大﨑雄樹さん(札幌医科大学医学部解剖学第一講座・教授、6期生)

2022年4月実施

とりりんインタビュー1-2

〇生命科学科卒業後から現在のポジションまでのご経歴をお教えください。

鳥取大学大学院で修士・博士課程を修了後、脂質をより形態学的に研究するため、名古屋大学に移り、ポスドク、助教、講師、准教授を経て、現職の札幌医科大学医学部解剖学第一講座・教授に選考していただきました。

また、名古屋大学在籍時にはフィンランドのヘルシンキ大学に留学する機会をいただきました。

 

 

〇現在、どのようなお仕事/ご研究をなさってますか(答えられる範囲で)

教育面では、医学部医学科1~2年生に組織学、神経解剖学の授業と実習を教えることを主にしております。

研究面では、鳥取大学在籍時代から継続して、コレステロールの輸送と代謝、細胞内小胞輸送、最近では、コレステロールエステルやトリアシルグリセロール等の中性脂質の蓄積構造である脂肪滴の機能について研究しています。

 

 

〇なぜ今の職業を選んだのですか?仕事のやりがいは何ですか?

生命科学科に進学する時点で、広く生物系の研究者になりたいと思っていました。博士後期課程に進学する段階で、研究者になると覚悟を決める起点になりました。

生命科学科在籍時に所属していた神経生物学(現:神経科学)で、脳神経小児科とタイアップして遺伝性の脂質蓄積病の患者さんの状況をつぶさに教えていただいたことやコレステロール輸送がうまくいかなくなるために神経細胞が死に病気になるということを教わり、細胞1個単位で脂質の輸送を回復するような副行経路を見つけると、若くして亡くなるような遺伝性の疾患の治療の道に繋がるのではないかと考えたことがきっかけで、脂質の輸送経路・代謝経路に興味を持ちました。

最近では、脂肪組織に蓄えられている脂肪滴の有用な面を見つけ、生活習慣病の予防に繋がるのではないかと考えています。

 

 

〇なぜ生命科学科に入学したのですか?

高校時代は文系の教育者・研究者であった父の影響もあり、漠然と研究者に憧れており、考古学か生物系の研究者になりたいと思っていました。生物系を選んだきっかけは忘れてしまいましたが、顕微鏡で見る小さな世界で、つるはしをピペットマンに換え、ここだと思うところに仮説を立て、掘って新しいものを見つけるという根っこの楽しみは考古学も生物学も同じだと思っています。

 

 

〇在学中、生命科学科(院含む)はどのような雰囲気でしたか?

6期生でしたので、設立当時の黎明期の様な雰囲気が残っていましたが、確立されたシステムの中で教育を受けることができたと思います。

40人という少人数でアットホームな雰囲気で授業を受けることができて良かったです。医学部と理学部の中間にある様な雰囲気で、臨床にも近いが、ピュアサイエンスの部分もしっかり残っていて、雑多かつ自由な雰囲気を強く感じていました。

 

 

〇生命科学科の良いところ、悪いところをお教えください。

2年次以降は病院と研究棟と講義棟の狭いキャンパスで過ごすので、1年次は鳥取キャンパスで他学部の学生と過ごし、総合学部の雰囲気を味わうことができ、教養を学ぶことができたことが、今でも良い記憶に残っています。

 

 

〇高校生に生命科学科を宣伝するとしたら、どのような点だと思いますか?

地方の大学ですが、最先端の生命科学、基礎医学に繋がる研究が世界をリードするレベルでできる恵まれた環境だと思います。

隣に病院があり、実際に苦しんでいる患者さんがいて、その原因は何かということを調べることができ、臨床サイドの情報を得やすいところが特徴的です。研究をする上で患者さんの情報が近くにあるということは、大きなモチベーションにもなります。

 

 

〇就職後、生命科学科で学んだことは役立ちましたか?

主に大学院生活で培ったものになりますが、1人もしくは少人数の研究グループで様々な困難に当たり、試行錯誤し、研究を進めたという生活を通して、問題に直面した時に解決するためのプロセスや失敗した時の原因究明やリカバリー方法が身に付き、研究面だけでなく、生活面でも生かされています。当時の研究室の自由にのびのびとできる環境で、自由に試行錯誤することが楽しいと思えたことが役立っていると思います。

 

 

〇大学時代にやっておいて良かったことや、やっておけば良かったことを教えてください。

自分を振り返ってみると、学生の時間があるうちに、国内外問わず、長期旅行をしておけば良かったと思います。知らない土地に行くと、景色や歴史の違いを楽しむだけでなく、考え方の違う人がこんなにいるのかということを感じることができます。人付き合いが苦手なところもあり、研究者は一人でコツコツとする仕事で人と会わなくても良いことが魅力かなとも思っていましだが、研究者こそネットワークが大事だと分かってきましたので、時間がある時に長期旅行に行き、ついでに英語の勉強もしていただければ良いと思います。

 

 

〇同窓生ネットワークでどのような情報があれば有意義だと思いますか?

研究分野だと、実験のトラブルの相談を気軽にできるような掲示板等の機能、卒業生からの求人情報等のやりとりのシステムがあると有意義だと思います。

 

 

在学生へのメッセージをお願いします。

生命科学科のデメリットとして(札幌医科大学も同じですが)地方では、インターネットが普及した今日とはいえ、関東関西での学会などの集まりに出席しにくく、また大学同士の情報交換が盛んな大都市圏内に比べると、情報収集力が劣るのは否めません。大都市圏は受動的でも情報が集まって来ますが、地方大学としては常に積極的にアンテナを立てて情報入手に努めることも、学部や修士で就職活動する方も、研究分野に進む方にも、重要かなと思います。そういう意味では、コロナ禍で引き続き多くの学会や企業研修セミナーなどがオンライン/ハイブリッドで開かれる今こそ興味ある集まりに参加し易くなっており、積極的にオンライン情報収集を行なってはいかがでしょう。