教授挨拶

眼科科長 宮﨑 大 教授よりご挨拶です。

ご挨拶

鳥取大学医学部附属病院
眼科科長 教授 宮﨑 大

健康な生活を送る上で、知覚機能は非常に重要な地位を占めます。運転をしたり、歩いたり、あるいはスポーツをするにしても知覚機能が低下すると生活の質が大きく低下します。とくに、社会生活において私たちは、”見る”ということに頼っています。

近年、スマホを介してネットにアクセスして情報を得たり、世界の方とつながることも容易になってきました。こうしたインターネットにおいても、情報の多くは”見る”ことから得られています。そして、私たちは視覚を介してつながっています。

また、年齢を重ねるとさまざまな機能が障害されたり、衰えたりしてまいります。全身的に健康でも視力が損なわれると生活の質は著しく障害されます。また、視覚機能と認知能力は密接にからんでいるのみならず、健全な身体機能の維持にも関わっています。

私たち眼科医は、こうした視覚機能の維持にかかわる砦として、日々プライドをもって仕事をしております。とくに鳥取大学の眼科は鳥取県内だけにとどまらず、広く山陰地方の眼科医療の要として、日々患者様の目の健康を守ることを目標としております。

眼の病気といっても多岐に渡ります。学童期の近視にはじまり、壮年期をすぎると白内障、緑内障、加齢性黄斑変性といったさまざまな病気にとらわれるようになります。つまり、それぞれの病気によって多種多様の対応をしなければなりません。鳥取大学の眼科は山陰に暮らす人たちの目の健康のニーズに幅広く答えるために、さまざまな技術を駆使して、幅広い眼疾患に多面的に対応できる体制をとっています。

一般的な白内障のケアをカバーすることはいうに及びません。また白内障といっても難症例の方もおられます。また、難症例における併発症や合併症の治療には高度な医療技術が求められます。進行した緑内障や網膜剥離・角膜混濁といった視力予後が一般に悪い病気に対しても山陰地方の最後の砦として、個々の患者様に最適な治療を選択して行っています。適応のある患者様に対しては積極的に手術を考慮し、年間1000件を超える手術をおこなっています。

角膜の移植については、部分的に移植をおこなう最新の術式を取り入れ、最高の視力が得られることを目標としています。角膜移植のドナー提供については鳥取県内のみならず、日本国内、さらには海外のアイバンクからも協力を得ています。移植後の管理にしましても、分子生物学的技術をとりいれた診断をとりいれ視機能を最大に維持できるように尽力しています。

目は全身疾患との関係も重要です。糖尿病をはじめとした全身疾患に関連した眼疾患の治療をおこなうとともに、他科と緊密な連携のもとに、眼の所見や詳細な視機能の検討から、患者様の全身の治療や日常生活改善のために有用な情報を得ることもめざしています。

近年では、医療における人工知能技術の応用にも力をいれ、人工知能技術を用いた画像診断の開発にも尽力しております。産学協同の体制のもと、薬事承認を見据えて行っております。また、近年、重要性が認識されつつあるエクソソームを用いたリキッドバイオプシー技術の開発、緑内障や加齢性黄斑変性の新規薬剤標的探索も行っております。

このように幅広い眼科医療を行っている鳥取大学眼科では、現在の患者様に対する診断・治療だけでなく、将来の患者様の診断・治療に役立つように、教育・研究をつねに考え、知識や技術の蓄積・伝達・新たな開発をめざしています。新たに眼科医を目指す先生方の研修にとっても最適な環境であり、若い実力のある先生方の参加を得て、患者の皆様によりよい視力・よりよい生活を将来にわたって提供していきたいと考えています。