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  • 氏名
    久郷 裕之
  • 【略歴】
    昭和61年8月~平成2年3月   神奈川県立がんセンター
    平成 2 年4月~平成11年8月   鳥取大学 助手
    平成11年9月~平成13年9月   米国M.D. Andersonがんセンター 研究員
    平成13年10月~平成15年9月 鳥取大学 助手 
    平成15年4月~平成26年4月   鳥取大学大学院医学系研究科 准教授
    平成26年5月~              鳥取大学大学院医学系研究科 教授
    平成26年6月~平成27年3月   染色体工学研究センター副センター長 
    平成27年4月~              染色体工学研究センター センター長  現在に至る     

実績・論文など

【発表論文(代表的なもの)】

Kleymenova E., Ibraghimov-Beskrovnaya O., Kugoh H., Everitt J., Xu H., Kiguchi K., Landes G.,Harris P. and Walker C.: Tuberin-dependent membrane localization of polycystin-1: a functional link between polycystic kidney disease and the TSC2 tumor suppressor gene Mol Cell 7(4):823-832, 2001

Kugoh H., Kleymenova E., and Walker C. Retention of membrane-localized b-catenin in cells lacking functional polycystin-1 and tuberin. Molecular Carcinogenesis 33 (3): 131-136, 2002

Kugoh H, Nakamoto H, Inoue J, Funaki K, Barrett JC, Oshimura M. Multiple human chromosomes carrying tumor-suppressor functions for the mouse melanoma cell line B16-F10, identified by microcell-mediated chromosome transfer. Molecular Carcinogenesis 35(3): 148-156, 2002

Kugoh H, Shigenami K, Funaki K, Barrett JC, Oshimura M. Human chromosome 5 carries a putative telomerase repressor gene. Genes Chromosomes Cancer 36(1):37-47, 2003

Yawata T, Kamino H, Kugoh H, Katoh M, Nomura N, Oishi M, Horikawa I, Barrett JC, Oshimura M. Identification of a ≦600-kb region on human chromosome 1q42.3 inducing cellular senescence. Oncogene 22 (2): 281-290, 2003

Niemitz EL, DeBaun MR, Fallon J, Murakami K, Kugoh H, Oshimura M, Feinberg AP. Microdeletion of LIT1 in Familial Beckwith-Wiedemann Syndrome. Am J Hum Genet. 75(5): 844-849, 2004.

Nakano S, Murakami K, Meguro M, Soejima H, Higashimoto K, Urano T, Kugoh H, Mukai T, Ikeguchi M, Oshimura M.Expression profile of LIT1/KCNQ1OT1 and epigenetic status at the KvDMR1 in colorectal cancers. Cancer Sci. 97(11), 1147-1154, 2006

久郷裕之、中野星児、押村光雄 染色体の構造と機能 ゲノムワイドに展開するエピジェネティクス医科学:111-118, 羊土社, 2006

Murakami, K., Oshimura, M., Kugoh, H. Suggestive evidence for chromosomal localization of non-coding RNA from imprinted LIT1. J. Human Genetics, 52(11): 926-933,2007

久郷裕之、押村光雄 染色体の構造と機能 エピジェネティクスと臨床検査 52(6):605-612, 臨床検査(医学書院)2008

Murakami, K., Ohhira, T., Oshiro, E., Qi, D., Oshimura, M., Kugoh, H. Identification of the chromatin regions coated by non-coding Xist RNA. Cytogenetic and Genome Research, 125(1):19-25, 2009

染色体工学から生命現象への解明に向けて

これまで我々が独自に作製した単一ヒト染色体を保持するマウス細胞ライブラリーおよびその作製に関わる染色体工学技術は、がん抑制遺伝子、劣性遺伝病原因遺伝子、ゲノム刷り込み遺伝子の同定、新規DNAマーカー作製、人工染色体ベクターの開発・利用など基礎的研究から再生医療までの様々な領域で利用され貢献してきました。 我々は、この染色体工学アプローチから生命現象を明らかにすることを目的に刷り込み遺伝子の機能解析を進めています。

これまで我々は、微小核細胞融合法を用いた染色体導入より親起源の明らかなヒト染色体を1本だけ保持するマウス細胞のヒト単一染色体ライブラリーを作製し、このライブラリーから11p15.5領域において父性発現を呈する新規刷り込み遺伝子 としてnon-coding RNA LIT1を同定しました。さらに、LIT1プロモーター領域に存在するアレル特異的にメチル化を受けるCpGアイランド(DMR)を欠失させた研究によるLIT1遺伝子の機能消失は、がん抑制遺伝子として知られ、大腸がんにおいても発現異常が認められるp57KIP2を含む周辺刷り込み遺伝子の発現異常を誘導させることを見出しました。これらの結果より、LIT1は周囲の刷り込み遺伝子の発現をクロマチンドメインレベルでシスに制御するインプリントセンターとして重要な機能をもつことを明らかにしました。  さらに、Fluorescence in situ hybridization(FISH)法を応用して、国内外を通してはじめてLIT1 RNA分子を可視化させることに成功し、細胞内における発現動態の解析を行いました。その結果、LIT1の発現が確認された父方由来11番染色体を一本保持するチャイニーズハムスター細胞株(CHO11P-8細胞株)において、核内にLIT1 RNA分子のスポットを検出し、ほとんどの間期細胞核においてLIT1RNA分子のシグナルが認められました。またDNA-FISHより、LIT1RNA分子は発現しているアレルのLIT1 DNA領域近傍に位置していることも示されました。さらに、クロマチンファイバー上でRNA分子を検出するFiber-RNA FISH解析によりクロマチン上に集積するLIT1 RNAの存在を明らかにしました。また、LIT1の発現異常(LOI:ゲノム刷り込みの消失)が高頻度に大腸がんや食道がんで認められています。このようなことから、LIT1 RNAは細胞周期を通して安定にLIT1 DNA周辺領域に局在し、XistRNA同様なnon-coding RNAを介したクロマチン構造変化がドメインレベルの遺伝子発現制御に関与し、このLIT1による制御機構の破綻が大腸がんを含む発がん過程に重要な役割を担っている可能性が示唆されています。近年、興味深いことに、がんを含む染色体起因疾患に機能性RNAが関与することが報告されています。  現在、このLIT1刷り込み遺伝子の詳細な機能解析を通して発がん機構の解明を目指しています。機能性RNAの分子機構の理解は、未知の疾患や生命現象の理解に向けて大きく展開可能な先駆的な研究になりうることが期待されています。

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