末梢血管疾患

生活習慣病からの血管の動脈硬化性変化により、いろいろな臓器や器官の血行障害でお悩みの方が増加しています。なかでも重要な疾患は下肢動脈の動脈硬化が原因となる下肢閉塞性動脈硬化症で、症状として歩行障害から始まりますが、重症となると下肢切断の恐れのある侮れない疾患です(図1)。

当院では、2010年に血管病に対するチーム医療体制を確立し、診断から治療(内科的治療と外科的治療)と術後長期にわたる継続的な診療を行っています。その結果、他院で下肢切断が必要と言われた足壊疽(重症虚血肢)の多くの患者さんが山陰各地から訪れるようになっています。

当科では、バイパス術と血管内治療(カテーテル治療)を使い分けて、患者さんに最適な血行再建方法の選択を目指しています。血流障害による虚血性の下肢痛・歩行障害から、より重症な足壊疽にも対応しています。図1に示した症状でお悩みの方は是非当科へご相談ください。

図1 | 下肢閉塞性動脈硬化症の症状・重症度

最先端の下肢救済術

―Distal bypassとは? 当院ではバイパス術だけでなく最先端のカテーテル治療、遺伝子再生治療も行っています。―

下肢を栄養する動脈が慢性的に閉塞し、動脈閉塞病変が進行することで、足への血液供給が次第に途絶え、やがて、足趾や足部に潰瘍や壊死を生じて、下肢大切断の危機に陥る病態を重症虚血肢と呼びます。当科では、閉塞部位をバイパスして直接足部動脈へ血流を送るDistal bypassを行って血流を改善させ、下肢切断を回避し、潰瘍部を治癒に導く治療を山陰地方で最も多く行っており、5年救肢率(5年間下肢の大切断を免れた患者さんの割合)は86%であります(図2)。

また、より低侵襲なカテーテル治療も積極的に行っており、上記のバイパス手術とカテーテル治療を病変の性状や部位によって使い分けたり、組み合わせて行うハイブリッド治療も行います。さらに、バイパス手術やカテーテル治療が困難な方には遺伝子再生治療も行います。

図2 | Distal Bypass手術の1例 [1]
図3 | 重症虚血肢に対する遺伝子再生治療

下肢救済のための当院のチーム医療体制

「下肢を救済し、歩行を取り戻す」をスローガンとして当院では多職種によるチーム医療体制で患者さんをサポートします。重症下肢虚血の治療は血流を再開させる血行再建治療のみで終わってはなりません。潰瘍や壊死を完治させ、歩行機能を取り戻すことが治療後の生活を充実させたものにするために極めて重要です。

そのため当院では、心臓血管外科医師・放射線科医師・放射線技師で手術やカテーテル治療での血行再建術を担当し、形成外科医師が潰瘍・壊死部の処置・植皮術から、組織欠損部には筋肉などを用いた皮弁手術など創傷治癒全般を担当します。さらに、看護師から生活指導・フットケアを、栄養士から栄養・生活指導を、理学療法士による歩行機能回復のための訓練など、重症虚血肢でお悩みの方により良いtotalケアができるよう取り組んでいます(図4)。

そのため当院では、足に潰瘍や壊死ができ下肢切断の恐れのある状態から歩行機能を取り戻した患者さんの割合は約80%であり、全国的に見ても高水準の治療を行うことができていると考えています。

図4 | Distal Bypass手術の1例 [2]

リハビリを行い、また歩行できるようなられ、 自宅に退院されました。