ご挨拶

小谷先生教授挨拶

 

御挨拶

 

   当科は、昭和42年に開設され、初代濱田驍教授、第2代領家和男教授より、『口腔顎顔面領域のプロフェッショナルであれ、口腔科医であれ』、を教室の理念として引継ぎ口腔の腫瘍、外傷、炎症、先天異常、顎変形症、歯科疾患、インプラントなどの幅広い分野の治療、研究を行っています。

なかでも、顎変形症、口唇裂・口蓋裂は集学的治療を要する専門的疾患として、継続的に治療体制の充実に力を入れており、現在一貫治療ができる山陰唯一の施設となっています。顎変形症は、上下顎骨の位置異常と歯列不整により咀嚼障害、審美障害を生じ、詳細な骨格や歯列不正の評価を行い、約1年半の歯列矯正治療の後に、手術により骨格的変形を修正し、歯列矯正治療をさらに約1年行い咀嚼障害、審美的障害の改善を図ります。2016年より上顎骨形成術の基本術式であるLeFortI形骨切り術に、馬蹄形骨切り術、多分割骨切り術を併用し、下顎骨を移動させる下顎骨形成術においては、症例ごとに下顎枝矢状分割術と下顎枝垂直骨切り術を使い分け、より安全に機能的・審美的改善が期待できる治療法を行っています。

口唇裂・口蓋裂治療では、生後3ヶ月ごろ口唇形成術、1歳半ごろ口蓋形成術を行いますが、歯列不正は必ず併発しており、歯列矯正治療が必要となります。あわせて、言語聴覚士による治療も必要になりますが、当院ではこれらの治療が全て受けられる体制が整っております。Presurgical nasoalveolar molding method(PNAM法)は,哺乳障害の改善,顎裂幅や口蓋裂幅の狭小化などの顎誘導に加え,鼻部の形態改善も行うことができる治療法で,2014年より導入し術前鼻歯槽形成に良好な結果を得ています。

これらの顎変形症、口唇口蓋裂の治療に歯列矯正治療が必須です。当科では、岡山大学大学院医歯薬総合研究科 歯科矯正学分野より日本矯正歯科学会指導医に常勤で赴任してもらっています。矯正指導医、口腔外科医、患者・家族が一緒に話し合えるのは、ご家族の不安、疑問を解消し、綿密な治療を実践するに大変有益であると感じています。

 

   専門的分野の治療の一方、医科と情報を共有できる歯科医師の育成を教室の重要な使命と考えています。高齢化社会では循環器疾患や呼吸器疾患など基礎疾患を有する方が多く、抗凝固療法薬など、歯科治療を行う際に留意すべき薬剤を服用している患者は少なくありません。このような基礎疾患を有した方の情報を医科の先生方と共有することは増々重要となっています。当教室では、松江市から兵庫県北部にかけて、13の関連医療機関に歯科医師を派遣しておりますが、そこでは、一日約90人の新患紹介患者、600人の再診診療に携わっています。これらの施設は、地域の基幹医療施設であり、基礎疾患を有した患者の歯科治療や、口腔外科手術を行っており、全身状態の理解が必須です。教室員は大学病院での麻酔科研修で全身の理解と、呼吸、循環管理を学び、安全な歯科治療、周術期管理を実践できる歯科医師に成長してゆきます。

   私は、地域からの要望に応えるため、1.全身の理解ができる歯科医師、2.口腔外科専門医、3.研究を通じて緻密で、粘り強い医療人を育成することを教室の使命と考えています。教室員が目標をもって成長できる環境を整え、社会に貢献できる歯科医師を育成してまいります。

 

   小谷 勇

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