エルバド(LVAD)

LVAD

心不全、重症心不全状態とは

心臓は内臓や組織に血液を送りだすポンプの役割をしています。心不全とは心臓の働きが悪くなった結果、体が必要とする血液を送り出すことができず、息切れやむくみなどの症状がおこり、最終的には内臓の機能低下から生命の危機に瀕します。心不全の原因には狭心症・心筋梗塞といった虚血性心疾患、拡張型心筋症、心臓弁膜症などの疾患があります。重症心不全とは、従来の内科治療や外科治療では病気の進行を食い止められず、高度に心臓の働きが低下した結果、日常生活に支障をきたすようになった状態のことを言います。

治療

現在、心不全に対しては薬物治療以外の多くの選択肢(非薬物治療)があります。内科的な治療法が有効でなくなった重症心不全患者さんの予後の改善には補助人工心臓・心臓移植が必要となります。

補助人工心臓は、弱った心臓のポンプ機能そのものを代行して、全身に必要な血液を送り出し、生命を維持する機械的な血液ポンプです。日本においては心臓移植のための臓器提供が極端に不足しており、心臓移植が必要と判断されてから、心臓移植を受けられるまでに4〜6年待たないといけません。その心臓移植を待っている間、生命を維持する手段として左室補助人工心臓(LVAD:エルバド)を用います。左室補助人工心臓は2011年春から植込み型補助人工心臓の使用が保険承認され、当院では中国地方でいち早くこの治療法を取り入れて多くの患者さんに植込み型補助人工心臓治療を行っております(図1)。当院では東京・大阪などの大都市に集中する傾向の強いこの治療を、当初より地方で行い好成績を収めているため、地方での本治療法確立のモデルとなっています。

図1

植込型LVADは小型化されており、細いケーブルが体外に出ているものの、ポンプ自体は体内に植え込みます(図2)。血栓症のリスクが低く、装着したままでも自宅退院が可能であるという利点があります。現在日本では、植込型LVADによる治療を受けるためには循環器学会 心臓移植検討委員会から心臓移植の適応を取得していることが条件となります。心臓移植適応の取得には、65歳未満で、重度の腎機能障害・肝機能障害がない、家族から十分なサポート体制が得られる等のいくつかの条件を満たす必要があります。当院は心臓移植実施施設である大阪大学と密に連携し、現在までに2名の方が当院での人工心臓治療から、大阪大学での心臓移植を終え元気に社会復帰されています。

図2 | 左室補助人工心臓のしくみ

植込み型補助人工心臓を装着した場合自宅へ退院し、学校への復学や職場へ復帰も可能です。当院では本治療に精通した医師以外にも、6名の人工心臓管理認定士(臨床工学技士3名、看護師3名)が在籍しています。機器の取扱いから生活指導など、さらには復帰する学校や職場への協力体制構築など、チーム全体で患者さんをサポートし心臓移植までの待機期間中、高い生活の質(QOL)を維持できるよう取り組んでいます(図3)。

図3 | 人工心臓治療のチーム医療
また、図4のモーターに磁器浮上技術が用いられている超小型ポンプ(HEART MATEⅢ)や、図5のお風呂につかることもできる耳介後部コネクターを用いた植込み型補助人工心臓(Jarvik2000 PAモデル)など最新の補助人工心臓の植え込み手術にも当院は対応しています。
図4
モーターに磁器浮上技術が用いられている
HEART MATEⅢ
図5
耳介後部コネクターを用いた植込み型補助人工心臓
(Jarvik2000 PAモデル)
お風呂につかることや水泳も可能