ロボット支援手術

ロボット支援手術

手術支援ロボット ダビンチ 内視鏡下手術同等に体にやさしく、開腹手術のような視覚情報と執刀。ロボット支援ならではの正確さと速さを併せて持った手術です。

支援手術ロボットとは

低侵襲で安全な内視鏡手術を可能にする

内視鏡手術に使用されるロボットの名前をダビンチといいます。

"万能の天才"レオナルド・ダビンチにちなんでつけられました。

その歴史はいまだ浅く、米国で1980年代後半、戦場で傷ついた兵士を米国本土や空母から医師が遠隔操作で手術するという発想から開発が進められました。ダビンチ(da Vinci)は1997年に登場してきましたが、残念なことに日本は大きな遅れを取っています。

米国はFDAが2000年7月に承認したのに対して、日本では厚生労働省が薬事・食品衛生審議会で承認して臨床使用の許可が出たのは2009年11月です。

しかしながら、現在2012年4月に前立腺癌に対するロボット支援手術が保険適用され、ロボット支援手術は急速に普及してきており、2013年には泌尿器科、産婦人科領域を中心に世界で50万件を超える手術が行われました。

本邦でも2014年12月現在では、189台のロボットが導入されています。

複雑な手術を容易に、そして、より低侵襲で安全な内視鏡手術を可能にしてくれるのが手術支援ロボットです。

ダビンチ手術の特徴
ダビンチ手術の特徴

長所

ロボット手術の3つの特徴が、患者様の術後のQOLを向上させます。
ロボット手術の最大の特徴 3Dハイビジョンカメラによる鮮明な立体画像 7つの関節を持ち自由に動く鉗子 手振れ防止機能
内視鏡下手術のモニター画面に比べて、3次元で遠近感のある映像が見られる。また、映像を10倍程度まで拡大することができ、より精細な映像見られる。   内視鏡下手術の鉗子に比べて、ロボットアームの動きが柔軟で、人間の手と同等以上に細かな作業が正確にできる。   コンピュータ制御で手ブレが補正され、作業が速く正確。手術時間が短縮され、血管や体にかかる負担も軽減。
 

低侵襲手術とは

開胸手術とロボット手術の手術後の傷の大きさを比較する写真

患者様のQOL(quality of life)=生活の質を尊重した、体の負担を軽くする手術へ

手術の際、切る部分が大きくなればなるほど、痛みを伴うとともに痕が残りやすく、また普段の生活に戻るまでに時間がかかります。さらに、患部によっては、切ることで大事な機能が失われることがあります。例えば前立腺がんの切開手術は、逆に尿失禁やED(勃起不全)などの合併症を伴う場合があります。このように、手術によって患者さまの体へ負担をもたらす行為を「侵襲(しんしゅう)」といいます。
できるだけ体を傷つけずに手術をすることで、体への負担を最小限にし、また合併症のリスクを少なくし、手術後の回復を早めることが「低侵襲(ていしんしゅう)」です。
そんな患者様のQOL(quality of life=生活の質)を尊重した手術が、今、行われるようになってきています。「低侵襲(ていしんしゅう)手術」と呼ばれているものです。

 

当院での手術支援ロボットの導入

本院では、その先駆的な役割を果たす手術支援ロボット(ダビンチS)を、2010年8月に山陰で初めて導入し、2011年2月より「低侵襲外科センター」を設置し、診療科の垣根を越えて、その実現に向けて取り組んできました。

2013年3月に最新鋭の内視鏡手術ロボット「ダビンチSi」を中国地方では初めて導入いたしました。

当院は国内のロボット支援手術の先陣を切っており、国内で初めてダビンチSを使って胸腺腫を併発した重症筋無力症患者の胸腺摘出手術に成功いたしました。
手術の選択肢が増えれば、患者様にとってたいへん有益です。鳥取から将来の医療の道を切り開きたいと思っています。

2011年1月 本邦第1例目 ダビンチ拡大胸腺摘出手術成功

ダビンチXiの特徴

関係する写真
画像(3D-HD vision)の改善(720p → 1080i)

