生命科学科では全体として医学とバイオサイエンスをつなぐような研究を目指しています。従って患者さん由来の組織を使って、当然本人の許可を得て、遺伝子解析を行うような臨床サイドの研究から、ネズミの発生に関わる遺伝子や転写制御のしくみを解析するような基礎的な研究まで幅広く研究されています。
ご質問の我々の研究室では、1つは遺伝子治療のためのウイルスベクターを開発するための基礎的な研究をしています。HPにあるように、転写因子の遺伝子をベクターに組み込んで肝障害モデル動物に打つと、傷害を軽減することができることが分かりました。癌の遺伝子治療についても興味はありますが、現実的には難しい点が数多くあります。現在は細胞増殖をコントロールするようなベクターの開発をめざしています。もう一つは筋肉の分化や機能維持に関わる因子の解析をしています。患者の中にこの遺伝子発現の異常が見られ、高血圧のモデル動物やノックアウトマウスを使って病気になるしくみを研究しています。さらに、クロマチン構造とくにDNAのメチル化と転写制御をインプリンティングとの関わりで研究しています。
また、私たち以外の研究室での研究で特記すべきものは、細胞工学教室では、ヒト染色体をもつマウスの作成に成功し、世界的にも注目されています。マウスにできることは牛でもできるわけですから、人の抗体を産生するマウスや牛ができることとなり、安全性の高い抗体薬ができることになります。免疫学教室では、胚性幹細胞を使って骨形成を可能にしました。神経生物学教室では神経回路網が再形成されるしくみを調べています。生体情報学ではEBウイルスの活性化機構を調べていますが、ほとんどの人が既にEBに感染していて通常は抑制された状態にありますが、何らかの機構でそのウイルスが目を覚まし、病気を引き起こします。病態生化学ではゼノパス卵の細胞周期に関わるリン酸化シグナルの研究をしています。また、現在、生命科学科と医学科とで共同で新しい独立専攻を準備しています。再生医療や遺伝子治療をめざして、基礎から実践までを可能にすることを目指しています。
これまで、生命科学系専攻には毎年数人の他大学の理学部や農学部、工学部、薬学部から受験者があり、入学しています。博士前期課程の入学試験は他大学出身者も平等に受験できるように、生命科学の試験問題の他に生物学、薬学、基礎医学、農学に関連する設問もあり、問題を見てその中から、選択して解答するようになっています。