有効な治療法となってきています。
かりに初診時は切除不能であっても、抗癌剤治療後に手術を行って治癒を目指すなどの治療を積極的に行っています。

最後に

鳥取大学消化器外科ではこれまでに6000例を越える胃癌治療の経験があり、良好な手術成績をこれまでにおさめています(図3)。
また、最近多く行われている腹腔鏡下胃切除に高度な技術を持って対応できる内視鏡外科技術認定医が3名在籍しており、これらの外科医が実際に手術を担当します。
また、最新のロボット手術も導入しており、患者さんの病状をもとに、希望される手術に対応可能です。
さらに治療経験の豊富な医師により抗癌剤治療を行っており、仮に高度に進行した胃癌であっても抗癌剤治療と手術を組み合わせて治癒を目指す治療を積極的に行っています。
胃癌治療でお悩みの患者さんや、そのご家族の方は是非一度ご相談下さい。

図3 鳥取大学消化器外科の胃癌手術後のステージ別生存率
鳥取大学消化器外科の胃癌手術後のステージ別生存率

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