教室紹介

研究テーマ

研究テーマについて、ご紹介します。

尿路悪性腫瘍研究グループ(グループ長 瀬島健裕准教授)
低侵襲手術

2012年4月より、前立腺癌に対するロボット支援手術の保険収載が開始された。当科ではそれ以前の2010年10月より、ロボット支援前立腺全摘除術を施行している。さらに、小径腎腫瘍に対するロボット支援腎部分切除術を2011年8月より、膀胱腫瘍に対するロボット支援膀胱全摘除術を2013年5月より開始している。当院の手術用支援ロボットに関しては、2010年8月にda Vinci Sを導入し、その後Dual consoleであるda Vinci Siを2013年3月に導入してロボット支援手術を行っている。ロボット支援手術での達成目標は、癌の根治、手術の低侵襲化、臓器機能温存の3点である。ロボット支援手術も含めた、前立腺全摘術や膀胱全摘術などの骨盤内手術では、QOL(生活の質)や性機能、排尿機能などのfunctionの維持も重要であり、これらの維持を目的とした、さらなる治療法の改良にも取り組んでいる。また、副腎、腎、上部尿路に対する鏡視下手術や、尿路内視鏡手術などの低侵襲手術に関しては、ロボット支援手術導入以前より積極的に取り組んでいる。

新規抗癌剤、分子標的薬を使用した泌尿生殖器癌に対する治療

進行性尿路上皮癌(腎盂尿管癌、膀胱癌)に対するfirst line療法としてジェムシタビンとシスプラチンを使用した化学療法を、second line療法としてカルボプラチンとパクリタキセルを使用した化学療法を積極的に施行している。また、去勢抵抗性前立腺癌に対するドセタキセルを使用した化学療法、進行性精巣腫瘍に対する多剤併用化学療法などを施行している。進行性腎細胞癌に対しては、近年次々と新規分子標的薬が開発され、従来から施行しているサイトカイン療法に加え、現在5種類の分子標的薬を積極的に使用している。

瀬島健裕
骨盤内解剖に基づく基礎的、臨床的研究

手術の質を向上させる目的で、独自の手法による外科解剖学研究を行っている。これまで国内外の多くの施設、また、泌尿器科のみならず、直腸外科医、婦人科医とも共同研究を行ってきた。これまで、骨盤内自律神経、骨盤底筋および筋膜解剖について、従来の解剖学的常識を覆す多くの知見を報告してきた。これらの結果を基に術後性機能、排尿機能向上のための術式改良に積極的に取り組んでいる。また、臨床から生じる様々な解剖学的な疑問点を引き続き研究していくことで、今後も新たな解剖学的知見の発見とその臨床への還元を目指す。

腎細胞癌におけるバイオマーカーの基礎的、臨床的研究
  • FasはFas / Fas ligand pathway(FasL)を介して癌細胞のアポトーシスに関与すると言われている。我々の研究と、最近ドイツから発表された大規模多施設研究により、Fasの過剰発現が予後不良因子であることがほぼ解明された。
  • 腎癌におけるFasL発現がFas / Fas pathwayによって、細胞障害性T細胞をアポトーシスさせ、免疫機能を低下させる可能性を転移再発症例データより解析した。
  • 腎細胞癌患者の摘除組織と血液より、microRNA(miRNA)の発現を解析した。その結果、腎細胞癌の早期診断に有効な腫瘍マーカー候補となるmiRNAを同定した。
  • 腎癌組織標本におけるmicroRNAの発現量を比較することで、分子標的薬の奏功に関わるmicroRNAを同定する研究を施行中である。
腎摘除後の腎機能低下と、関連する生存率についての基礎的、臨床的研究
  • 腎癌のため腎摘除を行うと,eGFRは平均20~30%低下し、長期観察においては心血管イベント死が有意に増加することを解明した。術前既にstage 3以上のCKDを生じている場合、この様な転帰を取ることが多いことも解明した。
  • 腎癌に対する腎摘除後には、癌死のみならず心血管イベント死といったCKD進行に関連する死亡率も考慮に入れる必要がある。現在retrospective data解析により、包括的生命予後予測因子について解析中である。
  • Fas遺伝子の正常腎実質内発現は、腎摘後のCKD進行に関与し、更に心血管イベント死の増加と関与していることを解明した。
骨盤外科機能研究グループ(グループ長 本田正史講師)
基礎研究
骨盤外科解剖に関する研究
  • 男性骨盤外科解剖に関する研究
    従来、神経血管束(NVB)いわれているものは陰茎海綿体が束状に集まった構造物ではなく、腹側および背側に幅広く存在しplate状に存在する事等、拡大、明視野で行われるロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘術(RARP)を施行する際に重要な多くの解剖学的新知見を得て、実際の手術に応用している。
  • 女性骨盤外科解剖に関する研究
    女性の尿道周囲を解剖学的に検討し、尿道腹側だけではなく背側にも静脈が豊富であること等を明らかにし、膀胱全摘除術における順行性操作(膀胱の側方~背側の処理を先行させる術式)の妥当性につき検証した。
排尿障害に関する基礎研究
  • 排尿薬理・排尿生理に関する基礎研究
    求心性神経に存在するsensroy neuron specific recepor(SNSR)、ソマトスタチンサブタイプ4、中枢神経に存在するGlutamate transporter、Anandamide transporter等の下部尿路機能における役割に関する薬理学的・生理学的研究。
  • 高血圧ラットに発症する過活動膀胱における膀胱血流に関する基礎研究。
  • 腹圧性尿失禁に関する基礎研究
    女性腹圧性尿失禁と閉経(卵巣摘出)の関連に関する基礎研究。
本田正史
臨床研究
低侵襲・機能温存手術に関する研究
  • ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘術(RARP)に関する研究
    • 骨盤外科解剖に関する知見を踏まえて、癌根治性、低侵襲性、機能保持の全てにおいて最適と考えられる、RARPの手術手技をまとめた「Anatomic Nerve-Sparing Robotic Prostatectomy ―骨盤外科解剖に基づいた手術手技の確立―」を発表している。
    • RARP術後のQOL、排尿機能、性機能の推移を明らかにし、RARPの有用性を解明してきている。
  • EDリハビリテーションに関する研究
    RARP後の勃起機能障害に対する新たな試みとしてED(erectile dysfunction)リハビリテーションプログラムを作製し、この有効性に関して検討している。
排尿障害に臨床研究
  • ボツリヌス毒素膀胱壁内注射療法に関する研究
    難治性神経因性膀胱や過活動膀胱に対する新しい治療として、本邦で初めてボツリヌス毒素膀胱壁内注射療法を開始し、その高い安全性と有効性を報告している。
  • 前立腺肥大症の治療に関する研究
    前立腺肥大症に対する手術療法であるホルミウム・ヤグレーザー前立腺核出術(HoLEP)について、術後の治療効果予測におけるウロダイナミクススタディの有用性について検討している。
  • 低活動型膀胱に関する研究
    骨盤手術後の神経因性膀胱に対する、独自の排尿障害治療プログラムを作成し、術後神経因性膀胱の治療における本プログラムの有用性を報告している。