放射線治療科について
放射線治療部門のご紹介です。

鳥取大学放射線治療科の特徴
鳥取大学医学部附属病院放射線治療科の大きな目標は、高精度な放射線治療を行うことによる鳥取県のがん治療成績の向上であります。そしてその目標を達成するため、2台の放射線治療装置(リニアック)、小線源治療装置を中心とし、これに熟練したスタッフが加わって、最新の治療を患者様に提供しています。以下に、当院で行っている高精度放射線治療を紹介します。
- 強度変調放射線治療
(Intensity modulated radiotherapy; IMRT) - 定位放射線治療
(Stereotactic radiosurgery; SRS、単回照射) / Stereotactic radiotherapy; SRT、分割照射) - 画像誘導小線源治療
(Image guided brachytherapy; IGBT)
強度変調放射線治療 (IMRT)
IMRTは、すでに高精度放射線治療の代名詞と言えるほどメジャーな存在となっています。X線の強度を変えて、リスク臓器の線量を低下させる照射法です(図1)。

これには最新型の外部放射線治療装置が必要であり、当院では汎用型であるTrueBeam(Varian社製、図2)に加え、本年度5月よりTrueBeam Edge (Varian社製、図3、以下Edge)を導入し、2台体制で治療を行っています。


また、Volumetric modulated arc therapy(VMAT)という回転IMRTとも言える発展型の照射法を取り入れることによって、より短時間で多くの患者様にIMRTの提供が可能となっています(動画1)。
現在、当院では50%以上の患者様にIMRTが施行されています。
定位放射線治療 (SRS / SRT)
SRS / SRTはいわゆるピンポイント照射と言われる治療です。これまで当院では主に早期肺癌に対する体幹部SRTを行ってきました(図4)。

肺癌に対するSRTは、腫瘍の呼吸性移動に対するマネージメントが非常に重要であります。当院では放射線治療用の動態追跡システムである、SyncTraX(SHIMADU社製)を用い、高精度の照射を心掛けております(動画2)。
SyncTraxを用いた呼吸性移動に対するマネージメント(迎撃法)
これに加えて、本年5月よりEdgeが導入されたことにより、原発性及び転移性脳腫瘍に対するSRS / SRTが可能となりました(図5)。

Edgeは、TrueBeamに比べて汎用性には欠けますが、より繊細で精度の高さが要求される脳SRS / SRTに適した機種です。特に、悪性腫瘍は常に脳転移のリスクがあります。そのコントロールは患者様の予後にも影響を与えます。従って脳SRS / SRTは大学病院で施行可能でなければならない治療の一つであり、Edgeの導入にはSRS / SRTを行うという目的が大きな割合を占めています。
小線源治療 (IGBT)
小線源治療とは、アプリケーターという専用の機器を用いてがんのごく近傍、あるいは内部まで微小線源を挿入・刺入し、局所的な照射を行うものであり、特に腔内照射は子宮頚癌・腟癌では必須の照射法であり、前立腺癌では、直接アプリケーターを刺入する組織内照射が行われます。IGBTとは、婦人科癌に対する小線源治療を、CTやMRIといった3次元画像を用いて行うものです。当院ではIGBTの導入に遅れ、2020年の7月からの開始となりましたが、CTより画像解像度に優れたMRIを全ての治療計画に用いています。MRI治療計画は全国でも行っている施設はわずかとであり、鳥取大学放射線治療科の特色と言えます。また、2021年末からは、新規アプリケーターを導入することにより(図6)、腔内照射と組織内照射の併用が可能となり、より難治性の高い婦人科腫瘍に対応が可能となっています(図6)。

このように、鳥取大学放射線治療科は、高精度放射線治療に非常に積極的に取り組んでいます。しかしこれらに加え、通常の3次元照射(3D-conformal radiotherapy)や、RI治療、さらに、前述した前立腺癌に対する組織内照射も積極的に行っており、(粒子線治療を除く)ほとんどの放射線治療のモダリティが施行可能であります。この恵まれた環境の元、患者様に必要な治療が行えるよう、日々スタッフは一丸となって取り組んでいます。