染色体導入効率を飛躍的に改善する技術を開発
~ヒト/マウス人工染色体を用いたゲノム合成研究・再生医療研究を加速~
鳥取大学の香月康宏教授、東京薬科大学の宇野愛海助教らの研究グループは、ヒトお よびマウス人工染色体による疾患モデル細胞・動物作製、再生・細胞医薬品の開発を目 指しています。しかし、ヒト iPS 細胞をはじめ哺乳類細胞へヒト/マウス人工染色体を 導入する効率は不十分でした。本研究で、ヒト/マウス人工染色体を保有する CHO 細胞注 6をタキソールとリバーシンという2種類の化合物を混合して用いることにより、導入 効率を飛躍的に上昇させることに成功しました。 微小核細胞融合(Microcell-mediated chromosome transfer:MMCT)法は、ヒト/マウ ス人工染色体を持つ染色体供与細胞への微小核誘導、微小核細胞の分取、そして微小核 細胞と染色体受容細胞の融合という3つのステップで行われます。これまでの基礎研究 から得た知見を基に、最初の供与細胞に微小核を誘導するステップに着目しました。従 来のコルセミドから、タキソールとリバーシンを組み合わせた新規の処理方法に変更す ることで、飛躍的に微小核形成効率が向上することを明らかにしました(図1)。微小核 の誘導効率が上昇した結果、染色体導入効率も上昇し、ヒト iPS 細胞を含めた様々な細 胞にヒト/マウス人工染色体を導入する効率が従来法と比較して約5~18倍程度改善 することを示しました。 本研究で開発した染色体導入効率を飛躍的に改善する技術は、合成 DNA を搭載したヒ ト/マウス人工染色体を用いたゲノム合成研究や、複数の治療遺伝子を細胞に届ける再 生・細胞医薬用ベクター技術の開発を大きく加速させるものと期待されています。 本研究成果は、2023年7月14日(米国東部時間)に米国遺伝子細胞治療学会 (American Society of Gene & Cell Therapy:ACGCT)の機関誌の1つである国際科学 誌「Molecular Therapy-Nucleic Acids」のオンライン版で公開されました。
詳細については、以下プレスリリース資料をご覧ください。