久留一郎先生

再生医療学 教授

久留一郎

鳥取大学医学部 医学科
ゲノム再生医学講座 再生医療学分野 教授
(取材時:大学院医学系研究科 再生医療学部門)

※以下の掲載内容は、取材時の研究内容等に基づき掲載されております。

研究内容

  • ヒトに応用できる幹細胞を用いた再生医療

専門

  • 再生医療、循環器専門医、高血圧専門医、痛風専門医

2012年、京都大学の山中教授がノーベル賞を受賞したことから、"iPS細胞"という言葉をよく耳にする。聞いたことはあるが、実際にはどんな細胞なのか、そして私たちの健康にどう役立つのか?鳥大病院で最近進みつつある疾患(病気)iPS細胞の使い道についても久留教授に話を聞いてみた。

再生医療の切り札としての"iPS細胞"

幹細胞は、万能細胞と体性幹細胞に大きく分けられる。この万能細胞は名前の通り、体の何にでも変わることができる万能細胞であるが、その中には遺伝子操作から作られるiPS細胞と、受精卵から作られるES細胞がある。
iPS細胞は、自分の細胞から作るため、移植しても拒絶反応が全くない。自分の細胞を用いて、自分の壊れた部分を修復できる画期的な細胞で再生医療の切り札である。2014年世界で初めて、「加齢黄斑変性(滲出型)」という眼の難病患者さんから自身のiPS細胞が作製され、そこから網膜が作られ障害を受けている眼に移植されたことから、iPS細胞が現実に移植治療に使用された。まさにiPS細胞は再生医療の切り札として期待されているのだ。しかし、一方で課題もある。どんな細胞にも変わることができる細胞のため、がん細胞に変わる可能性もあるのだ。今後、研究が進み、ガンの心配のないiPS細胞によっていのちを救えるのもそう遠くはない。

鳥大病院でのiPS細胞の作り方

iPS細胞は皮膚の細胞から作られるのが一般的であるが、皮膚の一部を切除して採取する必要がある。さて、鳥取大学病院ではちょっと違った方法で作成されている。それは患者さんの採血で使用される血液(リンパ球)を用いて作る方法で患者さんに侵襲が少ないのが利点である。

疾患(病気)iPS細胞を用いたオーダーメイド治療が鳥大病院でも可能

今、鳥大病院で進んでいるのは「治療法の無い難病患者さんからiPS細胞を作製し、病気の細胞や臓器を試験管の中でつくり、病気を治す薬を探す。」という研究だ。遺伝子診断から命に関わる不整脈を起こす心臓突然死の疑いが診断された患者さんの血液を用いてiPS細胞を作り、試験管の中で心臓突然死を起こす心臓を作り出し、患者さんの心臓突然死を予防できる薬かどうかを判断するというオーダーメイド治療だ。薬は、人に合う合わないがあり、副作用もそれぞれである。そんな問題を解消してくれるのが、この治療法であり、鳥大病院のiPS細胞利用の特色の一つだ。iPS細胞は、新たにどんな細胞にも変われるだけでなく、治療薬を見出すこともできる優れた細胞である。

受験生へのメッセージ

循環器内科での診察や、再生医療の講義もある中で研究を進める久留教授は、大学院時代に、恩師からもらった言葉を励みに日々再生医療のような基礎研究を臨床の場に応用する橋渡し研究に取り組んでいる。それは「無いのではない、求めないのだ。できないのではない、やらないのだ。」という言葉だ。答えが無いと決めつける前に自分から答えを求める探求心、出来ないとあきらめる前に自分で行動する行動力が重要であり、自分自身に対して限界を作らなければ飛躍はできる。自ら求め、自らの道を進むことが重要である。