術野向上による確実な手術を実現

コンソールエルゴノミクス設定

操作性の向上による確実な手術を実現

デュアル・コンソール

術者2名での手術操作(複雑な手術操作が可能)
医学教育・研修医教育・医師教育に適する

安全機能の向上

左右の鉗子と連動した脚(電機メス)操作

スキルシミュレーター(optional)

術者教育の充実化

 

当科のロボット手術の特徴

手術実績
350
手術施行認定資格者(院内)※1
5
プロクター(手術指導医)資格者※2
2
ロボット支援手術施行認定資格とは(da Vinci Certificate)※1

手術支援ロボットを操作できるのは、「ダヴィンチ」の製造元であるIntuitive Surgical社で専門のトレーニングを積んで認定資格(da Vinci Certificate)を取得し、10例以上のロボット支援手術見学あるいは、プロクター(手術指導医)立ち合いのもとでの手術を経てから、はじめて主たる術者として手術に臨むことができます。

呼吸器外科ロボット支援手術プロクター認定資格とは※2

プロクター(手術指導医)資格は、主たる術者として40例以上執刀した経験があり、呼吸器外科ロボット支援手術に関する論文発表または発表、さらにプロクター講習会を受講したものに授与されます。

この治療の対象となる疾患

※こちらの動画は、実際の手術映像となります。このような動画や写真で、気分が悪くなる可能性のある方は、ご遠慮ください。

肺癌に対するロボット支援手術

適応は大きさが3cmくらいまでのリンパ節転移のない肺癌です。4アームによる手術を行います。自由自在に動くロボット鉗子を用いて、手振れのない正確な操作が可能です。血管剥離、リンパ節郭清、そして気管支形成に大きな威力を発揮します。

※こちらの動画は、実際の手術映像となります。このような動画や写真で、気分が悪くなる可能性のある方は、ご遠慮ください。

縦隔腫瘍に対するロボット支援手術

縦隔腫瘍は肺癌手術同様にロボット手術のよい適応です。炭酸ガスを胸腔内に送気しながら、片側胸壁アプローチ(3アーム、1アシスト)で手術行います。特に胸腺腫を代表とした前縦隔腫瘍はアプローチの難しい部位に存在しているため、通常の胸腔鏡手術よりもロボット手術の方が容易に手術可能な場合もあります。後縦隔の腫瘍も容易にできます。

※こちらの動画は、実際の手術映像となります。このような動画や写真で、気分が悪くなる可能性のある方は、ご遠慮ください。

重症筋無力症

重症筋無力症に対するロボット支援胸腔鏡下拡大胸腺摘出術です。縦隔腫瘍と同じく、炭酸ガスを胸腔内に送気しながら、片側胸壁アプローチ(3アーム、1アシスト)で手術行います。胸腔鏡手術と比較しても、小さな傷、少ない痛み、早い回復が期待されています。欧米ではすでに1000例以上の実績があり、最近ではロボット支援手術をした場合は重症筋無力症の寛解率がよいというデータもあり、今後の検討が期待されています。

 
中村広繁

メッセージ

手術支援ロボットの本体はサージョンコンソール、ペイシャントカート、ビジョンカートの3つの部分から構成され、外科医はサージョンコンソールに座り、マスタースレーブ式(主人と奴隷方式)の遠隔操作で手術を行います。その特徴は1.10倍まで拡大視可能な3次元視野、2.7つの自由度を持つ多関節鉗子、3.モーションスケーリング機能による手振れ防止にあり、これらの機能により、精緻な手術操作が可能で従来の胸腔鏡手術の弱点を補い,狭い領域で複雑な手術手技を正確かつ容易にしてくれます。
呼吸器外科領域のロボット手術は現在までのところ安全に導入され,有用な結果が示されてきています。2018年度から肺がんと縦隔腫瘍に対して保険適応となり、リンパ節郭清,肺や気管支の縫合操作、胸腺手術、大きな縦隔腫瘍などで効果が発揮されてきました。ロボット手術は胸腔鏡手術の低侵襲性と開胸手術の操作性を兼ね備えた魅力を有すると考えられ、今後の発展が期待されています。

 

