神経科学分野

Division of Neuroscience

分野の特色

 神経科学分野では、脳神経系の発達や疾患を理解するため、次のような研究を行っています。

分野での主要な研究テーマとその取り組みについての説明

脳の発達の仕組み

 ヒトの乳児は、すでに驚くべき認知能力を持っています。大人の多くの能力の原型が生得的に備わっているのです。しかし同時に、それらの能力の成熟には、発達の際に適切な刺激や経験を得ることが必要です。経験なくしては、見る、聞く、話すといった基本的な能力も、充分に働かなくなってしまいます。また不適切な発育環境は人格や行動に大きな影響を与えます。このように、ヒトの能力は遺伝的にコントロールされた成熟過程と、生育環境での経験が相互に作用することで形成されていくのです。脳がうまく発育するためには、どんな刺激や経験が必要なのでしょうか?それらの刺激はどのような仕組みで脳の発育に影響するのでしょうか?子供たちの健康な発育のために、いつどのような経験をさせればよいのでしょうか?私達は、哺乳類の視覚中枢の生後発達を研究することで、このような疑問に答えようとしています。

  1. 視覚神経系の発達メカニズムの解明
    眼で捉えた視覚情報は脳の視覚野という領域で処理されます。この領域の機能や構造の発達時期に、適切な視覚体験を得られないと、弱視などの発育障害が起こります。この現象をモデルとして、以下のようなプロジェクトが進行中です。
    ・視覚経験を持たずに育った動物の大脳神経回路の、どこがどのようにして変化しているかを解析します。また、神経回路がダイナミックに再編成される時、どのような神経内シグナルが関わっているかを調べます。
    ・成熟した脳の神経回路を再び再編成することで、発育障害を改善する方法を探ります。
  2. In Vivo遺伝子導入による神経形態の可視化と機能操作
    In Vivoエレクトロポレーションやウイルスベクター(アデノ随伴ウイルスベクター)による、生後動物への遺伝子導入法の開発を通じ、神経細胞形態の可視化・解析、光遺伝的手法などによる機能操作により視覚情報処理メカニズムの解明に取り組んでいます。
  3. 児童虐待等の不適切な養育環境が原因となる精神疾患の新規治療法開発
    ヒトと類似の症状を示す幼少期ストレス負荷モデル動物を作製し、成熟後に脳(前頭前野等)の不適切な神経回路を消去すること等による新規根治療法の開発を目指します。
スタッフ

教授      畠 義郎
助教      一坂 吏志
助教      佐藤 武正
助教      亀山 克朗

 電話番号

TEL 0859-38-6252

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