パブリケーション

報道から読み取る鳥取大学における染色体工学研究の歩み

マウスに囲まれた人

染色体の研究から始まり、そこからはなれる事が出来ず、32年経過した。染色体の中には、生命の進化の過程が刻まれているが、この染色体の持つ情報の解明は始まったばかりである。写真(香月康宏 撮影)は、マウス細胞に導入されたヒト21番染色体(赤色)である。まさに『マウスに囲まれた人』である。このヒト染色体にはneo などの選択マーカーが搭載してあり、様々な細胞に移入可能である。Y 染色体を除くすべての染色体とその断片を持つマウス細胞を作った。
1980年代、発ガン遺伝子が華やかな頃、がん遺伝子に加え正常細胞から何らかの遺伝子が消失する事ががん化に重要である事を示す成果を発表した*1。その事がきっかけで、正常な染色体をがん細胞に移入し、がん抑制効果を検索する系を作製する事となった。その後、ヒトの染色体はカンガルーの細胞に入れられたり、ニワトリの細胞の中に入れられたり、ハムスター細胞に入れられ、たらい回しにあった。結果として、この系は、様々な劣性遺伝病の原因遺伝子の単離や、ヒト抗体産生マウスの作製*2、ダウン症モデルマウスの作製 やゲノム刷り込み遺伝子の同定などに用いられる事となった。現在では、遺伝子治療用のベクター作りにも利用されつつあります*3
因に、研究代表者・押村は子年であるから、ネズミさんが私達を守ってくれ幸運をもたらしてくれているに違いない。加えて、この細胞は、多くの共同研究者と学友を与え、そして多くの学生を研究者として育てる手助けをしてくれました。ネズミさん、ありがとう。

《参考文献》
  1. Oshimura et al : Nature (1985) 316:636-639.
  2. Tomizuka et al : Nature Genet (1997) 16:133-143.
  3. Kazuki and Oshimura : Mol Ther (2011) 19:1591-1601.