診療案内

食道癌について

食道とは

食道は、のどと胃の間をつなぐ管状の臓器で、大部分は胸に、一部は頸部と腹部にあります。
食道癌の約半数は胸部食道にできます。
他の消化器癌と同様に早期では症状に乏しく、健康診断や人間ドックでの内視鏡検査にて発見される無症状の食道癌は20%程度です。
日本での食道癌は、90%が扁平上皮癌であり喫煙と飲酒がリスク要因とされて、予防因子としては、野菜・果物の摂取がよいとされています。
また、胃癌や頭頸部癌などの合併が多いのも特徴的です。

食道癌の治療

食道癌の治療は、内視鏡治療、外科治療(手術)、放射線治療、抗癌剤治療があります。
ある程度進行した癌では、これらの治療を組み合わせた集学的治療を行ってきます。
外科治療は手術で身体から癌を切り取る方法で、食道癌に対する最も一般的な治療方法です。
手術では、癌を含めて食道を切除し、同時にリンパ節を含む周囲の組織を切除します。切除後には食物の通る新しい道を再建します。
食道癌の手術は、他の消化器癌手術において最も身体への影響が大きく、肺炎・縫合不全・肝・腎・心機能障害の合併症なども起こりやすい手術と言われています。
そのため、外科的治療の危険性が高いかたへは、放射線、抗癌剤治療を行うこともあります。

ステージⅣ期では手術を行うことはなく、抗癌剤治療を行います。
癌の縮小は認めることもありますが、癌を消失させることは困難であり、症状緩和を目的とした治療となります。
食事の通過障害がつよければ、バイパス手術、ステント留置を行ってきます。

食道がんの手術は、頚部・胸部・腹部の3領域にわたった手術が必要で、消化器外科の中でも最も大きな手術の一つです。近年、手術方法が低侵襲外科手術の方向へと向かっています。
我々は、胸腔鏡および腹腔鏡を用い、傷を小さくし内臓を大気に露出させない方法で食道がん手術の低侵襲化に努めてきました。当院では、2009年より胸腔鏡下食道切除術を導入し、ステージⅠ~Ⅲを適応として約120例の手術を行っています。気管・大動脈・心臓などの重要な臓器に挟まれた食道とその周囲のリンパ節を切除することにおいて、高度な技術と慎重さが必要です。

食道切除胸腔鏡手術でのポート配置

ロボット手術の導入

鳥取大学病院では2010年8月にダビンチが導入されロボット手術が開始され、泌尿器科、女性診療科、胸部外科、耳鼻咽喉科などで導入され、消化器外科でも胃癌、直腸癌手術に対してダビンチを導入してきました。
胸腔鏡手術では、手術鉗子の操作性に制限があることが問題であったため、2020年2月より食道癌でもロボット手術の導入を行いました。胸腔鏡にロボットを使用することで、ロボット鉗子の操作性が良好であることにより、より繊細な操作が可能となり、リンパ節郭清が容易となり、より確実な郭清が行えるようになりました。特に、声帯を動かす反回神経の周囲にあるリンパ節の切除において、ロボット手術の多関節鉗子による繊細な動きが可能となることより、声帯麻痺などの合併症の低減につながると考えています。

当院での胸腔鏡下手術でとりきれた場合の5年生存率は約58%となっています。
なお、「全国食道がん登録調査報告」では、手術でとりきれた場合の5年生存率は約50%となっています。

当院における術式別食道切除症例数
当院における術式別食道切除症例数
※2020年3月31日まで


鳥取大学医学部
器官制御外科学講座
消化器外科・小児外科
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