患者様のメリット

ロボット手術の特徴が、患者様の術後のQOLを向上させます。

傷口が小さい → 出血が少ない → 痛みが少ない → 回復が早い → 合併症リスクを低減
 

手術支援ロボットの仕組み

術中風景 手術室レイアウト

サージョンコンソール(操作部)

手術支援ロボットの「司令塔」3D立体視のディスプレイを見ながら、手元のレバーを操作します。

サージェントコンソール(操作部)

ペイシェントカート(ロボット部)

ペイシェントカート本体は、3本の鉗子を取り付けるアームとセンターの内視鏡カメラを取り付けるアームからなります。

ペイシェントカート

ビジョンカート(モニター部)

ビジョンカートには術中に画質を最適にするための処理装置として、カメラコントロールユニット(CCU)、フォーカスコントローラ、イルミネータが収納されています。モニター画面を通して、助手などが手術の進行を確認します。

ビジョン
 

当科の実績

当科で行ったロボット支援手術による手術件数の実績です。
年度 術式 件数 合計

2010年度

(平成22年度)

胸腺摘出術 3件 8件
肺癌に対する肺葉(区域)切除術 5件

2011年度

(平成23年度)

胸腺摘出術 8件 18件
肺癌に対する肺葉(区域)切除術 10件

2012年度

(平成24年度)

胸腺摘出術 4件 10件
肺癌に対する肺葉(区域)切除術 5件
後縦隔腫瘍摘出術 1件

2013年度

(平成25年度)

胸腺摘出術 3件 14件
肺癌に対する肺葉(区域)切除術 7件
後縦隔腫瘍摘出術 4件

2014年度

(平成26年度)

胸腺摘出術 5件 17件
肺癌に対する肺葉(区域)切除術 10件
後縦隔腫瘍摘出術 2件

2015年度

(平成27年度)

胸腺摘出術 8件 14件
肺癌に対する肺葉(区域)切除術 6件
後縦隔腫瘍摘出術 0件

2016年度

(平成28年度)

胸腺摘出術 4件 7件
肺癌に対する肺葉(区域)切除術 2件
後縦隔腫瘍摘出術 1件

2017年

(平成29年度)

胸腺摘出術 4件 5件
肺癌に対する肺葉(区域)切除術 0件
後縦隔腫瘍摘出術 1件

2018年度

(平成30年度)

胸腺摘出術 16件 51件
肺癌に対する肺葉(区域)切除術 33件
後縦隔腫瘍摘出術 2件

2019年度

(令和元年度)

胸腺摘出術 10件 56件
肺癌に対する肺葉(区域)切除術 42件
後縦隔腫瘍摘出術 4件

2020年度

(令和2年度)

胸腺摘出術 14件 104件
肺癌に対する肺葉(区域)切除術 90件
後縦隔腫瘍摘出術 0件

2021年度

(令和3年度)

胸腺摘出術 11件 101件
肺癌に対する肺葉(区域)切除術 89件
後縦隔腫瘍摘出術 1件

2022年度

(令和4年度)

胸腺摘出術 13件 124件
肺癌に対する肺葉(区域)切除術 108件
後縦隔腫瘍摘出術 3件

2023年度

(令和5年度)

胸腺摘出術 6件 102件
肺癌に対する肺葉(区域)切除術 89件
後縦隔腫瘍摘出術 7件
合 計 胸腺摘出術 109件 631件
肺癌に対する肺葉(区域)切除術 496件
後縦隔腫瘍摘出術 26件

2023年(令和5年) 12月31日現在

 

Q & A

Q. 「手術支援ロボット」での手術を受けるにはどうしたらよいでしょうか。

A.呼吸器外科の外来を受診して下さい。その際紹介状があるほうが便利です。手術適応の判断は外来担当医が行います。

Q. 費用はどのくらいかかるでしょうか。

A.手術費用に関して保険適応となりましたので、担当医へご相談ください。また、お問い合わせの内容によっては当日お答えできない場合もございますので、何卒ご了承願います。

見学をご希望される方へ

手術の見学に関しましては、医療サービス課へお問い合わせ下さい。くわしくは低侵襲外科センターのホームページ、手術見学のページをご覧になり申込書をご提出ください。

医療サービス課
TEL:0859-38-7118
FAX:0859-38-7159

 

手術室